とても意地悪なキツネと賢いネズミのハートフルな童話です。

私は心をえぐられました。
キツネ側、ネズミ側、どちらを軸に読むかによって解釈が変わってくると思います。

そこに正解なんてありません。
私たちは考え続けることしかできません。

誰だって、大なり小なり罪は犯す。
どれだけ後悔しても時間は戻らない。
現実と向き合い続けるしかないんです。

救いがないわけではありません。是非、彼らの人生の選択を最後まで見届けて欲しい。

重いテーマを、短く優しく見事にまとめあげたお話です。ハンカチを用意して読んでみてください。

　タイトルと雰囲気からして、フランスの寓話「狐物語」を連想しました。
　しかし本作はこっけいなルナールが主役の「本家」とは異なり、幾分重く、その分考えさせられる内容となっております。
　怨嗟と思慕。憎悪と敬愛。本来両立しないはずの感情が両立してしまったらどうなるのか……少し怖いですが考えさせられる内容でした。

そんなことをして死んだ○○が喜ぶと思っているのか！？
漫画やドラマでよく見かける定番の文句です。死者の復讐を目論む殺人鬼に何とか思い止まらせようとする場面ですね。
あまりにも陳腐で読者の心にはちょっと届かないかもしれません。「いや、俺がスッキリするから満足だ。こいつのせいで泣く人をこれ以上ださない為に必要な行為なんだ」などと言い返されてしまうかもしれません。

じゃあ逆だったら？
死んだアイツが喜ぶような事をしたらどうなるのか？
その答えがここにはあります。

あるいは性善説の綺麗ごとかもしれませんが、死んだ者が現世で善を成す事など決してないのです。出なかった犠牲者がその先で善をなすかも未知数なのです。
泣ける話をお探しであれば、是非！

残酷なキツネの行動から始まるショッキングな物語ですが、ネズミとの出会い（約束）を通して様々な感情を読者に与えてくれる作品です。
途中に「えっ！？」と驚く仕掛けもあり、最後は童話っぽい内容で結ばれます。感受性が豊かだったり、感情移入しやすい方にはすっと心に沁みる作品です。