百合のの花 ー2ー
A(依已)
第1話
わたしが入社して、一年が経過していた。物覚えが悪く、動作のノロいわたしは、上司達に嫌われていた。サボっていると、誤解を受けた。ただわたしなりに、懸命に頑張っているつもりでいた。しかしいかんせん、非常に残念なことに、ことごとく上司達の胸には、響きはしなかった。
「木下、この額磨いとけっていっただろ!
また忘れたのか?
いい加減にしろ、このクズ!」
「何べんいったらわかんだよ。
一回で覚えらんないのか?
今度ヘマしたら、殺すぞ!」
こんないい方をされるのは、日常茶飯事で、しまいには殺害予告まで出される始末だ。驚いたことに、男だけでなく、女の上司まで同じような口ぶりだった。
背中をぶたれる日もあった。
信じられないことに、セクハラだパワハラだブラックだととりだたされるこの現代において、こんな横暴が、平気でまかり通るのだ。
たとえうっすらとて、いっこうに改善される気配がないこの社会を、わたしは心底憎んだ。
仕返しされるのが怖くて、誰にもこの窮状を、訴えることが出来なかった。わたしの就職をあんなにも喜んでいた両親にも、もちろん打ち明けることなど出来やしなかった。
いつしかわたしの腕や太ももは、冒険にはまるで相応しくない半袖短パン姿で、ジャングルにでも探検に出掛けたかのごとく、傷だらけになっていた。決してまくり上げることが出来ないこの袖のおかげで、真夏でも人よりも数倍の汗を流し、あくせく働くよりほかなかった。
百合のの花 ー2ー A(依已) @yuka-aei
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