第35話:旅程7
ドラゴッシュと呼ばれた男がグレアムに襲い掛かった。
巨躯に似合わない素早い動きでグレアムは一瞬対応が遅れてしまった。
だが愛馬スタリオンがそんなグレアムを救ってくれた。
スタリオンが素早く動いてくれたことで、ドラゴッシュの勢いをまともに受けずにすんだのだ。
スタリオンのお陰でギリギリ抜剣が間に合ったのだ。
なんとドラゴッシュは剣や槍ではなく拳で攻撃してきた。
ドラゴッシュはグレアムに殴るかかってきたのだ。
グレアムは剣でドラゴッシュの腕を薙ぎ払おうとした。
清貧のダグラス伯爵家でも民を護るために必要な剣にはお金を惜しまない。
フィアル公爵家を襲撃した後でちゃんと手入れもしてある。
どれほど身体を鍛えようとも人間の身体で剣を弾く事などできない。
だが、ドラゴッシュの身体はグレアムの剣に負けなかった。
負けないどころかガリガリとグレアムの剣を刃こぼれさせてしまった。
立て続けに繰り出されるドラゴッシュの拳を剣で受け続けたが、その度に刃こぼれが増え剣がボロボロになっていく。
「お前は何者だ、ただの人間ではないな。
それにさっきの会話はないだ。
まるで人間を食べるような発言だぞ」
グレアムはスタリオンが素早く後ろに下がってくれたお陰でひと息付けた。
先程からどうしても頭を離れなかった言葉があったのだ。
「筋っぽくて硬いでしょうが貴男なら美味しく食べられるでしょう」という女の発言を無視することができなかった。
「ホウッホッホホホ、それがどうしたのです。
お前を食べていいと言ったのですよ。
ドラゴッシュは人間の肉が大好きなの。
それも筋肉のついた硬い肉が大好きなの。
だから傭兵崩れの自称騎士を殺したらご褒美に食べていいと言ったのよ。
これで分かったかしら」
侯爵家でも地位が高いであろう女が高笑いしながら言い放った。
何の罪の意識もなく人間を食べさせるという。
余りの内容に衝撃を受けたグレアムの動揺を見抜いたのであろう。
ドラゴッシュが大きく踏み込んできた。
必殺の拳をグレアムの腹に叩き込もうとした。
グレアムが動揺した状態で受けようとしたが、とても間に合いそうになかった。
このままならグレアムは拳で腹を打ち抜かれて死んでいただろう。
鋼鉄の鎧に護られているが、とてもドラゴッシュの拳は防げそうになかった。
それほどの破壊力が込められた拳だった。
だがここでスタリオンがグレアムを護ろうと動いた。
今までは素早く動いて逃げるだけだったスタリオンが、ドラゴッシュの勢いを迎え討つように前足を繰り出したのだ。
馬の蹴りは後ろ脚の蹴りが有名で破壊力も大きいが、前脚の蹴りも破壊力がある。
しかも後ろ足の蹴りと違って思いもかけない方向から放たれるのだ。
今回は前蹴りの破壊力に加えてドラゴッシュの突進力が加わっている。
それが思いがけない不幸を引き起こしてしまった。
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