副作用がどうなるか
「ぐ、具体的には何をすれば良いんですか?」
「……もっと自分の命を大切にすること。それと自分がパーティーのリーダーであることを自覚させる。この二つだな。リーシアなりの言葉で伝えてくれたら良い。そしてその結果問わず、銀貨二十枚は報酬として渡す」
おそらくリーシアの言葉を聞けば暴走しかけている心が納まる。
そう考えているガレッジだが、片思い中のリーシアにそこまで言われてもその性格や考えが治らないのなら、もはや救いようのないバカ確定となる。
(いや、現時点でも中々の馬鹿だ。それでもルーキー達の中でも優秀な部類だからな……ベテラン組としては若い芽は真っすぐ育って欲しい)
なんてガレッジの思いも、今のところバーバスには全く届いていない。
「……解りました。伝えた後にガレッジさんに報告すれば良いんですよね」
「そうだ。言葉はお前に任せる」
紙を使った契約はなく、単純にお互いを信頼してこその形。
勿論ガレッジはリーシアからの報告を受け取れば即座に銀貨二十枚を渡す。
リーシアも信用出来る先輩冒険者のガレッジから信用を無くすようなことはしたくないので、帰ったらバーバスに伝える言葉を真面目に考えると決めた。
そして討伐が終わってから三日後、ティールはガレッジと一緒に夕食を取っていた。
「あれの報告なら別に店の中じゃなくても良いんすけど……」
「そう言うなって。この前の依頼でお前が同行してくれたことには本当に感謝してるんだよ」
「こっちも数が多かったんすから、俺がいなくてもそこまで被害は出なかったはずですよ」
「かもな。でも、誰かが死ぬ可能性は大幅に上がっていた筈だ。それに、バーバスを上手く止める奴がいなかったらもっと被害が広がっていたかもしれない」
バーバスのせいで被害が広がったかもしれないという内容には否定出来ない。
ただ、バーバスならばエリックが止められると思っているティールは首を捻る。
「エリックがいるから被害はガレッジさんが考えているほど広がりはしないと思うっすけど」
「バーバスは一見、お前よりエリックの言う事に従う様に思えるが、極限の状態になれば話は変わってくる。ライバルと思っているからこそ、従えない部分ってのがある」
「ライバルだからこそ……解るような解らないようなって感じです」
今までライバルという存在がいなかったティールには完全に理解が出来ない。
ただ、譲れない領域があるというのはなんとなくだが解かった。
「まぁそこら辺は置いといてだ、いざという場面でエリックはお前ほどバーバスを上手く止められないという事だ。そういう面もあって、お前が討伐に参加してくれたことに感謝している。だから昼飯ぐらい奢らせてくれ」
「……分かりました。それならご厚意に甘えさせて貰います」
ティールとしては討伐終わりに夕食までたらふくご馳走になっているので、十分にお礼は貰っていた感じていたがタダで飯が食べられるなら食べてしまおうと即決。
「たらふく食ってくれ」
「それは有難いですけど、懐の方は大丈夫なんですか?」
「そこは心配するな。昼食一回驕っただけで寒くはならない」
「そうですか」
ある程度腹が膨れるメニューを頼み、料理が届くまで話の話題を戻す。
「それで、リーシアは上手くバーバスに伝えられたんですか?」
「あぁ、仲間のシーフが偶々その様子を見ていたからぶっちゃけ報告はなくても大丈夫だった」
「それリーシアに言わない方が良いですよ。でもリーシアが真面目に考えた言葉を伝えたという事は、バーバスから俺に対する執着とか暴走心は消えたんですかね」
「仲間からの報告だと目からはそういった感情が抜け落ちていたらしい」
完全に消えたとは言い切れないが、討伐直後やリーシアに声を掛けられる前の状態よりは心の中から黒い感情は消えた。
ただ、ティールへの対抗意識は消えてはいない。
「それは良かったです。でも……バーバスが勘違いしないかちょっと心配ですね」
「あぁ~~~……勘違いしてしまう可能性がゼロとは言えないな」
片思いしている人物が自分のことを真面目に心配していた。
それを知ってしまったら、もしかしたらワンチャン自分にも可能性があるのでは!? と思ってしまっても仕方ない。
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