第29話 先生と普通の子

○高校(日替り)


   翌日の放課後。

   HRが終わり席を立つ一華。

   残っている生徒達を横目に一番先に教室を出て行く。


北美原「……」


   そんな一華を北美原が見ている。


    ×     ×     ×


   廊下を歩いていると他のクラスの様子が見える。

   進学希望の生徒が残って勉強している。


一華「……」


   詩歌のクラスの前を通りかかる一華。

   黒板に補習の案内が見え、詩歌はクラスメイトと話をしている。

   その手元には大学の資料が見える。

   声を掛けず、そのまま通り過ぎていく一華。


    ×     ×     ×


   下駄箱で靴を履いている一華。

   そこに北美原がやって来る。


北美原「あ、ひかり

一華「(振り向く)」

北美原「今度さ、まだ進路決まってない奴で面談やるんだけど。良かったらお前も参加してみないか?」

 

   少し戸惑っている様子の一華。


北美原「お前の場合、もう就職で決めてるんだろうけどさ。お前、勉強出来ない訳じゃないだろ?」

一華「……」


   どう答えたらいいかわからない。


北美原「まあ、気が向いたらでいいから」


   それだけ言って行こうとする北美原。


一華「あ、先生」

北美原「(振り返る)」

一華「あの、正直、進路って言われてもよくわからなくて。自分の将来の事とか、あんまり考えた事ないんです……」

北美原「……」

一華「変ですよね? すいません…」


   自虐的に笑う一華。そのまま行こうとする。


北美原「光!」

一華「(立ち止まる)」

北美原「お前は、自分のこと普通じゃないって思ってるかもしれないけど、それは違うぞ」

一華「……」

北美原「確かにちょっとは違うかもしれない。けどな、それは寄り道してるだけだ。元の道には、いつか戻れる」

一華「(ゆっくりと振り向く)」


   一華と目が合うと、北美原は優しく微笑む。


北美原「コレでも、ちょっとはお前の事わかってるつもりなんだけどな。頼りないかもしんないけどさ。伊達に毎回、怪獣退治に付き合ってた訳じゃないからな」


    ×     ×     ×


   バイクに乗って怪獣退治に向かう一華と北美原 (フラッシュ)


    ×     ×     ×


北美原「俺が保証する。お前は普通だ。普通の高校生だ」

一華「……」

北美原「何も変じゃない。お前はコレからだ」


   口元を緩ませる一華。自虐的なソレとは違う微笑み。

   北美原に向かってお辞儀をすると振り向いて歩いて行く。

   目元を拭う仕草が見える。

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