結局はバレるズル
ティールは相変わらず昼間から夕方は街の外に出てモンスターを狩り続け、夜は気分が乗れば歓楽街へと足を運び、カジノで数時間ほど遊んでいた。
「ふぅーーー、勝った勝った」
ルーレット、ポーカー、バカラ、ダイス、ブラックジャックで遊び、結果的に本日も勝利を収めた。
ポーカーでは他の遊び人のブラフに騙されることもあったが、最終的にはチップ数を増やした。
最後のブラックジャックでは見事に数を二十一に揃え、勝利。
ビギナーズラックが続いているのか、それとも単純にティールのプレイレベルが高いのか……それは本人も解らない。
本人としては少し考えながらギャンブルを楽しんでいるだけ。
総合的に見ればどのゲームも勝っているので、イカサマを疑う客もいた。
しかしティールはそんな卑怯な真似はしておらず、他の遊び人がディーラーにいかさまを見破られて黒服のお兄さんに連れていかれることがあった。
(なんで自分のイカサマはバレないって思うんだろうな……今までバレてボコボコにされてきた人がいるぐらいは知ってる筈なのに)
楽して金を稼ぎたいから。
カジノではなく、対人戦では通用したから。
どうしても借金を返さないといけないから。
理由は人それぞれあるかもしれない。
だが、イカサマはいずれバレる。
(勝ち方はそれなりにあるんだから、焦らずに適度に続けていけば良いと思うんだけどな)
まだまだ楽して短時間で金を稼げる感覚に溺れていないティールらしい考え。
だが、一度その沼にハマってしまえ、中々抜け出すことは出来ない。
しかしティールは自分がハマらない自信があった。
なぜなら、冒険者として活動する楽しさを知っているからだ。
ギャンブル以上の楽しさを知っていれば、本腰を入れて頑張ろうと思う心は必然的にその楽しい道へ向く。
「そろそろ帰るか」
本日もがっつり稼ぐことに成功したティールは大人の店で遊ぶことはなく、良い気分に浸りながら帰路に着く。
(……今日は誰も来ないみたいだな)
先日、ティールからギャンブルで勝った金を奪おうとしたチンピラが潰された件は直ぐに広まり、カジノに通う遊び人達にはティールの正体が広まっていた。
正体が広まっても、その強さが本物だと信じる者は多くないが、ティールから金を奪おうとしたチンピラが叩きのめされた。
その話は事実なので、イカサマで勝利しているのではと疑っても、直接手を出そうとする馬鹿は現れなかった。
そして素材をバースに渡してから十日後、約束通り武器を受け取りに来た。
「どうも、こんにちは」
「おう、来たか。相変わらず連日でモンスターを狩ってるらしいじゃねぇか」
「何で知ってるんですか」
「噂になってるぞ。ティールはどんなに動いても疲れないんじゃないかってな」
昼手前に起きれば、昼食を食べてから直ぐに街の外へと出てモンスターを狩る。
そんな生活を続けているので、一部ではそのような噂が立っていた。
スキルやマジックアイテムにはスタミナを上昇させる物もあるので、動く時間を考えれば明日に疲れを残さず毎日動くことは出来る。
だが、ティールは特にそういったスキルやマジックアイテムを身に着けていない。
スタミナは自前のもの。
「別にそんなことないですよ。帰ったらしっかり爆睡してます。ただ……俺の場合は他の冒険者と比べて、武器の消費が遅いんですよ」
「そういえば投擲が得意だったな」
「そうです。ある程度のスキルレベルがあれば、低ランクのモンスターは投擲だけで倒せる。それに魔力操作が上達すれば、こんな風に魔力の刃を自在に出せます」
その場で右手から魔力の刃を生み出す。
「なるほど、な……綺麗な刃だ」
属性を含んでいない、ただの刃。
しかし洗練された魔力操作によって、鍛冶師のバースには一級品の刃に見えた。
「投擲と魔力操作があるから、武器を消費しない。後は……モンスターの気配を察知するのが早いからじゃないですか?」
「なるほどなぁ……とりあえずお前が規格外過ぎるというのは改めて解った。んじゃ、早速だが三つの武器を見てくれ」
奥からティールが頼んでいた武器を持ち運び、カウンターの上に置いた。
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