基本、好きなように

街を出てから一度休憩を挟み、ようやく巣が見える場所へと到着。


「あそこがコボルトとオークの巣だね」


「一丁前に俺ら人間の真似をして家まで作ってやがるな」


「どうやらそれなりに知識を持っている個体がいるようだな」


開けた場所には五十程のコボルトとオークがおんぼろな住処を作り、滞在していた。


「おい、イグラス。あそこ」


「……それっぽい場所だね」


コボルトはあまり人間の女に興味ないが、オークはバリバリ性的に興味がある。


ボロボロの住処と違って、一つだけ比較的まともな住処があった。


「情報では何人かの女性が連れ去られたという情報がある。もしかしたらあそこに集められてるかもしれないね。予定通り、いこう」


オークの習性的に連れ攫った異種族の女性を閉じ込めて好き勝手にしている可能性が高い。

そういった状況も事前に考えており、救援部隊の構成も考えていた。


「よし、各自動いてくれ」


目標はコボルト、オークの全滅。


そしてオークは比較的に強い部類に一応入るので、逃げ出した個体が冒険者になったばかりのルーキーと遭遇してしまうと、あっさり殺されてしまうかもしれない。


故に、巣を囲う様にして逃げ場をなくしながら倒していく。

しかしこの作戦を行う際、背後から全く関係無いモンスターからの襲撃に備えなければならない。


「マスター、俺は傍に居た方が良いか?」


「いいや、その必要はないよ」


自分の立場を自覚しているからこそ、一応そばに居た方が良いのか尋ねた。

だが、ティールにとってそのような心配は不要だった。


「基本的にお前が暴れたいように暴れて良いよ。ただ、他の同業者たちに迷惑を掛けないようになた」


「了解!!」


好きに暴れて良い。

その言葉を貰ったラストは身体強化のスキルを発動し、大剣を鞘から引き抜いて文字通り暴れ始めた。


(……気難しい奴が多いと、自分たちの獲物を奪うなって声を荒げそうだな)


暴れてはいるが、ラストは戦況をしっかりと把握している。

後方から遠距離攻撃で狙われているであろう個体は攻撃せず、他の冒険者と戦っている個体にはジャブ程度に攻撃を加えて骨を折るぐらいにして次に移る。


「ガルルァアアアアッ!!!!」


「逃げないのは勇敢だな」


蛮勇とも言える行動をするコボルトに対してそんな言葉を送るティール。


自分たちの住処を襲われ、死に物狂いで襲い掛かって来るコボルトは普段の数倍迫力がある。

ただ、ティールからすればそこまで大した迫力とは思わない。

そして今まで何度も実戦で戦ってきた相手ということもあり、特に恐れる必要はない。


油断大敵と思われるかもしれないが、コボルトとティールにはそこまで大きな力の差がある。

通常種のコボルトは全力で身体強化のスキルを使い、どこかで拾ったであろうロングソードを振り回す。


それに対してティールは素の状態で体を後ろにそらして躱し、そのまま右足を蹴り上げてコボルトの顎を蹴りぬいた。

蹴りは見事に決まり、頭を体から引き抜いて頭が空高く跳んだ。


「これ貰いっと」


右手に持っていたボロいロングソードを奪い、そのまま次に襲って来るオークに全力投球。


ティールを襲おうとしていたオークは終手て投擲をガードしようとしたが、間に合わず喉を貫かれた。

そしてロングソードはそのままコボルトナイトの肩に直撃。


そのチャンスを逃さず、先輩冒険者が大斧で胴体を全力で切り裂いた。


(向こうの大将はコボルトジェネラルとオークジェネラルか)


群れの二大将はまだ戦場に参加しておらず、中心部から声を荒げて他の上位種や通常種に指示を飛ばしている。

統率のスキルによって、支持を出された同族たちの身体能力を上昇。


まだ自分たちが出る幕ではない……なんて司令官っぽいことを考えているが、中々の勢いで同族たちが倒されていくことに対して、完全に焦りを感じていた。

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