第31話:ルーパス、勇者、大魔王6
大魔王は余裕満々な態度でルーパスに条件を付きつけた。
「一つ目の条件は、オードリーの魔力を蓄えた魔晶石を渡すのだ。
あの魔晶石に蓄えられた魔力があれば、神々を押し返すことができる」
この条件は流石にルーパスも即答できなかった。
オードリーを護るためにどうしても必要なものだからだ。
だがそんな事は大魔王にも分かっていた。
「くっくっくっくっ、オードリーを危険にはできないか。
よき父親だな、ルーパス。
だったら代わりの守護石を作ればいい。
いや、難しい仕掛けなど不要だ。
守護石に蓄えられた魔力を移す魔宝石を作ればよい。
魔宝石に守護石の魔力を移して寄こせ」
だがその条件でもルーパスは即答できなかった。
守護石に蓄えられた全ての魔力を大魔王に渡してしまったら、大魔王が裏切ってオードリーを攻撃した時に助からない。
「くっくっくっくっ、全部は渡せないか。
だがその時にはルーパスがオードリーの側にいるのだぞ。
それでも余の攻撃からオードリーを護り切れないというのか。
まあ、よい、それも親心だな。
だったら半分だ、守護石半分の魔力を寄こせ、それで許してやる」
ルーパスは少し迷って決断した。
「分かった、守護石の魔力を半分渡そう。
それでミネルバを蘇らせてくれるのだな」
「まだだ、まだその程度では駄目だ。
もう幾つかやってもらわなければ蘇らす事はできん。
それとも術を教えてやるから自分でやるか」
大魔王はルーパスの弱みを十分に理解していた。
ルーパスが何を失ってもミネルバを蘇らせたいと思っている事。
オードリーを助けたいと思っている事。
できればミネルバにもオードリーにも嫌われなくないと思っている事。
だからギリギリまで利を得ようとしていた。
「……分かった、何が望みなのだ」
「ルーパスは気がついていないだろうが、守護石はいい仕事をしている。
オードリーを殺そうとした連中、オードリーを傷つけた連中をモンスターに変化させて、共喰いをさせている。
その連中を魔界に転移させろ。
別に難しい事ではないだろう。
さっき閉じた通路を開いてこちらに送り出せばいい。
ルーパスなら数日でその程度の魔力は回復するであろう」
ルーパスは大魔王の言葉に驚いていた。
守護石がそんな方法を使って復讐をしているとは思っていなかった。
ルーパスにはそんな能力を付与した覚えがなかったからだ。
そんな事ができるのなら、オードリーが自殺する前に助けろと思っていた。
だがもしそれが本当ならば、そんな連中がどうなろうと知った事ではなかった。
「分かった、そんな事なら何の問題もない。
他にも条件があるのだろう、さっさと言え大魔王」
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