2部?章

番外編:監獄島からの脱出(前編)



 ※



「クックック……」


 その、変な軍服モドキを来た、その刑務所の所長、ガブラフは顔を歪め、こもった笑い声を洩らす。


 頭は禿なのに、顎髭だけは豊かで、強面(こわもて)の、山賊の頭のような悪人顔をした男だった。


 持った短鞭で、楽しそうにペシペシと自分の左の手の平を打っている。


 何故、刑務所の所長、というのは、その刑務所に入った囚人よりも、よっぽど悪党で惨忍に見える、外見の人物が多いのだろうか、とゼンは思う。


 だが、あくまでそれは物語などの話から得た知識で、実際にゼンは刑務所に入った事など一度たりとも経験がない。


 つまり、刑務所の所長を見たのは初めてなので、本当にどこの刑務所でも悪人顔の所長がいるのかどうかは、実際には知らないし分からないのがゼンの経験則だ。


「大陸の英雄、などと持てはやされた冒険者が、ギルドでつまらぬいさかいを起こし、同じ冒険者を複数、殺してしまうとは、滑稽極まりない話だな」


 面白くてたまらない、とニタニタ笑う。


(刑務所の所長なんてやっていると、性格も歪むのだろうか?)


 その罪は、冒険者ギルドで偽装したものであり、実際は何の事件も起こっていない。


 ゼンはギルドから、ある特命の任務を帯びて、この刑務所、脱獄不可能と言われるレンバルド王国の監獄島ガイサルに、囚人として潜入する為に、罪人に成りすましたのだった。


「……カっとしてしまいまして。まあ、相手は悪党だったので、反省していませんが」


 ゼンは、悪ぶって、ふてぶてしい態度を取ってみる。中々難しいな……。


 ゼンの中では、従魔が拍手し、リャンカやルフがキャーキャー騒いでいるのは、当然無視するとして。


「ほお。幼く見える外見の割に、開き直りおって!」


 と、唐突に所長は鞭を振り上げ、右手の鞭でゼンの左頬を容赦なく強打した。


 幼い少年の顔に、無残な裂傷が刻まれる。


 それを何回も、顔や身体、腕などおかまいなしに、鞭を連打した。


 ビシッビッシッ、と人の肉を叩き、引き裂く凄惨な音がしばらく鳴り響いた。


「ここでは、貴様の冒険者の地位も名声も関係ない!人殺しの罪人などに、情けは無用!ガキが生意気に、歴戦の冒険者気取りか!吐き気がするわ!」


 ゼンを連れて来た兵士や、所長の周りの職員達まで震え上がる恫喝。


 なのだが、ガブラフ所長は、心の中で冷や汗をかき、疑問を抱いていた。


(手が、痛む程に痺れている。まるで、硬い岩でも打った様な、硬質な手応えだ……)


 部下の手前、何も異常がない様に振る舞っていたが、この得体の知れない冒険者の少年を、薄気味悪く思っていた。


「………」


 ゼンは無言だった。


(やっぱり、俺は、普通に身体強化出来るな……)


 実際は、顔に裂傷、腕や身体の傷など、出来てはいなかった。セインの幻術だ。


 右腕にはめられた、『スキル封印の腕輪』という、シンプルで何の飾りもない腕輪を見る。


 これと、監獄島、という土地の特殊性が合わさって、囚人達を、スキルの使えない、完全な常人にまで成り下げられるのだと言う。


 それが、この脱獄不可能と恐れられる、刑務所の最大の特徴だった。


 まあ、ゼンには最初からスキルなどないので、まるで何の意味も効果もないのだが。


(おまけに、中の従魔のスキルにすら、干渉がない、と……)


 その国に冒険者ギルドがあっても、まだ従魔が完全に知れ渡っている訳ではない。そして、上級の冒険者でなければ従魔を得られない、という限定条件もある。


 この刑務所の、スキルを封印して、囚人を無力化するシステムは、従魔を想定していないのは当然としても、その存在すら考慮していないのだ。


 まだまだ世間一般に従魔術の従魔が浸透していないとは言え、お粗末な話だ。


(新しい物に対応していかないと、既存の仕組みが無駄になる事もある。今は冒険者だけでも、いずれは従魔を持つ犯罪者だって、現れるのは、必定だろうに……)


 しかし、今回のゼンの仕事では、それも都合が良く、有用だ。普通にいつも通り戦えて、従魔までも使えるのだから、言い方は悪いが、何でもし放題だ。


 今回は、負傷者もいるかもしれないので、ゼンの中にはリャンカも待機していた。久しぶりに自分のスキルが主の役に立てると、妙に張り切っている。


 ミンシャが留守番なので、拗ねてなだめるのに苦労したのは言うまでもない話だ。


 それはともかく、この刑務所は、常人を想定した造りの為に、ゼンにとっては最早、単なる掘立小屋も同然の、砂上の楼閣だった……。



 米



 数日前、某ギルドマスター執務室内。


「待っていたわ、ゼン君」


 満面の笑顔で義理の息子になるでろう、13歳の少年を出迎える、フェルズの冒険者ギルドのギルドマスター兼名誉領主の、レフライア・フェルズ。


 対するゼンは、ゲンナリとした顔で、ギルドマスターの上機嫌ぶりとは好対照だ。


「なんでしょうか、ギルドマスター。俺個人に指名依頼って、嫌な予感しかしないんですが……」


「まあそんな顔しないで。貴方なら、それ程困難な任務じゃない筈よ。逆に言うと、貴方以外は実行不可能かもしれないけどね」


 執務室のデスクに両肘をつき、手の甲を組んで顎を乗せるレフライアは、本当に嬉しそうで困る。


「なんで俺に、妙な仕事を時々頼むんですか?冒険者の仕事じゃない様なのまで、段々増えて来てますよね?」


「冒険者は基本、何でも屋よ。依頼が来て、それが正当なものであれば、大抵の事は受けるわ。それが掃除でも採取でも、人探しでも、ね」


 それは、ゼンのクランにいるドワーフに拾われた少女の親探しを、その国の地方のギルドに無理に依頼した事を皮肉っているようだ。


「……ちゃんと前金で依頼料、払ってますよ」


「フフフフ。そうね。そんな気前のいい依頼者の依頼は、断らないのがギルドのいい所なの」


 このギルマスと、口論をしても意味がない。どうせ説き伏せられるし、何より義母なのだ。


「……で、どんな依頼なんですか?」


 ゼンは深く溜息をついて、その内容を聞く。


 つまりは依頼を受ける、と言っているのだ。


「話が早い子は好きよ。これは他国のギルドに寄せられた依頼で、上級の密偵(スカウト)や冒険者が何人か行ったのだけど、依頼は果たせず、身動きが取れない様なの。


 だから、依頼ついでに、その冒険者達の方も何とかして欲しいのだけど……」


「他国で、他の冒険者の尻ぬぐいって……。肝心の依頼内容を言ってないみたいですが?」


「あらあら、そうね。貴方には、レンバルド王国の、重罪人用の刑務所、脱獄不可能と言われる監獄島ガイサルに潜入して、無実の罪で囚われている、若干十歳の、第6王女、メイリンティレス・エル・レンバルドを救い出して欲しいの」


「……刑務所から、王女の脱獄を手引き??」


 今までになく、特殊な仕事のようだ。


「そう。でも、本当に無実なのよ。彼女は、その国の公爵の息子ガーラント23歳と、一回り年上の婚約者がいたのだけど、その息子が、あろうことか、他の貴族の娘といい仲になり、そちらと結婚したくなったのね」


「……普通に婚約解消すれば、いいじゃないですか」


 ゼンは単純明快にそう思う。


「それだと、王家に対しての立場が悪くなるとでも思ったのでしょうね。それで、無実の罪を王女に被せたの。それを理由に婚約解消。


 王女は幼き頃から、虫や動物を殺して楽しむ快楽殺人鬼で、その魔の手は、ついに人にも及んだ、と……。ある子爵が、雷の魔術で死んでいるの」


「……悪役令嬢で、人死にまで出てるんですか?」


 何か、アルティエールに聞いた様な話だ。


「そうね。悪役に、無理やりさせられたの」


 ギルマスはその意味が解ってないが、話は噛み合って進んでいる。


「でも、それってかなり無理がありませんか?今現在十歳なんでしょ?まだ幼いじゃないですか」


「うん、言いたい事は分かるわ。でも、王女はそれなりの魔力持ちで、魔術に秀でた才を持っていたの。一種の天才ね。


 だけど、魔術や闘気に、その人固有の波があるのは知っているわよね?」


「ええ、勿論。ギルドでは、カードに記憶させ、それを個人の認証に使ったりしてますよね」


「そう。で、今問題になっているのは、その個人を特定出来る波が、その王女が殺した、という小動物や、人からも検出され、証拠として提出されたって話なの」


「……それって、無罪なら、偽造かなにか、ですか?」


 異世界での指紋や声紋と同じ扱いなのだが、術での誤魔化しは、何でもある物だ。


「そうね。だと思うわ。かなり上位の魔道士を雇ったんじゃないかって話ね。問題は、それがその国では決定的な証拠として認められていて、王女は有罪と裁判で確定。監獄島行きになってしまったって事よ」


 無実の子供が、と思うと余計に痛ましい。


「父親である国王とかは、それをみすみす見逃したんですか?」


「完璧な物証があるのよ。法の番人となるべき国王が、娘の為にそれを曲げるなんて、あってはならない事なのよ。でも、父母は勿論、娘がそんな事をする性格ではないのはよく知っているの」


「……娘を偽の罪に追い込んだ男って、王からの心証最悪じゃないですか。やっぱり普通に婚約解消の方がいいと思うんですが……」


「貴族には時々、そういう当り前に思考が出来ずに、自分の立場や尊厳(プライド)に無駄にこだわる間抜けがいるの。こいつはその典型的な例ね。


 それとどうも、その上位の、正体不明の魔道士、とやらにそそのかされてもいるみたい」


「正体不明?でも、そんな上位の魔道士だったら、冒険者ギルドや魔術ギルドの登録から、特定出来るのでは」


「普通はそう。なのに出来ていないの。だから……」


「また、って言いたくないけど、魔族ですか」


「多分。どうも、そいつに取り入って、その国の上層部を荒らそう、とでもしていると思われるの。どこかで聞いた話よね」


 センは、師匠と修行の旅の途中の、北の国の王都の裏路地で、複数の暗殺者に襲われていた少女、後にこの国の第3王女と判明する、8歳の少女と出会った。


 ラザンとゼンはその暗殺者を軽く撃退してしまった為に、その第3王女に、王家に起こった異変を解決してくれる様に依頼されたのだ。


 それからなんだかんだあって、叔父の大公が、魔族の魔道士の操り人形と化し、病床にあった王には、着実に死へと誘われる毒物が使用されていて、王国を乗っ取ろうとしている事が判明した。


 それらの魔族はラザンとゼンが撃退したが、最後に自分を取り戻した大公は、姪である第3王女を庇って亡くなり、その件はそれで収束した。


 ゼンはその件で基本、その第3王女の護衛を勤めていたが、妙に気に入られてしまい、国王も恩人である冒険者の少年を認め、王女には、自分の婿となり、王家入りをせよ、と告白されてしまったが、ゼンは王家にも貴族の資格にも興味はなく、ただただ冒険者として、剣術家として強くなり、フェルズに戻る事しか考えていなかった。


 だから当然断った。まだ幼い少女だ。初恋に夢を見ているだけだろう、と


「いずれ、王女殿下に相応しい人が見つかるでしょう」


 とキッパリ断ったのだが、涙目になりながらも王女は、


「4年後、我は12となり、うぬは成人の15となる。その時まで、我が心変わりせぬ様であれば、我はうぬの所に嫁入りをする。絶対じゃぞ!」


 と捨て台詞を言われてしまった。自分は成人してないのに、何故嫁入り出来ると考えるのだろうか。少女故の勘違い、思い違いなのだろう。


 あれも、もういい思いでの一つだ。


 あれから2年。今頃、自国の優秀な騎士にでも想いを寄せたりしているだろう、とゼンは微笑ましく思っていた。


 無論、世の中そんなに甘くないのであったが……。


「魔道士の方は、目標が明白だから、冒険者ギルドも、国も動いている。公爵家のお坊ちゃんも、いずれ報いを受けるでしょう」


 つまり、そちらにゼンは関わらないでいいみたいだ。


「問題は無実の罪を着せられた王女と、その教育の不備、として処刑された王女付きの侍女、殺された子爵の三女なの」


「この件で、二人もすでに犠牲者が出ていて、子爵親子は、とんだとばっちりの災難、ですね」


 ゼンは、無意味に流された血に眉をすがめる。


「いえ、その処刑前に、冒険者ギルドに依頼が来ていて、その侍女はなんとか、身代わりの人型ゴーレムに幻術を被せた物で、処刑した、と見せかけて誤魔化しているの」


「……」


 父は殺され、それを理由に、主人の王女は婚約解消、殺人鬼として投獄、教育係の役目も持っていた侍女、子爵令嬢は、王女の教育不備として斬首……。ひど過ぎないか?


「命は助けられたけど、もうその国では処刑済みの罪人。普通に生活していけないわ。王女も、無実の罪とはいえ、その名誉回復には時間がかかるし、それまでは好奇の目にさらされて生きていく事になってしまう。


 だから、一刻も早く王女を救出し、その侍女を一緒に、その国の山脈を超えた、隣国となる国までの亡命も頼みたいのよ」


「……もしかして、ルフを使って、との依頼ですか?」


「そう。出来ればお願いしたいの。籠(かご)はすでに、現地で作成済みよ」


「もう俺がやる事を確定として、全部、話を進めてるじゃないですか!」


「貴方が、そんな悲劇の娘達をむざむざと見捨てる訳、ないわよね?」


 小首をかしげても可愛くない。……後方でファナが目を輝かせているが……。


「……でも何故、その脱獄不可能と言われている監獄島、とやらで、俺が王女を脱獄させられると思っているんですか?」


「それは簡単よ。その監獄島が、脱獄不可能と言われている最大の原因は、囚人につけられた、『スキル封印の腕輪』だからよ」


「……まーた、そんな理由ですか」


 過去にも、スキル関連で頼まれた仕事が何件かある。


 確かに、ゼンの人にはない特徴、と言えば『流水』の弟子である事、従魔を普通の人の限界以上に保持している事と、スキルがまったくない事、だ。


「これは、普通の人には重大な枷(かせ)でもあるのよ。人が、自分の能力を使う為にも、育てる為にも、スキルを使っている。依存している、と言ってもいいぐらい。


 だから、その監獄で使われる、『スキル封印の腕輪』をつけられると、迷宮で活躍する、上位の冒険者も、単に身体を鍛えた程度の常人に成り下がるものなの。普通はね」


 レフライアの説明では、闘気にも『闘気術』や『気力操作』『闘気調整』等のスキルがあり、つまり封じられてしまうと、前衛冒険者の基本となる、身体強化が使えなくなる。出来てもかなり不安定で、通常の二十分の一程度だとか。


 魔術師も同じで、『魔術適性』『魔術操作』『高速思考』『魔素調整』等色々とあって、初めてその魔術師は、高度な魔術が使えるのだと言う。スキルを封印されたら、初歩の魔術ですら不安定で、使用が危ぶまれるらしい。


 スキルって人種(ひとしゅ)を強化する為のものだと思っていたけど、逆に甘やかしている?では、神を目指せたがっている筈の神々の意図とは?


 そんな根源的な悩みを、今は考えている場合ではない。


「……普通じゃなくて、すみませんね」


 ゼンは拗ねた口調で言う。


「私はそれを、異常だと思ってる訳じゃなく、前みたいに、それに縛られる事なく活動出来る、利点だと思っているのよ」


「……それはどうも。でも、そんな腕輪ぐらいで、スキルが封じられるなら、そこだけでなく、もっと色々な場所や施設で使われていても不思議じゃない気がするんですが。その監獄島、というのが初めて聞いた話ですよ」


 ゼンは、師匠の『流水』のラザンと、大陸中を修行の旅をした経験の持ち主だ。2年半に渡る旅では、大陸の隅々、とまでは言えないまでも、かなりの国々を周った筈だ。


 だがその、『スキル封印の腕輪』というのを聞いたのは、今回が初めてなのだ。


 確かに、ゼンが訪れた国にそのレンバルド王国はなかった。


 近くの国には立ち寄ったが、レンバルドは開発の進んだ国で、強い魔獣はいそうになかったので、ラザンが行きたい、と思える要素が少なかったからだ。


「ああ、その疑問は当然ね。『スキル封印の腕輪』の腕輪が効力を発揮するのは、その刑務所、カイザル島に原因があるのよ」


「原因?」


 ゼンは怪訝そうな顔でギルマスに視線を送る。


「ファナ、あの資料をゼン君に渡して」


 レフライアの左後方、秘書官用の事務机に座っていたファナは、レフライアの言われた資料を持って、ゼンの方まで歩いて来る。


「……どうぞ」


 レフライアが変な冗談を言ってから、ギルマス秘書官のファナは、ゼンに対して微妙におかしな態度を取っている。少し目を伏せて、明らかにゼンと視線が合わない様にしている。


 それは、好意なのか、逆なのか、ポーカーフェイスなファナの表情からは読み取れない。


「ありがとうございます」


 礼を言って、とにかくその資料にしばらく目を通すのに集中する。


「……神、もしくはそれ相応の術者が、大悪魔を封印した島、ですか?」


「そうなの。しかも、その封印の力が強く、その島自体に多量に漏れ出していた。


 これは、冒険者ギルドが現地の学者先生と一緒にそこで研究、測定して得られた情報を元に、出された結論だったのだけど、国に報告したら、当時のやり手な司法の責任者、首席裁判官が、島、という一般から隔離された場所である事にも目をつけて、その余剰封印力で、スキルの封印する魔具を造れないか、錬金術師に試させたの。


 で、実際、簡単に出来てしまった。それが『スキル封印の腕輪』。ただし、効果範囲はその島の中に限定されるけど、それは島自体を施設にしてしまえばいい。


 色々なスキルを持つ犯罪者はいくらでもいて、いくら魔術で障壁や建物の強化をしても、そいつらが騒ぎを起こし、あるいはスキルを使って脱獄したりするのは、どこの国でも悩みの種だったから、そこに刑務所を造るのは自然な流れだったの。


 今では、各国の凶悪な犯罪者を、大金と引き換えに受け入れてもいるわ。


 そのお金で、国庫にはそれなりに潤っている。各国にも貸しが出来る。裕福な国にもなっている」


 それだけ、スキル封印、の意味が絶対的に作用している証拠なのだろう。


「へー。それはそれは。でも、危険な重犯罪者なら、奴隷行にならないんですか?」


「死刑や奴隷までいかない犯罪者もいるし、奴隷術に耐性のある犯罪者もいたりするのよ」


 中々難しいものだ。


「そこに、貴方も犯罪者として中に入り、潜入して、先に任務に行った冒険者4名の救出、及び、王女様の奪還、ね」


 レフライアは計画の概要を説明する。


「そんな大人数でチンタラ脱獄ですか?さすがに難しいんじゃ……」


「そこは大丈夫よ。貴方が4人の『スキル封印の腕輪』を壊してくれれば、現役の上位冒険者よ。島の裏手に、隠蔽して見えない術式を施された小舟を行かせるから、彼等は彼等でそちらに行くように伝言してくれれば、後は彼等が自力でどうにかするでしょ」


「なるほど。俺は、王女を牢から出したら、その船に合流ですね」


「いいえ、貴方は別行動よ」


 レフライアの笑みが深まる。後ろでファナが溜息をついている。


「……何故ですか?」


 ゼンは猛烈に嫌な予感がして、この場から逃げ出したくなった。


「貴方には、王女が無罪であるパフォーマンスをして欲しいのよ」


 ギルマスは、とても楽し気に、悪戯を考えるやんちゃな子供の様に、その目を輝かせいている。アルの様に、獲物を前にした肉食獣の目、とも表現出来る。


 対するゼンは、頭痛しかしないのであった……。














*******

オマケ


ル「じゃんじゃじゃーん。話の中で、ちょっとしか触れてないけど、これはルーが少し大人になってるお話なのですおー!」

ジ「わー、るーせんぱい、すごーい!」

リ「私も、久々に主様の中で任務に随行いたしておりますわ」

ジ「わー、りゃんかせんぱいも、すごーい」

ル「ルーと一緒に頑張るおー!」


ミ「ムグググ。ミンシャは留守を任されるメイド長なのですの!」

ジ「みんしゃせんぱいも、すごいですよ?」

(パチパチ拍手して、ミンシャを気遣うジーク)

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