イチャラブ甘々の章
01:恋愛授業(前編)(ヒロイン:ザラ)
この章の説明をします。
この章は、少女漫画、小説等の恋愛物が、恋愛に至る行程や、なにか障害となるハプニングの解決などが主題となり、両想いになっても、余り恋人同士になった二人が、イチャイチャしている話、仲良くしている時の事などが、そう多く書かれない事に不満を持っていた筆者が、それらを書くために用意した章です。
基本、主人公であるゼンと、それ以外の、まだ余り書かれていないヒロインキャラ、両想いになる話まで、まだまだ時間がかかるキャラがいるので、それを割愛して、デート等のみを短編で、書きたいヒロインの話を書きます。
ネタバレになる気もしますが、それはあえて無視していきます。
時系列としては、一応2章以降が多い筈です。思いつけば、昔の話も入るかもしれません。
本編が追いついた時には、ああ、こういう風にうまくいったのか、と思って下さい。
これは、元々筆者が考えていたもので、感想の要望に応えた訳ではなく、読者の要望と筆者が書きたいと思っていた事が、偶然重なった話で、リクエストを書けばそれを書いてもらえる、という訳ではありません。
★感想自体、余りありませんが、そういう訳で、一応リクエストとか募集していない事を注意事項として書いておきます。(要注意)
ファンタジーで冒険者の話では、基本、魔物などとの戦い、迷宮での戦いが主になってしまい、多くいるヒロイン個別の話をはさむ事で、話の本筋が進行するテンポや、シリアスに展開する場合、そんな事している場合じゃない、的な雰囲気になる事もありますので、これらの話がどこに入る隙間があるんだ?とかは気にしないで下さい。
最初は、3人の婚約者の中では、一番そうした話が少ないのでは?と指摘されたザラです。
キャラ説明で書いたと思うのですが、ザラはヒロインキャラではありませんでした。
ゼンが、過去に救い損ねた、精神的外傷(トラウマ)となったキャラで、それが年月が経ち、ゼンが強くなってから救えた、良かった良かった、とそのまま終ると考えていたのですが、筆者自身が、ザラのキャラを好ましく思ったのと、ゼンの初恋の相手である事は間違いなく、この話の流れで、ゼンが彼女を放置するとはとても思えず、治癒術士としての適性もあって、出番が増え、いつのまにか、第二夫人(ゼンは順番をつけませんが)、的な位置におさまったのでした。
それでは、長くなったので、前後編に分けた、ザラの話です。
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※
「……ゼンにぃは、ザラねぇに冷たいんじゃないかって事」
「……はぁ?」
ゴウセルの商会での、贖罪とも言える仕事をある程度終えた、ゾイ達スラムの子供達の中でも、比較的年かさの子供達、10人も、今はフェルゼンに合流していて、交代での職業体験として、代わりの十名が商会には派遣されていた。
他にも、フェルゼンという安全な箱庭でない場所で子供達が働く場所も、作ったのだが、この話ではそれは無関係なので割愛しよう。
フェルゼンでの使用人生活を始めたゾイ達は、当初、余りの待遇の良さに(主に食事方面)、ズルだえこひいきだ横暴だ?、と騒いだものだが、
「それも贖罪の一部だろ」
とゼンに冷たく突き放されてしまい、その後は大人しいものだった。ゼンを論破出来る様なつわものはいなかったのだ。
その十人だけ、ゾイは前、ゼンさんと言っていたのが、ゼンにぃとなり、他の9人がゼンさん、と呼ぶようになった。他の子供達は全員ゼン様だ。
自分達と、年下の子供達の格付けを明確にしたいのだろう。
他の冒険者には、ちゃんと様付けをしているので、元々様付けをされるのが嫌なゼンは、それを黙認している。他の子供達も、好きに呼べばいいと思うのだが、チーフ、副(サブ)チーフの教育が行き届いているのだろう。
この十人の呼び方も、別に矯正しなくていい、と先に言い渡してある。
でなければ、ミンシャ、リャンカの厳しいお仕置きが待っていた筈だ。
それはともかく、ある程度フェルゼンでの使用人生活に慣れたゾイが、唐突に言い出したのが、先程の、
「……ゼンにぃは、ザラねぇに冷たいんじゃないかって事」
という言葉だ。ゼン自身は、そんな事はない、と思っているが、表面上の出来事でしか判定のしようがないゾイ達にしてみれば、そうなるのかもしれない。
婚約者が三人になり、1日おきが、2日おきになった夜の時間、相変わらずザラは子供の添い寝にゼンをつき合わせるだけ。
他の二人が、大抵ゼンの部屋で一晩過ごすのと比べると、中で何をしているか知らないだけに(余り大した事はしていない)、ザラだけが婚約者扱い、未来の妻扱いされていない、と思うのも、仕方のない事かもしれない。
それに、ザラはスラムにとっては“癒しの聖女”で、“スラムの英雄”であるゼンの婚約者になった事は、彼等を知るスラムの住人にとっては、何より喜ばしい事であり、ザラは、いわばスラムの『代表』のようにでも思われているのだろう。
だから、その扱いが、他の婚約者達よりも悪い、と思えてしまうのは、彼等、スラムの子供達を取りまとめているリーダー格のゾイには、到底見過ごせない事態、と思えた様だ。
しかし、そんな心配する様な格差はない。
確かにザラは、フェルゼンにいる間は、子供達の世話を優先していて、ゼンとは一緒の時間も、子供達のお世話につき合わせているだけなのは本当だ。
だがそれは、ザラの『ゼンと一緒にいられれば幸せ』な信条に従っているだけに過ぎず、ザラが現状に不満を抱いている事など、これっぽっちの欠片もない。
それに、奥ゆかしいザラは、ゼンとイチャついている場面を、子供達は勿論、他人に見せたい等とは思っておらず、なのでそうした行為は、ゼンがザラを、ギルドの治療室に迎えに行った時などに、マルセナが気を効かせた数刻、治療室の控え室で、とか、帰りに人の少なくなった公園で、とか、フェルゼンなら、人のいなくなった隙を見て、物陰でそっと、とかともかくそれなりに二人は充分イチャついていた。
見せない様にしているのだから、気付かれていないのは当然なのだ。
他の二人とも、ゼン自身恥ずかしがりな方なので、余りイチャついてなどいないのだが、冒険者として同じパーティーで、行動を一緒にする事が多いサリサと、所かまわずに転移して来てすぐに飛びつくアルティエールと比べると、ザラだけが差をつけられている様に見えるのかもしれない。
まあ、当人同士が気にしていない事なので、どうでもいい事だ。放置しても構わない気もするのだが、ザラの事を思う、子供達の気持が純粋なだけに、そういう訳にもいかない。
特にゾイは子供達のリーダー格。その不安、不満を取り除かなければ、全体に悪影響を及ぼすかもしれない。
何か、いい方法はないかな、とゼンはしばし考えるのだった……。
※
今日は、一日完全に独占の日だ。つまり休日。休日にも、婚約者三人は、それを順番に独占する順番を決めていた。今日はザラの日だ。
で、それはいつもの通り、地下の子供達の部屋での学習時間に当てられている。
ザラとしては、大好きなゼンといれて、子供達の世話も出来る、一石二鳥で幸せも倍な時間なのだ。
今日はクラン『東方旅団』が休日な日なので、それぞれが部屋でノンビリしているか、中庭で訓練をしている者もいる。軽く採取の仕事を取って、従者達にそれを教えているのはエルフのチームだ。
他にも、腕がなまらない様に、討伐任務を受けている所もあれば、ドワーフの所の様に、昼間から食堂で酒盛りしている所もある。
こちらで出す酒は、一日決められた量しか出さないので、自前で買い込んだ酒なのだろう。破目を外し過ぎないのなら、ゼンは何も文句を言うつもりはない。
サリサは、新しい魔術式を、研究して開発にいそしんでいるが、同室にアリシアがいて、恐らくは精霊王(ユグドラシス)も押し掛けているだろう。研究は余り進まないかもしれない。
リュウは中庭での訓練している集団にいる。
ラルクは、休日を合わせたスーリアと部屋で一緒に過ごしている。
皆、それぞれがそれぞれの休日を楽しんでいる。
仕事が余りないので、チーフ(従魔)達の許可をもらい、子供達が増えて来る。中には休憩時間に来ていて、名残惜しそうに時間が過ぎれば仕事に戻る子供もいたが、今日はいつもよりも人数が多い。
相変わらずゾイが、何やら不満そうな顔でこちらを見ている。やはり、実行するしかないだろう、とゼンは覚悟を決めた。
事前の了承なしだが、ザラだと恥ずかしがって、断ってもおかしくない。強行してしまおう。大した事をする訳ではない。
ザラの子供達への文字を教える勉強が一段落した所で、ゼンは自分の方で教えたい事があるので、授業をしていいか?と皆に尋ねた。
子供達は皆、元気よく「はーい」と素直に答えてくれる。基本、ゼンに逆らう様な子がいないのは分かっているが、こういうのは段取りだ。
ザラはニコニコ機嫌良く、冒険者的な話でもするのかと期待している様だ。以前にも、せがまれて何度か旅の間の話等をした為だろう。
ゾイは勉強が余り得意ではないので、拒否はしなかったが、難しい話だと嫌だな、と思っているのが顔に出ていた。
「今日は、男の子と女の子が仲良くなって、恋人同士になったらどんな事をするか、を勉強しようか」
ゼンの言葉に、最初意味を飲み込めず、静かだった子供達が、その内容が段々と分かると、黄色い声で歓声を上げた。
男の子達は興味津々、女の子達は、少し遠慮深そうにして、興味ありません、とした顔をしている子と、いかにも興味が合って、同性同士でキャッキャワイワイ楽しそうにしている子達と二分の反応をしていた。
それでも、興味なさそうにしている子も、別に席を外したり、拒否をしたりはせずに、顔はそっぽ向いているのに身体は前に乗り出している、という建前と本音が駄々洩れな体勢をしている。
つまり全員興味あり、で授業を続けてもいいようだ。
ゼンの隣りで、「え?え?何の話?」と混乱しているザラを除いて。
「まず、男の子と女の子が自然と仲良くなる事もあるけど、特別な気持に気付いたのなら、告白をするんだ。『好きです、愛してます』って、自分の気持を伝える。
基本、どちらからでも構わないんだけど、気持を自覚した方からかな。男の子ははっきり言葉で伝えたり、女の子は手紙で想いをつづったり、方法は色々あるよ。
じゃあ、お手本ね」
ゼンは隣りに座るザラを、身体の向きを変え正面に見据える。真っ直ぐ視線はその目を見つめ、
『ザラ、ずっと好きだった。愛しているよ』
と真剣な声色で言う。
ザラが真っ赤になって物凄く小さな声で、『わ、私もよ……』と返事をすると、また子供達が、今度は先程の比ではないくらいに大きな声で歓声を上げる。
ゼンはその興奮が納まるまで、静かに待つ。
ザラは真っ赤になって縮こまり、このまま小さくなって消えたい、などと思っていた。
ゼンも当然恥ずかしいのだが、そこは感情制御で恥ずかしさを無視して、一時的に感じない様にさせていた。でなければ、正気でこんな事は出来ない。
子供達がようやく静かになると、ゼンは授業を再開する。
「こうやって、お互いの気持を確かめ合った二人は恋人同士になるんだけど、そうしてする事は、まず『手つなぎ』かな」
えーっと不満げな声が洩れるが、ゼンは構わずに続ける。
「普通の手を繋ぐ時は、こうなんだけど」
ゼンは右隣に座るザラの左手を強引に取って、普通の手つなぎを、手を上にかかげて見せる。
「恋人同士はこうするんだ」
ゼンは手の握りを変える。指と指をお互いの間に入れて、ガッシリしっかりと握って見せる。
ザラが小さな声で、(こ、これ恥ずかしいから、止めちゃ駄目……?)と言っているのは可哀想だが無視する。
子供達は、おー、っと先程とは違う、感心した声を上げる。
「『恋人繋ぎ』って言われてる。試しに、隣りの子と繋いでみると、どういう気持になるか分かるよ」
とゼンに即されて、同性同士の子もいるが、その手の繋ぎ方をおずおずと試してみる。
ゾイの隣りにいたのは、年下なのに、ゾイに生意気ばかり言うメアだった。
反対端には誰もいない位置にいたゾイは、仕方なくソアラの手を取って、その繋ぎ方を試してみた。お互いがガッチリと握り合うその感触は、小さく柔らかく、何か違う生き物の手を握っているみたいに新鮮だった。
そしてその繋ぎ方はお互いが握り合う事で、簡単には外せない、恋人同士の想いを象徴しているみたいだ、とゾイは勉強の成果で思う。
気付くと、メアは真っ赤な顔をして、「ば、馬鹿じゃないの、こんな……。なんでアタシの手を取るのよ……」と何故か涙目になっており、嫌がられているのか、とゾイは、
「ご、ごめん!そんなに嫌ならすぐ離すよ」
と、握った手をあけて離そうとするのだが、相手の方が握ったままなので離れない。
「め、メア?」
「べ、別に、嫌だなんて、言って、ない、から……」
紅い顔はそっぽを向いているのに、小さな手はゾイの手を握ったままだった……。
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オマケ劇場
ミ「と、いう訳でザラ様の話ですの」
リ「あれ、珍しく普通ね」
ミ「だって、ザラ様がいなければ、ご主人様はこの世に存在せず、ミンシャも生まれていないんですの」
リ「そうなのよね。婚約者だから、とかだけでなく、主様にとっても、私達にとっても大事な人、恩人なのよね」
ル「お~、るーも拝むお!なむなむ~~」
リ「……それ、ちょっと違うんじゃないかしら」
ミ「ルフ、大事に思うのはいいけれど、拝む必要はないですの」
ル「お~~、わかったお」(良く分かってない)
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