~呼応~

其の便りは随分と遅かった。

敗けを認めるのが嫌だったのだろうか?

いいや、彼は今回の退却をきっと

敗北とは、考えていなかったのだろう。


伊達だて政宗まさむね

此れは僕の友人が体験した冒険の記録。


さぁ、思い出して。

僕らの出逢い、別れ、そして────…


あなたの、大切な人。


【以上、とある日記より】



───────



────暗い。


此処は、何処だろうか。


暗くて何も見えないが

苦しい様な、…安らかな様な。


不思議な感覚だ。


   《思い出せ。》


…そう


今年で、俺は七十に成った。

其れから。



其れから、…ああ。


俺は、そうだ…

天寿と云うやつを、つい先刻、全うした。



天も地も無い、【虚無】―――――。



其れにしては…やけに。



此れが【死】なのか?

こんなにも満たされた思いが、【死】にはあるのか。



      [……ろ…]



聴こえる。


     [……藤次郎とうじろう]



皆に久しく、呼ばれず居た名だ。


【藤次郎】。

其れは俺が未だ、【武士もののふ】として、あの地を駆けていた頃。



父が居て、母が居て。

幼い弟妹たちと、そして―――――…



───────

(解説欄)後日更新



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