第58話:ルーパスと大魔王3
「生贄とオードリーの魔力の半分が入った守護石を持ってきたぞ。
直ぐにミネルバを蘇生しろ」
大魔王は思わず笑ってしまいそうになっていた。
できるだけ早く済ませて人界に帰りたいルーパスが、とても早口だったからだ。
少しでも早く交渉を終わらせて、オードリーを一人にする日数を短くしたい父親の心情が駄々洩れになっていたからだ。
つい本来持ってるいたずら心がルーパスを揶揄いたくなってしまう。
交渉を引き延ばして、オードリー所に早く戻りたいルーパスの苦渋に満ちた顔が見たくなるが、グッと我慢した。
そんな事をやってもルーパスの恨みを買うだけで、百害あって一利もない。
神々と戦う可能性を考えれば、最低でもルーパスを敵に回さない言動が必要だし、できれば恩を売って味方に加えたいのだ。
「分かった、生贄どもを巨大魔法陣に中に追い込め」
大魔王は簡単に言うが、五千万もの人間を入れるために必要な土地は半端な広さではないのだが、巨大魔法陣は大陸に匹敵する広さになっていた。
だが広さはあっても五千万もの人間をそう簡単に移動させられるものではない。
だが無理を承知でやらなければいけない。
大魔王もちゃんと必要な準備をしていてくれたのだ。
しかも人界とは時間の流れが全く違うから、限られた短時間でやってくれたのだ。
「さて、少しでも魔力を節約するために呪文を唱えるが、結構長々とした呪文になるから、ルーパスは一旦オードリーの元に帰っていろ。
呪文を唱え終わっても、直ぐに死んだ人間の身体が完全に再生されて魂を呼び戻せるわけではない。
そんな時間を魔界で待っていたら、人界では何十年も経ってしまうだろう。
これと同じ巨大魔法陣を人界でも描いて呪文を唱えてみろ。
必要な魔法陣と呪文はこの魔導書にかいてある。
魔力はルーパスが人界中に描いた魔法陣で集めればいい、一年ほどで溜まる」
「騙したな、大魔王。
ミネルバを蘇らせると言ったのは嘘だったのだな」
「嘘ではないぞ、ルーパス。
この巨大魔法陣と莫大な魔力を使えば死んだ人間を蘇らせるのは確かだ。
この通り余が実際にやっておるではないか。
だが、蘇らせるのに必要な時間が結構長いのだよ。
その時間の間、蘇らせたい人間を想い続けて魂よ呼び寄せないといけない。
ルーパスにそんな長時間魔界に留まることができるのか。
せっかくミネルバを蘇らせても、会わせたい娘のオードリーん方が先に死んでしまうぞ、それでもいいのか」
「それは……
だが約束通り生贄も魔力も持ってきたではないか。
だったらその魔力を使って蘇らせるべきだろう」
「はて、余はミネルバを蘇らせる代価を要求しただけで、必要な素材の事は自弁だと思って話をしていたのだがな」
「詐欺だ、最初から騙す心算の言い訳だ」
「余は魔族の大魔王だぞ、ルーパスも騙される可能性が高いと思っていたから、人界中に巨大魔法陣を描いて魔力を集めていたのであろう。
余がこの程度の利を確保するくらい計算のうちであろう。
余にもどれほど悪辣非道な手段を使っても蘇らせたい者がいるのだよ」
「……分かった、これ以上は時間の無駄だな。
ミネルバを蘇らせたら改めてキッチリと話を付けよう」
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