説明になってない

「いやぁ~~~、やっぱワイバーンつっても、Bランクの上位個体? ってなると強かったな!!!!」


「そうね……もっと修羅場を越えて、一人で倒せるようになりたいものね」


宴会が始まっても、やはり会話の種は今回の昇格試験についてだった。


「お前らはそればっかりだな。俺としては……配下にバイコーンが追加されてるのが予想外だった。しかもあれ……普通の個体ではなかっただろ、ティール君」


「そうですね。あのバイコーン、怒りのスキルを持ってました。多分ですけど、突進の攻撃力だけなら、Bランクに迫る威力があったと思いますよ」


ばくばくと肉にサラダ、バランス良く料理を口に入れていくティール。


Bランクに迫る威力があったと思いますよ、と口にする本人の表情に、驚きの色は一切なかった。


(ん~~~……バイコーンって、基本的に突進がメイン攻撃だよな。それを考えると……やっぱり、Bランクのモンスター程度じゃ、もうこの子の相手にはならないかな?)


実際はそんな事はない。


今回ティールがソロで戦ったバイコーンは確かに通常種よりも体が一回り大きかったが、総合的な戦闘力はギリギリCランクに収まっている。


「そんな化け物と対峙して無傷。加えて、キングワイバーン戦でのサポートと良い……私、それなりに冒険者や騎士、魔術師を見てきましたけど、ティールさんほど何でも出来る方は初めて見ましたわ」


「褒めてもなんも出ませんよ」


何かを狙ったお世辞ではない。


ただ純粋なティールに対する評価である。


「そんなつもりは微塵もありませんわ。ただ、少しびっくりし過ぎただけです」


これまでどういった人生を送ってきたのか……バルバラは今までティールに会ってきた者たちと同じ疑問が浮かんだ。


(……こういった反応されると、やっぱりスキル様々と思ってしまうね)


確かに、ティールには魔法に関してはそれなりに才能があった。

正確には……魔力を操る技術。


そこだけは他人と大きく違う点と言える。

しかし、それ以外は……一定レベルまでは自力で上げた後、奪ったスキルによって戦力の幅を大きく広げた。


それはそれで既にティール自身の力だが、結局のところ元は他者の力であることに変わりはない。


「当然だ……マスターだからな」


「あまり説明になってませんわよ」


「むっ、そうか…………しかし、そうとしか言えないな。常識と言う名の物差しで測れはしない」


その当人が横で飯を食ってるにもかかわらず、ラストは遠慮なく賞賛する。


実際に、ティールはラストを購入した後、即座に教会に行って大金を支払い、傷を治してくれた。

さらっと払える金額ではない。

もうその点からして普通ではないのは確かだった。


「ふふ。こんなに慕ってくる人がいるなんて、嬉しい限りね」


「まぁ、それはそうなんだけど……ラスト、頼むからそんなに堂々と褒めないでくれ。ちょっとオーバーだ」


「ふむ……善処しよう」


その言葉に嘘はないが、本人と主人も多分無理だろうと予想していた。


「……ねぇ、ラスト。あんたモテるでしょ」


「…………マスター、どう答えるのが正解なんだ?」


「っ!!?? そこで俺に振るの? 普通にそれなりにって答えれば良いんじゃないか?」


ラストはあの一件以降、度々異性の冒険者から声を掛けられている。


中にはそれなりに美しい女性もいるのだが……ラストがそういった誘いに乗ることはない。


「やっぱりそうよね。そのモテ具合が原因で、面倒なことになったことがあるんじゃないの?」


「あぁ~~~~~……一人だけ、面倒な奴がいたな」


「何々、何があったの!!!!」


ティールが気になった女性冒険者が、ティールではなくラストの方に異性として意識し始めた……なんて話を期待していたゼペラだが、話を聞き終えた後……苦虫を噛み潰したような表情を浮かべることになる。

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