第14話
「気味が悪いな」
店内に入るとそこはまるで化学実験室のようだった。
瓶に入った蛙、ミイラになった蛇、髪や目など所々欠損している人形、他にも見るだけで呪われそうなものがたくさん置いてある。
「みーちゃんーいる?」
さっきからリズが店内を探し回っている。
留守なのか?そう思ったが、店の入り口にはオープンの看板も立てかけてあったし、いると思うんだがーー
「誰よ。こんな朝から…うっさいわねぇ」
声が聞こえ、奥の方から一人の女性が出てくる。
朝ってもう昼なんだが…
「あ、みーちゃん!」
ということはこの人がリズの友達…みーちゃん…か。
見た目の方は前髪が長く目元は隠れて見えないが、額からリズと同じような角が生えている。
やっぱり、同じ魔族のようだな。
「おお…」思わず声が出てしまう。
それは少し視線を下にするとーー
「ともくん」
隣にいた沙月が満面の笑みを浮かべてこちらを見てくる。
「はい、すいませんでした」咄嗟に謝ってしまう。
なんでだろう…顔は笑っているはずなのになんか怖いというか、って俺まだ何も言ってないんだけど…
「あれ?リズじゃないどうしたの?急に、連絡もしないで」不思議そうに首を傾げて聞いてくる。
「あーそれはね」
そういって今までにあった経緯をリズが彼女へと説明した。
「そんなことが…まぁ大体わかったわ」
と何かを考えるように少し下を向き腕を組む。
「口を挟んで悪いんだが、彼女に教えて大丈夫だったのか?」
一応、俺たちは魔王を倒すという事でいる。
ということは魔族である彼女は敵にあたるのではないか…そしてそんな彼女に簡単にこっちのことを教えてよかったのか、そう思い聞き返す。
「そっちはリズのお連れさんね。自己紹介が遅れたけど私の名前はミーナ・ラミス。まぁ気軽にミーナでいいわ。後、さっきのことだけど別に気にしなくてもいいわよ。私も魔族だけど人間とは仲良くしたいって考え方だしこの街でもお店を開いてやってるしね。だから、どっちの味方かって言えば人間だと思うよ」
リズの話だと魔族でこんな考え方をする奴は少ないらしい。
「それを聞いて安心したよ。けど一つ聞いていいか?」
俺は一つ疑問に思っていたことを聞いた。
「ん?なに」
「何でこんな店なんだ?」
さっきからずっと思っていたが、人間と仲良くしたいそう思うならこんな店よりもっといい店があったのではないか?
もしかすると、この店にしなくてはいけないなにか理由でもあるのか?
俺はそう思い彼女に質問した。
「それは…」と顔を少し俯かせる。
やっぱり何かあるのか…この店にしなくちゃいけない訳が…
「ーーーです…」
「え?」
何か言ったようだったが声が小さく聞き取れない。
「ーーみです」
「すまんがもう一回だけ言ってくれないか」
やはりなにを言っているのか聞き取りにくい言いにくいことなのか?…
「趣味です!」
「………へ?」驚きのあまり変な声が出てしまう。
「し、しゅみ?」
「そうです!趣味です!」
「じゃあ、さっき下を向いたのも」
「恥ずかしかったからですね」
「………そういうこと」
そこからは、地獄だった。
彼女が店の商品の良さについて語り始めたのだ。
「これとか!よくないですか!見てくださいこのキュートな瞳…」
大きな蛙を手に持ち頬を染めながら言ってくる。
「他にもこれとか、こっちも」
二時間ぐらい経っただろうか…
沙月は途中から椅子に座り寝てしまった。
リズも「お菓子買ってくる」とでて行ったまま帰ってこない。
そして俺は彼女の商品自慢をずっと聞かされていた。
「ーーーっという感じなのですか、どうですか!」
目をキラキラされて聞いてくる。
「まぁ…いいと思うよ」
「そうですよねってもうこんな時間…」
「そうだな!また次来た時に続きを聞かせてくれ」
沙月を起こし帰ろうとする。
「あの!彼女さん一つ如何ですか?」
彼女は沙月にそう質問する。
沙月は店内をぐるっと見渡した後ーー
「いらない…こんな気持ち悪いの」
そうはっきりと言うのだった。
「あ…」ミーナも固まってしまう。
いや、はっきり言い過ぎだって。
けど、確かに売れないだろうな、そう思うのだった。
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