なんだかんだ動いていたら
「なぁ、マスター。そろそろ帰った方が良いんじゃないか?」
「えっ? ……あぁ、そうか。起きてから結構時間経ったか」
依頼の討伐対象であったキラータイガーを倒し終え、さすがにまだ時間が速いのでもう少し探索しようということになった。
そこから二人は遭遇するモンスターを全て倒していたが……夕方ごろには帰ろうと当初は考えていたが、既に遺跡の外はかなり日が落ちていた。
「……よし、速足で帰るか。スタミナは大丈夫か?」
「あぁ、問題無い」
二人は脚力強化のスキルを使用して、周囲を警戒しながらも走りながら遺跡に出入り口へと向かう。
その間、全くモンスターと遭遇しないということはなく、何体かのモンスターと出会う。
しかしティールが首の骨を折り、ラストが頭部を殴り潰す。
一瞬の判断で容赦なく急所に大ダメージを与えて戦闘不能に持って行く。
早く街に戻りたいので、解体はせずに死体は亜空間の中へポイ。
この調子なら余裕で夕飯頃には戻れる。
二人ともそう思っていたが、冒険は街に……宿に、家に帰るまでが冒険。
帰り道に危険が急に襲い掛からないとは限らない。
「ルーキーッ!!!! 全力で逃げろ!!!!」
別方向……しかし丁度お互いが見える位置から冒険者の姿が見えた。
(何かと戦っているのか?)
受けた依頼の討伐は終えた。
その後、それなりに遺跡を探索して満足出来た。
完全に満足はしていないので、後日また来よう。
そう……また後日来れば良い。
今日はもう帰ってギルドで用事を済ませ、美味い飯を食べて風呂に入ってからぐっすりベットで寝れば良い。
だが、声がした方向にいるモンスターの姿を見て……非常に興味が引かれた。
「ラスト、あれは……ヴァンパイア、か?」
「……外見からして、特徴は一致している。周りにいるのはレッサーヴァンパイアだな」
ヴァンパイア……別名、モンスター界の貴族。
他種族の血を好物とするモンスター、吸血鬼。
バット系モンスターの力と大概、人に近い姿を持つ。
そして自分より下位の存在であるレッサーヴァンパイアを召喚することが可能。
(ヴァンパイアの服装……かなりボロボロだな。もしかして遺跡のどこかで封印されてたって感じか? それをあの人たちが運悪く解除してしまって今に至る……そんなところか)
ヴァンパイアのランクはB。
他人に咬みつき、そして自分の血を与えることで眷属にしてしまう能力を持つ、非常に恐ろしい能力を持ったモンスター。
だが、脅威はそれだけではない。
純粋な身体能力が高く、多くの個体が武器を扱う。
頭が良い……かどうかは個々によるが、確かな技術を持っている。
それに加えてレッサーヴァンパイアはDランク。
速度は遅いとはいえ、再生のスキルを持っている。
そしてそれは召喚した主であるヴァンパイアも同じ。
(人型のBランクモンスターか……滾るな)
是非とも自分が倒したい。
そう思った瞬間に、自分以上の熱意を感じさせる人物が隣にいた。
(……ここは譲るか)
一瞬で自分以上の熱意を発したラストの闘志に感服し、ティールはラストをメインにして戦おうと決めた。
「ラスト、行くぞ」
「了解!!!!」
この状況、自分から目の前の冒険者たちに「加勢しましょう!!!」とは言えない。
何故ならラストの立場は奴隷だから。
一緒に冒険をし、尚且つティールの秘密を守りながら行動出来る存在。
そしていざという時、マスターの剣に……盾になる。
それがラストの役割。
主人を生かすということを一番に考えれば、ここは今レッサーヴァンパイアとその主であるヴァンパイアが戦っている冒険者の言う通り、逃げるのがベストな選択。
ティールがどれほど常人離れした力とスキルを持っていても、現時点ではまだ最強ではない。
負ける可能性が高い相手であればあるほど、逃げなければならない。
だが……この状況でラストの主は目の前の言われた通り逃げるのではなく、冒険者たちに加勢してヴァンパイアを倒す道を選んだ。
その決定が嬉しく……つい、凶悪な笑みが零れてしまった。
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