文句を言わない
「……リーシア、お前の方が楽しんでないか?」
「そ、そうかしら? で、でもっ、ティールだって服は買うでしょ」
「いや、それは確かにそうだけどさ」
現在ティールとリーシアは服屋に訪れ、リーシアは色々と服を見て回り、試着もしている。
正直、ティールは服にそこまで興味は無い。
モンスターの素材が使われており、防御力が高かったり何か効果があるなら興味を持つが……生憎と現在訪れている店はそういった類の店では無い。
(でも、そういえばジンさんが女性との買い物は文句を言わず付き合った方が良いって言っていたな。別に今回のこれはデートでは無いが……そういった事には気を付けておいた方が良さそうだな)
文句を言わず、ティールも男用の服を眺める。
(オシャレっていうのはあんまり興味無いが……モテるには、こういった服選びのセンスも重要なのか? 当たり前だが……強ければ良いってもんじゃないんだな)
改めて己の浅はかさが身に染みる。
「ティール、どっちが良いと思う?」
白と薄い水色のワンピースを見せ、ティールにどちらが良いか尋ねる。
これは重要な選択だと思い、ティールは真剣に頭を悩ませる。
(純白と薄い水色・・・・・・正直、どちらのワンピースを着ているリーシアを想像しても似合っている。どちらが良いではなく、どちらも良いっていうのが俺としては答えなんだが……多分、そういうのは求めていないんだろうな)
中々答えを出せず頭も悩ませるティールだが、流石にどちらか答えるべきだと思い……薄い水色のワンピースを選んだ。
「こっち……かな」
「おっ、こっちの水色のワンピース?」
「あぁ。何て言うか……そのまんまなんだけど、今のリーシアに似合っていると思うんだ。まだ完全に大人になった訳じゃ無いけど、そういう要素を持っている……だから、薄い水色のワンピースの方が良いかな。白のワンピースが似合っていないって訳じゃないけどな」
自分としてはそこそこ高得点を上げたい返答。
さて、リーシアの反応はどうなの? ティールはドキドキしながら反応を待つ。
「な、なるほどね。そ、そんな感じに言葉に表されるとちょっと恥ずかしいわね。ん~~~~……どっちもちょっと高いし、買うのはまた今度ね」
「そうか……まっ、それで良いんじゃないか?」
確かに値段は少々高い、しかしティールなリーシアに買ってあげても問題無い値段。
ただ……彼氏でもないのにそれはカッコつけ過ぎではと思い……その提案は頭から消した。
「ティールは何か買わないの?」
「……いや、俺は特に買うつもりは無いからな……まっ、気が向いたら何か買うか」
「少しぐらいは服に興味を持って良いと思うわよ」
「お、おう。まぁ……今は服より武器とかの方が興味あるけどな」
それは紛れもなくティールの本心だった。
いつも使っている長剣だけでなく、他の武器を見ていても心が躍る。
「ふふっ、そこら辺は子供らしいのね」
「子供って……確かにまだ子供だけどさ。大人でも、俺みたいな人は多いんじゃないか?」
ティールとしては大人になっても武器に興味を持っている自信がある。
(今錬金術でちょいちょい何か造ってるんだし……冒険者を引退したら、もしかしたら武器を自分で作ってるかもしれないな)
歳をとって武器作りに夢中になっている自分が容易に想像出来てしまった。
「かもしれないわね。それじゃ、そういう系の店に行く?」
「……そうだな」
素っ気ない態度で返してしまったが、心の中ではワクワクしまくっているティール。
しかし、そういった表情は表に出さない方が良いと思い、ポーカーフェイスを続ける
「リーシアは……長剣より、短剣を使った方が良いんじゃないか?」
武器屋への道中、ティールはリーシアと戦っていて率直に思った事を伝える。
リーシアの長剣の扱いが下手だったという訳では無いが、合っているとも思わなかった。
「後衛のリーシアが接近されるって事は、それだけ近くに接近されているって事だ。そういった間合いであれば、短剣……もしくは短剣の二刀流とかの方が良いと思う」
「短剣か、短剣の二刀流……ねぇ。それはやっぱり前衛としての意見?」
「前衛としてというか……相手との間合いを意識する者としての考えかな」
特に長剣に思い入れがあるなら話は変わるが、そうで無いのなら短剣に変えた方が良いというのが……ティールとしての考えだった。
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