お世辞では無い
ゴブリンの巣に向かって出発してから約三時間。
ゴブリン以外のモンスターに何度か襲われるが、今のところは全員無事。
Cランクの冒険者もいるので当然の結果ではあるが、その大半のモンスターはティールが仕留めていた。
「……ラージアスキャットを一人で倒したって話も、あながち嘘じゃなさそうだな」
ガレッジの話は少し盛り過ぎだと思っていたDランクの冒険者達だが、そこら辺に落ちている石ころを投げてモンスターの急所を的確に貫くコントロールと威力。
それだけでティールの実力の高さが垣間見える。
「へっ、石ころ投げるのが得意なんてなんの自慢にもなりゃしねぇよ!!」
自分の出番を殆ど奪われてしまったバーバスはティールの投擲にケチをつけるが、ベテラン達はその腕を認めていた。
そもそも投擲はスキルレベルが高ければ腕力上昇やコントロール補正の効果も得られるが、肝心なのは投げる者の身体能力。
元が弱ければお話にならない。
そしてモンスターによっては石ころに魔力を纏ったりと的確な判断を下しての攻撃。
ルーキー達もティールのレベルが高い投擲の技術に目を奪われていた。
「本当に凄いね。あそこまで正確に急所を貫くなんて中々出来ないよ」
「投擲は俺が初めて覚えた武器だからな。そりゃ年季が違うに決まってるだろ。でも、ある程度練習では的に当てる事を意識して、その後に実戦で使えば自然とスキルレベルも上がってエリックも俺みたいに投げられるよ」
幼い頃のティールと比べて当然のことだが、エリックの方が身体能力は高い。
なので仮に急所に当たらずとも、体のどこかに当たればそれなりのダメージになる。
肝は動く的にどうやって的確に当てるか。
それさえ克服してしまえばそれなりに使える武器となる。
「ティール、私もしっかりと投げられるようになるわよね!!」
「お、おぅ。しっかりと練習を積めば出来るようになると思うぞ。それに魔力操作はエリックよりリーシアの方が上なんだろ。だったら石に魔力をサラッと纏わせるのもリーシアの方が早いと思うぞ」
「……それもそうかもしれないわね。ふっふっふ、早く身に着けて実戦で使ってみたいわね」
最近訓練に投擲を加えて練度を上げようと頑張っているリーシアだが、まだ実戦で使うには精度と威力が足りない。
「魔力をサラッと纏う、か。それはやっぱり僕のこれからの課題だね」
エリックも物に魔力を纏うことが出来るのだが、リーシア程スムーズには行えない。
魔力操作に慣れている冒険者は敵を斬る瞬間にだけ刃に魔力を纏い、斬り終わった時には刃に纏った魔力を消している。
それが出来れば魔力消費の節約にもなるので、エリックとしては早くスムーズに魔力を纏う、消すの流れを行えるようになりたい。
因みにティールは既にそれをサラッと行える。
「エリックなら直ぐに出来るようになるだろ。だから焦る必要は無いと思うぞ」
その言葉は慰めではなく、本当にエリックなら直ぐに出来るようになると思っている確信の言葉。
エリック以外のルーキー達が努力をしていないとは思わないが、それでもエリックはルーキー達の中では誰よりも努力を重ねている。
(残念ながら、エリックが持っている才能は他の連中と比べても何段か上って感じだしな)
才能だけが全てでは無い。だが、才能がなければ超えられない壁は存在する。
「ティールにそう言われると何だか上手く出来そうな気がするよ」
「それは気のせいじゃないか? 単にお前の努力がしっかりと報われるだけだ」
「ルーキー達、楽しく喋るのも良いが、敵のお出ましだ」
ガレッジの言葉に即座に反応し、気配察知に反応した敵を数える。
「数は六……キラードッグか」
「ルーキー達、今度はお前らで仕留めろ。ただしティール、お前は三体までだ」
「了解です」
他のルーキー達の体をほぐす為に数体は残しておきたい。
その意図が伝わったティールはその場から跳び出して三体だけ投擲と斬撃、そして蹴りで仕留めてしまう。
身体強化を使って倒し終えたその時間は……五秒弱。
「……おいおい、ガレッジ。あの子本当にルーキーか?」
「残念ながら、マジでルーキーらしいぞ」
ルーキーなのか疑わしい、思わずベテランがそう思ってしまう程にティールは鮮やかにキラードックを倒し終えた。
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