第2話:追い込み・デイヴィッド国王視点
ジェイムズとモードが楽しそうに話しをしている。
ジェイムズは十八歳、モードは十三歳、年齢差は悪くない。
この国で一番力のあるフィアル公爵家とは絆を深めないといけない。
モードをジェイムズの妃に迎えれば人質をとったも同然だ。
できるだけ早く正式に婚約をさせて王宮に迎えたい。
だが先代が大々的にオードリーとの婚約を発表してしまっている。
「ところでフィアル公爵、オードリーの事はどうなっている」
和やかだった王家とフィアル公爵家の団欒の場が一気に白けてしまった。
余とてこんな無粋な事はしたくない。
だがこれだけは両家の意見をすり合わせておかないといけない。
絶対に行き違いがあってはいけないのだ。
ひとつ間違えればこの国が滅びかねない。
なんと言っても相手はあの大賢者ルーパスの娘なのだから。
「順調に追い込んでおります、国王陛下」
「分かっているだろうが、絶対に直接手出ししてはならんぞ。
相手はあの大賢者ルーパスの娘だ。
信じられないほど大きく鮮やかな守護石を肌身離さず持っている。
直接手を下して殺したりしたら、どのような呪いが発動するか分からん。
フィアル公爵家だけにとどまらず、王家まで皆殺しにされかねんのだぞ」
「分かっております、国王陛下。
徐々に追い込んで自殺するように仕向けております」
なんだ、アルバートが真っ青な顔色になっておる。
まさか、この馬鹿は直接オードリーに手出ししたのか。
そういえば男のくせに妙に濃い化粧をしておる。
オードリーを襲って顔に傷を負ったのを隠しているのか。
この愚か者が!
「アルバート、何を青い顔をしておる。
この愚か者が、オードリーに手を出したか。
お前の愚かさのせいでこの場にいる全員を殺す心算か、大馬鹿者。
フィアル公爵、この大馬鹿者はしばらく王宮で預かる。
二度とこのような愚かな事をしでかさないように、地下牢で頭を冷やさせる」
「陛下、国王陛下、どうか許してやってください。
もう二度と愚かな真似はさせません、だがらどうか許してやってください」
ルイーズの馬鹿が息子可愛さに愚かな事を口にしおって、思い上がりも甚だしい。
ここは思い知らせておかねばなるまい。
「ならん、ならん、ならん、絶対に許さん。
何度この場で真剣に話し合ったと思っておる。
それを全て台無しにしかねん愚行、ぜったに許さん。
フィアル公爵、公爵家はジェイムズとモードの間に生まれた次男に継がせばよい。
幽閉が気に入らんのならこの場で余直々に殺してくれるぞ」
「陛下、どうかそればかりはお許しください。
今回の件は全てアルバートが悪うございます。
地下牢で反省させるのは当然の事でございます。
しかしながらモードに必ず子が生まれるとは限りません。
アルバートを殺すのだけはお許しください」
公爵の申す事ももっともだ。
追い込み過ぎて謀叛でも起こされてはかなわん。
やぶれかぶれになってオードリーを殺されては余も巻き込まれかねん。
「……分かった、幽閉だけにとどめてやる。
最初からその心算であったのに、母子揃って愚かな事をするからだ。
お前らは何も分かっておらんのだ。
相手はもう死んだとはいえあの大賢者ルーパスなのだぞ。
この世界を滅ぼしかけた魔王を討ち取った勇者の一人なのだぞ。
敵の大将である大魔王を斃しに魔界へ行って十年以上音沙汰がない。
まず間違いなく返り討ちになって死んでいるだろう。
そんな死出の旅に出る前に一人娘に与えた守護石だ。
どれほどの力を秘めていると思っておるのだ、愚か者共が!」
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