その方法は良かったが

「さてさて、本当にサイクロプスがいるのかどうか……どうせなら遭遇して討伐してしまいたいものだな」


力に特化したモンスターではあるが、サイクロプスのランクはC。

亜種や希少種でなければ、Bランクを超える実力は持たない。


(力に特化した個体なんだし、俺にとっては狩りやすいモンスター……の、筈だ)


力勝負も苦手ではないが、ティールはどちらかといえばスピード寄りのステータス。

脚を強化すれば、サイクロプスの攻撃に捕まることはない。


「……森の中にも結構冒険者が多いんだな」


あまり他の冒険者と遭遇しないように動いているが、気配感知を使って周囲の気配を探っているので、近くにいる冒険者の気配が感じ取れる。


(大半の人が遺跡にしか興味がないと思ってたけど、案外そうでもないんだな)


遺跡に興味を持っている冒険者が多い。それは当然のことだ。


だが、ヤドラスの遺跡を探索して無事に帰ってこられるのか……それは本人たちの実力による。

故に冒険者になったばかりのルーキーがヤドラスの遺跡に入るのは自殺行為。


それ以外にも安全面などを考え、森の中で受けられる依頼を重点的に受ける冒険者は少なくない。


「「「「グルルルルゥゥ……」」」」


「おいおい、もうちょい気配を隠そうぜ。それとも、四体もいれば俺を簡単に狩れると思ってるのか?」


ティールを囲ったモンスターはブラウンウルフ。

Dランクのモンスターであり、これといって特徴を持たない狼系のモンスター。


(風魔法のスキルを持つグリーンウルフが三体がかりでも敵わなかったのに……って思って、通じる訳ないよな)


向こうから来た獲物に対し、遠慮する必要はない。

だが、刃を抜く必要もない。


抜くまでもない相手なので、さほど警戒する必要もなく……ティールは自ら動いた。


「衝撃」


「ッ!!!」


身体強化のスキルを使用すれば、ティールの脚は完全にブラウンウルフの脚を上回る。

ブラウンウルフが身体強化を使ったとしても、練度の差が開き過ぎているので追いつくことはない。


最近愛用している衝撃を使って脳を破壊し、戦闘はたった十秒ほどで終わってしまった。


「さてさて、ブラウンウルフでも売れる素材は多い。しかり解体していかないとな」


綺麗に牙や爪、肉や毛皮などを切り分けていき、解体が終われば直ぐにサイクロプスを探しに向かう。

ただ、一時間ほど森の中を探し回ってもそれらしい姿や足跡すら見つからない。


「……モンスターとは遭遇するけど、目的のモンスターとは全く遭遇しないな。森の中から一体だけ見つけるってのは難しいかもしれないけど……そうだ」


何かを思い付いたティールはその場で大きく跳躍し、大きな木々の枝へと飛び乗った。


「うん、この見晴らしが良い場所から探せばサイクロプスを見つけやすいだろ」


受けた依頼はサイクロプスが生息している場所、移動した形跡。

仮に発見したとしても、わざわざ倒す必要はない……だが、ティールの脳内では既にサイクロプスを倒すことに入れ替わっていた。


ただ、サイクロプスを見つけるのに木々の枝を伝って探すというのは悪くない方法。

しかし空から見えやすい場所を移動していれば、それだけ空を飛ぶモンスターに見つかりやすくなる。


「……げっ、早速か」


枝を跳んで移動し始めてから五分後、直ぐに鳥系のモンスターに見つかってしまった。


「おいおい、ジェットファルコンじゃないか」


鑑定を使用した結果、Cランクの鳥系モンスターだと判明。

加速のスキルを有しているジェットファルコンの最高速度はBランクの域に突入する。


そしてその最高速度から放たれる突撃は大盾を貫通する程の威力を持つ。

体は当然ティールよりも大きく、矢を放っても中々当たらないほど空中での動きが優れている。


「でも、鳥系のモンスターは肉が美味いし……こいつも美味そうだよな」


いかにも侮りに近い言葉を零すが、内容はジェットファルコンに伝わっていない。

そして……ティールは言葉とは裏腹に表情は優れず、あたふたしていた。


「ッ!!!!!」


現在の飛行速度からもう一段階加速し、ティールの体をその鋭いくちばしで貫こうとする。

だが、ジェットファルコンはまんまと演技に騙された。

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