バカ出来ない理由

「買取、お願いします」


「か、畏まりました……えっと、買取素材は、まだ他にも?」


「はい、あります」


「畏まり、ました」


受付嬢は、その話を聞いていた。


ある冒険者たちが……ダンジョンに探索する度に、大量のモンスターを討伐し、その死体や……解体した素材を大量に持ち帰ってくると。


(嘘、でしょ……でも、実際に、目の前に、こうして……いや、でも)


頭の中で、何度も否定と目の前の光景によって肯定が繰り返される。


(そういえば、この子はBランクの冒険者は。強いのは、間違いない……間違いないのだろうけど、でも……だって、この量は)


解体場には、地面を埋め尽くす……程とはいかずとも、大量の素材が置かれていた。


それは、ティールが全ての素材を取り出せば、足の踏み場が亡くなってしまうかもしれないという気遣いから、一度に全て出そうとはしなかった。


(……ギルドは狙わないの? 貴族も……多くのクランも)


当然、ティールという人間を自身の懐に入れようと考え始める者が……現れ始めていた。


幸いなことに、力で敵わずとも、心に訴えかけることが出来る好条件の者たちがいる。

そういった者たちを捉えれば、無理矢理従えられることも、出来なくはない。


ただ……他者の力を利用しようと、無理矢理従わせようとする者ほど、まずは情報を集める。

まず彼の家族たち……彼らが住まう村には、村と呼ばれる土地で暮らすには、珍しいと感じるほどの強者がいる……少なくとも、二人存在する。


ティールには……同世代の友人、もしくは知人らしい人物がいる。

だが、その彼らは現在……手を出せば、間違いなく面倒に発展する学び舎にいる。


なにより情報を得た権力者たちが恐れているのは……彼らが、Aランクのドラゴンに勝利したのではないか、という情報。

加えて、権力者の傍にいる武力を持つ者が恐れたのは、Aランクのドラゴンに勝利したのかもしれないという確証が得られない情報よりも……モンスターパーティーを起こしたダンジョンで、まだ十五にも満たない年齢で一騎当千したという活躍。


ティールは……まだ子供である。

子供であればあるほど、情を利用して操れる可能性が高い。

しかし、一部の情報から、彼がおおよそ年齢に不相応な思考力を持っているという内容も含まれている。


人質という存在が、どういった場面でこそ活かされるのか……仮に情報を偽っていた場合、どういった行動に出るのか。

ティールというまだ青年には至ってない少年は、大きな力を秘めた少年ではなく、既に大きな力を秘めている少年。

仮に、少年が意を決して卑劣な手段を用いて自分を操ろうとした者を狙った場合……現在彼の傍に居る者たちの実力も含めて、卑劣な手段を行った者が殺されてもおかしくはない。


そして……これに関しては、非常に微かな可能性ではあるものの、ティールが達成した功績などを更に詳細に知っていくと、最速の場合…………Aランクのドラゴンと対峙するかもしれない。


加えて、これに関しては更に深く調べずとも、直ぐに知ることが出来る……ティールという少年に、恩を感じている貴族が複数いる。

その貴族は公爵や、実際は王族の誰かが……という訳ではない。

ただ、実際のところ彼に対して大きな恩を感じている貴族がいるというのが障害となる。


その中には……将来的に、絶対に英雄となると注目されているフローグラ伯爵家の令息、ヴァルターがいる。

彼は、聖剣技と暗黒剣技のギフトを授かるという、超特異な存在。


どちらかをギフトとして授かるだけでも稀な存在であるにもかかわらず、ヴァルターは同時に二つのスキルを授かった。

誰もが、彼は将来英雄に……もしかしたら、最強の騎士になるかもしれないと予想した。


だが、相反するとも言われているスキルを有した弊害か、彼は上手くそれらのスキルを使えなかった。

そんな多くの者たちが失望を感じた問題を……ティールとラストが解決した。

この流れで恩を感じない者などおらず、ヴァルターや現当主であるギャルバも一生返し続けても、返し続けられない恩を受けたと思っている。


結果、ティールは未来の大英雄と呼ばれ者にとって、一番繋がりが深い交友者となった。


以上の事が、頭のキレるバカ共が動かない……動けない理由であった。

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