渋々出したアイデア
「あそこ、ですよね」
「あぁ、そうだ……ふふ、子供の様にワクワクしてくるな」
(俺もその笑顔にドキドキしてます)
ディレッドビートルの討伐後は特に問題が起きず、三人は順調にジラーニへと向かい……無事、目的の街に到着。
因みに、道中で盗賊に襲われるという事件はあったが、その盗賊団の強さから、三人の中では問題に入っていなかった。
「……これまで訪れてきた街と比べて、活気が段違いだな」
街に入る為に列に並んだ際に、面倒な輩に絡まれることもなく入場。
アキラは田舎から出てきた若者……と思われるかもしれないことなど関係無く、その活気に感嘆していた。
「そうですね。同じダンジョンを有する街でも、イガルディスより活気に溢れていますね」
三人のジラーニの活気に大なり小なり驚きながらも……まずは冒険者として最優先事項である宿の確保に向かう。
これからの事を考えれば宿に滞在する時間は普段と比べてかなり短いが、ダンジョン探索で疲れが溜まった体を癒そうとするも……寝泊まりできる部屋がないとなれば、地獄も地獄。
ティールたちは金銭には余裕があるので、それなりに質が高い宿をひとまず十日分取った。
「いつも思うが、ティールはこういった部分には惜しみなく金を使うのだな」
「これから大金を稼ぐってことを考えれば、全く惜しくないんで」
ダンジョンは非常に稼げる場所。
ティールのダンジョンに対する認識は、やや緩い。
だが、それも致し方ない。
初めて攻略したダンジョンは十五階層と、あまり階層数は多くないが、それでも最下層のボス部屋にはBランクのモンスター、アサルトレパードが待ち構えている。
決して攻略するのが楽ではないダンジョンを……二人という超少人数で何度も攻略している。
そして滞在している、ダンジョン内で起こったモンスターの大量発生……モンスターパーティーを鎮圧する討伐戦にも参加し、最終的には群れのトップである筋肉ゴリラ、アドバースコングをソロで討伐した。
最下層のボスモンスターを討伐し、ついでにダンジョンの絶望とも言われているモンスターパーティーを乗り越えた。
油断大敵……と言われても仕方ないかもしれないが、ティールがダンジョンに本当の意味で追い詰められた経験はまだなかった。
「ところで、今日から潜るか? それとも明日から潜るか?」
ティールとラストのスタミナは間違いなく平均以上だが、アキラのスタミナも決して負けていない。
徒歩でジラーニまで来て到着したばかりだが、今からダンジョンに潜ると言われても、反対する気は一切ない。
「……今日のところは、適当の街中を散策して美味い飯食って、探索は明日からにしましょう」
「うむ、分かった」
今からでもダンジョンに潜れるという言葉は、決して誇張ではない。
だが、アキラは今自分はティールのパーティーに入れてもらっている立場だと自覚している。
そしてティールがパーティーのリーダーだと認めているため、明日から探索するという予定に特に異論はなかった。
「…………マスター」
「ん? なんだ」
街中を散策中、ラストは少し渋い顔をしながら主人に声を掛けた。
「明日の朝、ダンジョンの地図は……俺とアキラの二人で買い取ってこようか」
地図を持たずにダンジョンを探索するというのは、一つのロマンではあるが、基本的に自殺行為である。
ルーキーらしからぬ実力を持つティールとラストだが、さすがに買えば地図が手に入るのに、わざわざ買わずに探索しようという気は起きなかった。
「……なるほど。良い案だな、ラスト!!」
「あ、あぁ……」
「なんで沈むんだよ。その方が余計な面倒事が起きないし、良い案だと俺は思うぞ」
ティールが受付嬢にダンジョンの地図を全て売ってくれと頼めば、まず間違いなくギルド内で笑いが起きる。
Bランクという、一部の者しか辿り着けない領域に辿り着いていたとしても?
人は実際にその力を、現実を受けなければ認められない生き物。
ティールは基本的に同業者たちと喧嘩をしたい訳ではないため、ラストからの提案は本当にナイスアイデアだと思った。
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