早野くんと問題だらけのラブコメ

天川希望

1話 幼馴染みと問題発生!?

 「恋」とは何なのだろうか。


 形もないのにまるで存在しているような、不思議な存在で。


 一体全体何のために人は恋愛をするのだろうか。


 俺は、ふとそんなことを考えた。




 何故俺は恋をしているのか。


 どうして恋はこんなにも切ないのか。




 そして、俺は目の前で涙目になっている彼女になんと声をかければいいのか……。




「……そっか。やっぱり私じゃダメだったんだね…」




 しばらくの沈黙の後、彼女がそう言った。俺は、心が張り裂けそうに痛かった…。


 そうじゃないんだよ。ダメとかそういう問題じゃねえんだよ…。




「やっぱり遅かったんだよね。もう少し早くこの気持ちに気付いていたら、変わってたのかな?やっぱりあの時に…」




 俺は何も言えなかった。ただただ黙って彼女の話をきいていた。


 何で今なんだよ。何であのときじゃないんだよ。あの時なら、俺は、俺たちは……。


 どうしてなんだよ、りせ。






□ □ □






 今日は夏休み最終日、つまり8月31日だ。昼間はまだ汗が出るほどの暑さだが、夜は少し涼しいような感じの気候だ。


 俺は早野匠はやのたくみ。私立下村アンダーソン学園の2年だ。この学校は、たいした進学校ではないがとても人気が高い、創設5年の超新しい学校だ。


 俺がこの学校を選んだのは、人気だからとか、新しいからだとかもあるが、1番の理由は、電車で2駅の所にあるので、圧倒的に近かったからだ。まあ、校則がゆるかったっていうのも1つの理由だが…。


 俺はそんな学校でも割と優秀なほうで、夏休みの課題はお盆休み前にはすべて片付けていた。だから、今日は幼馴染みの東川りせと、最寄りの駅から10駅ほど行った所にある超大型ショッピングモールに行く予定だ。


 言うまでもないが、俺はモテない。だから、女の子とお出かけなんて、りせ以外としたことがない。だから、逆に安心するというか、気が楽というか、いつも通りでいいから心の底から楽しめるんだよな。


 中学の時は、周りにデートだとか、ラブラブだとか言って冷やかされることが多々あった。俺は別に悪い気はしなかったんだが、正直りせはいい迷惑だったと思う。だって彼女は、中学の時は、恋愛にあまり興味がなく、がむしゃらに部活を頑張るというタイプだった。そんなりせの姿に俺はいつしか……。


 って、俺の話はどうでもいいんだよ。てか、早く来すぎたな…。30分前行動とか、初めてのデートでソワソワしてる彼氏みたいじゃねえかよ。




「おはよう、匠。待った?」




 待ち合わせの時間ピッタリに来たこいつが、東川ひがしかわりせ。真っ黒のショートカットで、背は低く、これぞボーイッシュというようなタイプで、今日もショートパンツにTシャツといった服装だ。ちなみに、こいつは気付いていなかったが、中学の時はそこそこモテていた。確かに、目鼻立ちは整っていて普通にかわいいし、モテていたというのも、納得がいく。というか、高校でも普通にモテている。ただ、うちの学校にはちょっと事情があってあまり有名ではないが。




「うん、結構待った」


「馬鹿だな~匠は。そういう時は、待ってないよっていうのが男の基本でしょ?」


「知らねえよ、そんなこと。てか、そんな基本初めてきいたは」 


「そんなんだから匠は彼女ができないんですよ~だ」




 俺は確かに、年齢=彼女いない歴だよ?確かにモテないよ?でもでも、別に彼女ぐらいいつでも作れるし?俺は、彼女ができないんじゃなくて作らないだけなんだからね。


 自分で言ってて悲しくなってきたは。なんてみじめな負け惜しみだよ。てか、誰に負けたんだ?




「そ、その話はなしだろ!てか、それならおまえだって彼氏できてねえだろ」


「私は、できないんじゃなくて作らないだけだもん!作ろうと思えばいつでも作れるし」




 同じこと言ってやがる…。こいつの場合、ガチなだから何も言い返せねぇんだよな。




「はいはい、そうですかそうですか、それなら頑張って彼氏作ってくださいねー」


「なにそれ~、なんか嫌味混じってんでしょ」


「んなことねえよ、てか早く電車乗ろうぜ」


「うん、そうだね」






「てか何でおまえ、うちの高校にしたんだよ」


「だって匠が近いっていうから」


「俺は、引っ越すから近くなるって話をしただろ」


「そうだけど…」




 俺は、高校入学に合わせて1人暮らしをするためにちょっと遠くのマンションに引っ越した。そのことを、おれはりせに伝えていたはずなのに、なぜか俺と同じ高校に受験していた。ほんとに何でだろうか…。まぁ、そのことは置いといて何で俺がりせと駅前で待ち合わせしていたかというと、俺は夏と冬の長期休暇には実家にかえる約束をしていたから、今は実家に帰省している。だから、俺はりせと駅前で待ち合わせをしていた。




『まもなく〜七宮〜、七宮です。七宮モールにお越しのお客様はここでお降り下さい。お忘れ物の無いようにお気をつけください』






「それにしても広いよね、ここ」


「そうだよな、人もごった返してるし、大人気って感じだよな」




 ここ、七宮ななみやモールは、3か月前にオープンした日本で3本の指に入るほどの超大型ショッピングモールで、映画館やフードコート、レストランなどを初め、色々な専門店が200店舗ほどある。4階建に加え、最寄りの七宮駅から徒歩2分という最高の立地であり、駐車場も20万台は入るんじゃないかと思うほどの広さだ。ちなみに俺は初めて来たんだけど、びっくりするぐらいでかいな、ここ。




「今日はどうする?映画でも見る?」




 そう、今日は別にたいした目的がある訳でもないが、とりあえずどっか遊びに行こうぜ!という感じのノリで来たので、なんのプランもないわけで、




「そうだな、なんかいいのやってるか?」


「うーんと、今だとあれとかやってるよ?一昨年の秋アニメのやつとか」


「よし、それにしようぜ」


「他に行きたいところある?私はちょっとだけ服とか見たいかな?」


「なんだ?女子力ないって言ったから気合い入れるのか?」


「ちがうよ!トレーニング用のジャージをそろそろ新しくしようと思ってるの!」


「分かった分かった、俺が悪かったよ。そうだな、俺はとりあえずアニ〇〇トは行きたいな」


「だと思ったよ。じゃあア〇メイ〇付き合うから、私のも付き合ってね」


「了解!」






「やっぱりあのシリーズは神だよな〜。もう何度も本で読んだのにいくらでも泣けるんだ


よな〜あれ。」




 俺たちは、感動の続編映画を見た。いや、最高だったはまじで。




「確かに面白かったね。私も感動しちゃった」


「だろ?掘り出しもんもいいけど、やっぱり王道も捨て難いよな〜まじで」




 あっ。言い忘れてたけど、俺は結構なオタクである。だから学校では静かにしてるってのもあるんだよね~。ぶっちゃけ。




「もう12時半だしお昼にしよっか」


「そうだな。んじゃまぁ適当にフードコート行こうぜ」


「……うん。そうだね」


「どした?」


「いや、なんでもない。まだ、感動に浸ってただけ……」




 そんなにこいつが感動してくれるとか、俺も泣きそうなるやんけ。まあ、よく考えてみたらこの映画勧めてくれたんあいつやしな。


 そんな事を考えながら、俺たちはフードコートへ行った。






 買い物も済ませた俺たちは、残すところあと僅かとなってしまった夏休みを、残念に思いつつ、帰宅するために駅に向かって歩いていた。




「ちょっと寂しいな〜。もう夏休み終わりか〜。あと1ヶ月ぐらい欲しかった」


「ねぇ。この後ちょっとだけ付き合ってくれない?」




 急に言ってきたからビックリした。というか、いつもなら、「そんなん言ってるうちは、まだまだお子様だね〜」とか冷やかしてくるところなのに……。




「ん?なんかあんのか?まぁいいぞ、今日は暇だしな」


「うん…、ありがとう」




 なんかよくわからんけど、さっきからこいつ、悲しそうなんだよな……。というか、ソワソワしてる?って感じで、今までとなんか違う気が済んだよね。もしかして……。しんどいのに無理してたのか?まさかな、こいつに限ってそんなことは無いだろう。ましてや、俺相手に無理する必要ないだろ。






「ねぇ匠」




 さっきまで駅に向かっていたのだが、少しお喋りがしたいというので、駅とは真反対の公園に向かって歩いていた。


 そんな中、突然りせが話しかけてきたという訳だ。




「ん?どした?」


「明日からまた学校始まるね」


「いや、その話さっきもしただろ」


「うん。そうだね……」




 やっぱり少し悲しそうだ。よく見ると、今までとは少し違う気がする。


 何があったんだろうか。今から話すことって、そんなに深刻な問題なのか?それだと……。俺は、力になれる気がしないんだけど……。




「あのさ。今日相談したいことについてなんだけどさ……」




 そうこうしてるうちに、俺たちは目的地についた訳だが……。






 やっぱり相談じゃねーかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。






 おっと。取り乱してしまいました。


 とはいえ、俺は昔から相談が大の苦手だ。


「ねぇ、聞いてくれる?」


「おっ、おう!なんだ?なんでも言ってみろ!」




 やべぇ、強がっちまったテヘペロ。


 てか、相談ってなんだ?いじめでも、うけてんのか?




「匠ってさ。好きな人とかいるの?」


「へ?」




 あまりに唐突すぎる質問に少し戸惑ってしまった。


 てか、相談じゃなくね?




「いるの?」


「いると思うか?」


「うん」


「本気で言ってんの?」


「うん」




 確かにこいつに限って嘘をつくはずがない。そういや昔から勘はいい方だったな。


 つまりこれが俺に対する本心という訳か。




「そういうお前はどうなんだよ!」


「私?…………いるよ?」


「え?」




 俺は耳を疑った。


 こいつに好きな人がいんの?まじで?あの時は興味ないとか言ってたのに、成長したんだな~感激感激。




「で、匠は?」


「…………」


「私は答えたんだからちゃんと答えてね」


「……気になる人ぐらいなら」


「そっか……」




 何だか弱い返事だった。まるで今にも泣きそうな声で……




「私はね、好きな人……いるの」


「いや、それさっき聞いたし」




 よく見ると、彼女は泣いていた。


 いや、実際には泣いてはいないが涙目になっている。これだとはたから見たら俺が泣かした見たいじゃねえかよ。視線がすごく痛い……。てか、なんで泣いてんだ?






「私は匠のことが好きなの……」






 時間が一瞬止まった。


 時間が、止まるというのはこういう事か!と言うぐらいに時間が、凍りついている。




「…………」


「…………」




 告白というのは、こんなにもあっさりとしている物なのだろうか…。


 俺は今まで一度も告白を受けたことがない。だから、本当の告白というのが分からない。だけど、これが本当の告白だということはわかった。勘だ。だけど、確信もある。


 でも……。なんで俺なんだ?なんでよりにもよって、俺なんだよ。




「……悪い」




 そう答えるので精一杯だった。


 だって、俺はこいつのことただの幼馴染みとしか思ってないし。というか、恋愛対象として見れなくなったし。どうすりゃいいのかわかんないし。


 確かに可愛いし、良い奴だし、優しいけど……。






□ □ □






 という感じで、初めに至るのだが……。


 俺はこうする以外にどうすればよかったんだろうか……。


 今はというと、俺は一人で電車に乗っていた。あの後りせはすぐに帰った。『今まで通りにするから。明日からは今まで通りでいいから』とだけ言い残して帰った。なんか、凄い悪いことした感じだ。


 だって仕方ないじゃん。俺のせいじゃないじゃん。だってあの時はりせが……。もし、今じゃなくて、昔なら、どうだったのかな?


 まぁ、確実に両方にとって良い結果になったと思うのに……。




「明日からの学校、どうしよっかな……」






──俺とりせは、小1からの付き合いだった。


 家は隣で、自由に家を行き来するほどの仲で、親同士も仲が良く、家族ぐるみの付き合いだった。昔から背は低かったので、妹のような存在だった。いつも一緒にいたため、周りからは兄妹だと勘違いされることをも多かった。


 そして、1年前の春。俺は親の了解を得て、1人暮しをするために引っ越すことになった。まぁ、そんなに遠くには行かなかったが、その時もあいつは泣いていた。




「もしかして俺、最初で最後の告白イベントをすてたのか?」




 そう考えると少し悲しくなってきた。


 もう一生、年齢=彼女いない歴になるのか?それだけは、勘弁して欲しい。


 なんでなんだろうな、なんであの時じゃなかったんだろうな。




「もう4年もの昔の話なんだな」




──4年前、俺とりせは中1だった。


 俺はこの時恋をしていた。そう、りせにだ。そして、俺は思い切って告白した。


 しかしだ、俺はフラれてしまった……。その時は『恋愛なんて分かんないし、そもそも匠のこと友達としか思ってないし』と言われた。




 確かに昔からの付き合いのやつに好意を持たないのは分かるが、なんで今になって急に好意を持ち出すんだよ。告白を断るってのは、心底胸くそが悪いな。




「やっぱり俺には彼女出来ないのかもな」




 だってそうだろ?俺なんかに好意をもってくれるやつなんて、あいつ以外にいるはずが


ない。元々誰もいないと思ってたし。




「あー、なんであの時に OK してくれなかったんだよ……」




 俺はそう呟きながら家に入った。

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