あれが一番ではあるが

「どうやら、お目当てのモンスターが向こうから来てくれたようだな」


ラストの言葉通り、襲撃してきたモンスターは……三人が狙っていたBランクモンスター、エルダートレントだった。


ただ、襲撃者はエルダートレント一体だけではなく、上位種に従うトレントも多くいた。


「トレントは俺が片付ける。二人は先にエルダートレントの相手を頼む」


「了解」


「すまない、頼んだ!」


お言葉に甘え、二人は一番手強い敵へと意識を集中させる。


その間、ティールは宣言した通り邪魔なトレントたちを先に片付ける。


(全部で……二十ぐらいか? トレントにしては、随分と数が多いな)


これは少し面倒だと思いながらも、得物を握りしめて強化系のスキルを使用したティールの仕事ぶりは……本当に速かった。

これまでにもトレントとの戦闘経験はあり、きっちり魔石を破壊、もしくは抜き取らなければ再生すると把握しており、圧倒的なスピードで邪魔なトレントを仕留めていく。


切り裂いては抜き取り、体勢的に躱せない枝の鞭や槍、多数の針などは突風や風刃で対応。


この戦いぶりを観れば、ギルドで自分がパーティーに誘っても断ったアキラと共に行動してることに嫉妬していた野郎も、自分より上だと……本当にBランク冒険者などと認めざるを得ない。


(邪魔になるかもしれないし、先に回収しておこう)


パーティーメンバーであるラストと、一目惚れした侍の実力を信じているからこそ、ティールは基本的に戦闘中には取らないであろう作業を行ってから、エルダートレントと戦っていた二人と合流。


「マスター!! こいつは、中々面白いぞ!!!」


トレントの上位種ということもあって、当然同時に操ることが出来る枝の数が多い。


加えて、エルダートレントはトレントも覚えている木魔法以外にも、風魔法を使える個体が多い。

鋭い木の針に風を纏われると、それだけでも攻撃力が嫌という程上がる。


だが……三人が追っていたエルダートレントは木魔法や風魔法以外にも……珍しく、闇魔法を会得していた。


(エルダートレントって、闇魔法まで覚えるのか? 魔力量が多いから、複数の属性魔法を使われるとかなり厄介だなぁ…………俺はサポートに徹した方が良さそうだな)


ラストとアキラも遠距離攻撃は行えるが、決して得意分野ではない。


そんな二人と比べて、ティールがまず最初に会得した攻撃方法は……投擲。

魔法ではないが、とにかく遠距離攻撃である。


(いや、本当に……真面目にやらないと、そこそこヤバいな)


恐ろしさの大きさで言えば、初めて出会った絶対強者……ブラッディ―タイガーと戦った時の方が大きい。


だが、それでも手数の多さが半端ではなく、前衛だけで攻めまくる超フルアタッカーの状態では、非常に戦り辛い。


(この個体、俺たちが思っていた以上の、難敵のようだな)


(実に奇怪で仰天するほどの手数……やはり二人と共に行動しようとしたのは正解だったようだ)


ラストは適当な寄り道が予想以上に刺激的なこと大変盛り上がっており、アキラは二人と共に行動しようと判断した自分をこっそり褒める。


実際のところ、トルトコに到着してから、共にエルダートレントを探して戦っても良い……と感じた同業者はいた。


しかし、実際に目的のモンスターと遭遇することに成功したアキラは……候補として考えていた冒険者たちには申し訳ないが、絶対に全滅していたと断言出来る。


アキラだけ生き延びるという選択肢が取れない事もないが……敗走に追い込まれるのは間違いなかった。


(さて……こんな強敵と戦っていると思うと、闘争心が燃え上がるが……ひとまず、私が邪魔な枝を切り裂こう)


ラストがパワーだけの前衛ではない事は分かっているが、それでも得意分野は力による破壊。


それに対して自分の方が混ざっている部分を冷静に捉えたアキラは……一呼吸してから抜刀。

次の瞬間には……ラストの目前に迫っていた枝や攻撃魔法が全て斬り裂かれた。

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