必然的に直ぐ上がるのでは?

「……おはよう、ラスト。もう起きてたんだな」


「さすがに主であるティールさんより後に起きるわけにはいかない」


「別にそういうのは気にしなくても良いんだが……とりあえず朝飯食べるか」


顔を洗ってササっと着替え、まずは腹ごしらえ。


「適当に面白そうな依頼を受けると言っていたが、ティールさんはこういった依頼を受けたいという要望はないのか?」


「要望したところで、受けられるか分からないからな……討伐系は基本的に楽しいから、討伐系の依頼でも良いんだけど、遺跡に入る系の依頼でも良いな。せっかくヤドラスの遺跡が近くにある街に来たんだし」


「それもそうだな。森の中よりも強いモンスターが現れると聞くが、俺たちなら問題無いだろう」


周囲の客はやや問題ありではと思う者が多いが、実際のところ本当に問題はない。


見た目が超イケメンの細マッチョ竜人のラストは身体能力が優れており、一通りの武器は扱える。

そして魔法も使えるので遠距離攻撃もバッチリ。

切り札として竜化のギフトを持っているので、予想外の強敵と遭遇しても対処出来る。


見た目は少々頼りない人族のティールだが、たゆまぬ努力とオンリーワンのギフトである奪取≪スナッチ≫を手に入れたティールにはほぼ死角がない。


「だな。でも、ラスト。今日は俺も戦わせてもらうぞ。昨日は全部お前が戦ったからな」


「……分かった。主の楽しみを奪うのはよくないからな」


二人ともモンスターとの戦いに楽しさを感じるタイプだが、しっかりと理性はあるので、強い敵と戦うためにルールを犯すようなことはしない。


「よし、行くぞ」


朝食を食べ終わって直ぐにギルドへ出発。

外に出ると、太陽が真上……よりも少しだけ傾いていた。


「……十時ぐらいか」


「それぐらいだな。今なら冒険者ギルドは空いているだろう」


「おう。わざわざ無理して依頼をもぎ取ろうとしなくて済む」


「そうか……なぁ、ティールさんならその力で他の冒険者をどかし、て良さそうな依頼書を取ることが出来るんじゃないか?」


「お前、ぶっそうなことを考えるな。出来るか出来ないかで言えば出来ると思うけど、そんなことしてたら冒険者ギルドから悪い印象を持たれるだろ」


積極的に良い印象を与えようとは考えていないが、積極的に悪い印象を与えようとも思っていない。


「うむ……だが、ティールさんなら一気にランクを上げることも可能だろ? そうすれば、自然と他の冒険者は避けるのではないか?」


「ランクは誘いがあれば上げていこうと思っているけど、自分から積極的に上げようとは思っていない。いずれは高ランクの冒険者になりたいと思っているが、目的は旅をしながら冒険者としての人生を楽しむことだからな」


(あと、自分が惚れた子とこう……付き合う!! その為に強くなろうとしてるんだしな)


本音の部分は隠すが、言葉にした内容が嘘というわけではない。


前回は幼馴染同士で気になっていたので引いたが、また気になる人物が現れれば勇気を出してアタックしようと決めている。


「なるほど……だが、俺と同じく戦うことが好きだろ」


「それはそうだな」


「であれば、そう遠くない内に強敵と戦う筈だ。そうなれば、ランクが上がるのは必然ではないのか?」


「そりゃあ……そうかもしれないな。でも、俺の見た目が見た目だから、大半の人は強敵を倒したから正式に……もしくは特例でランクアップしたって聞いても、納得しない筈だ」


それは仕方ないと本人は納得しているが、ラストはあまり納得出来ていなかった。


「……人の実力を見極められないというのは可哀そうだな」


「そこら辺は人によりけりってところだ。人の力を見抜けないのが原因で、痛い目に合う奴は多いだろうけどな」


ティールは過去に痛い目に合わせる側だったのを思い出す。


(馬鹿がほざいているだけ……それは分ってるけど、やっぱり馬鹿にされたら、それはそれで腹が立つんだよな)


これから愚かな輩に出会って絡まれれば、ティールは変わらずそれ相応の対応で返すつもりだった。


「着いたな。さてさて、どんな依頼が残ってるかな~~」

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