頑張り過ぎ?

武器を持ち、らしくない技術と知性を持つオーガ二体を倒してから数日後、二人の元にまだ不穏な情報は入っていない。


だが、二人が先日戦った武器を持つオーガの目撃情報はギルドに入っていた。


加えて……一組のDランクパーティーが、オークの討伐依頼を受けてから帰ってきていない。

そのパーティーには女性が二人おり、オークに負けて連れ去られたという可能性もあるが……オーガらしくないオーガと遭遇し、そちらに連れ去られた可能性もある。


「はぁ~、今日も見つからなかったな」


「そうだな。やはり、山のふもとの方に行ってみるしかないんじゃないか」


「……野営は面倒だけど、そうするしかないか」


デブリフーリルから一番近い山のふもとまでは、普通に向かおうとすれば到着まで数日は必要。

二人がスタミナ量に優れていても、確実に休憩を挟む必要がある。


ただ、モンスターのスタミナは無尽蔵に近いため、デブリフーリル周辺に現れてもおかしくない。


「そういえば、領主の娘で騎士の人たちは、冒険者を雇ってるのか?」


「マスター、もしかして売り込みに行くのか」


「そんな事するわけないだろ」


らしくない行動を起こすつもりではないと解り、取り乱すことなく会話を続ける。


「でもな、相手が相手なんだから、冒険者流の逃げ方とかできない騎士たちには、最低でもCランク冒険者が付いてないと万が一が起こりうるだろ」


「マスターの心配はもっともだな。だが、見た目からしてそれなりにプライドが高そうな女性騎士だったが」


「……そうだな。クララさんほど柔軟そうな頭は持ってなさそうだよな」


冒険者ギルドに入ってきたアミラの眼は……冒険者たちを見下してはいなかった。

しかし、見下していないからといって、一定の敬意を持っている訳でもない。


ただただ興味がない状況に近い。


「ふふ、マスターは優しいな」


「いきなりどうした?」


「貴族の令嬢ではあるが、あの女性騎士とは無関係なのだろ」


「全くもって無関係だな」


ハッキリ、キッパリ断言するティール。


珍しく強い美女にそういう意味で興味を持たない主人に、小さくバレない様に笑うラスト。


「そ、そうか……でも、その割には色々と心配してるじゃないか」


「だって、結果的に知性と戦闘力が高いオーガに連れ去られたら、人質になって邪魔だろ。俺も強くはなったけど、人質がいるとな……敵が敵だから、上手くやれるかわからないんだよ」


見た目に似合わない戦闘力の高さを持っているティール。

その中でも頭一つ抜けているのがスピード。


奪い、積み重ねてきた強化スキルを加算すれば、その速さは超一級品。


しかし、ティールは件のオーガの異質さから、人質を取られては「相手が人質に手を上げる前に相手を殺せば良い」作戦が通用しないかもしれない、という不安を持っている。


「確かに、今まで戦ってきたことがないタイプの相手ではありそうだな」


「そうだろ。捕まったら捕まったで自業自得だとは思うけど、救出となったら絶対に無視出来ないだろ」


「それまでに生き残っているかどうかは解らないが、そちらに集中しなければならないだろうな」


二人そろって深いため息を吐きながら、宿に戻った二人。


そして翌日には「ワーカーホリックでは?」と思われるほど、当たり前にギルドへ向かっていた。


「ん? なんか、ちょっと騒がしいな」


「そうだな……もしや、件のオーガの情報でも手に入ったのか?」


周囲を見渡し、顔見知りの冒険者を見つけ、ティールはギルド内の騒がしさについて尋ねた。


「知らないのか? ほら、少し前から領主の娘がオーガの捜索に乗り出しただろ」


「はい、そうですね……って、もしかして領主の娘が連れ去られたんですか!?」


最悪の状況になってしまった……と思うには、少々早とちり。

とはいえ、領主の娘であるアミラにとっては不本意な結果になっていた。

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