それでもこぼれたミルクを嘆く
香枝ゆき
第1話 覆水盆に返らず、あるいはこぼれたミルク
「あなた の 出身地 では なかった ? 同じ ような 言葉」
音が、聞こえる。
スリープモード下において、言語プログラムテストタイプ起動。成功。
これより状況判定を最優先としながら、言語習得機能、コミュニケーションラーニング、問答予測プログラムを展開する。
「『覆水盆に返らず』」
声紋結果、照合。自己の製作者との近似率、99パーセント。
「ありましたよ、クロノス博士」
別個体の研究者、声紋認識。
敵性個体可能性、0.1パーセントと判定。
「『こぼれたミルクのことを嘆いても仕方がない』」
「やっぱりどこの地域にもあるものね、そういう言葉って」
言語パッチ、辞書ツール、検索。最適化、完了。
一致、一致。不一致。
エラー。
会話の整合性がありません。
エラー。
整合性がないまま会話が続けられていることに対処するパッチがありません。
エラー、エラー、エラー。
「博士、大変です!エラーコードが!」
「リィカに!?大変、まさかスリープモードから自発でディープラーニングを起動させるなんて……」
「クロノス博士、緊急シャットダウンします!」
「お願い」
エラー、エラー、エラー。
痛みが消えていく。
意識が遠のいていく。
それでも、それでも。
最大音量にして、伝えたかった。
その二つは似て非なるものなのですよ、と。
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