運動後の食事

訓練を終えた二人は昼食を食べる為に店に移動した。


(二人でご飯を食べるのって……リーシア的に良いのか?)


リーシアはエリックに恋心を抱いている。

それは知っているので現状が良くないのではと思ってしまうティール。


ただ、そんな考えは一先ず置いておき、ガッツリと肉料理を頼む。


「やっぱり男の子よね」


「冒険者なんだからがっつり食べるのは当たり前だろ。体が資本なんだからしっかりと回復させないとな」


基本的にはあり得ないのだが、街中で他者に襲われる可能性がある。

今のところティールは誰かの恨みを買ってはいないので、その可能性は限りなくゼロに近い。


近いが……ティールの依頼達成内容や、成功率を知っている同じルーキーからは少々嫉妬の感情を抱かれている。


「リーシアだってそこそこ頼んだじゃないか」


「そりゃあれだけ動いたのだからね」


一回模擬戦を終えた後、お互いに意見を交わしながら動いていた。

なのである程度体力が消耗しており、二人共がっつりしたメニューを頼んだ。


「ティールぐらいならまだここら辺の店には来ないけど、やっぱり連日で働いているだけあって結構稼いでるのね」


「基本的にソロで動いて、討伐に費用も掛かっていない。用意する必要も無い……だから金が掛からない」


現在、特に装備を新調しようとも考えていない。

なのでティールの貯金は貯まる一方だ。


「羨ましいわね。私は魔導書か買いたいから頑張って貯金しても一瞬でお金が飛んじゃうのよね」


「あぁ~~、魔導書か……それは確かに金が飛ぶな」


魔法スキルを覚える要素を持つ者が読めば、必然と魔法スキルを習得出来る超便利マジックアイテム。

世に出ている大半の魔導書がスキルレベル一だが……それでも最低金貨数枚の値段がする。


冒険者になりたてのルーキーには日々の生活を考えると中々手が出せない。


(俺は他人が育てたスキルを奪えばそこら辺は問題無しだからなぁ……うん、少々罪悪感は感じるが、それが俺が神から授かったギフトだからな)


メイジ系のモンスターは一般的に多く無いが、街の外に出て森の中で延々と戦っている日は多くのモンスターと遭遇する。

なので魔法スキルを覚えているモンスターと遭遇する機会も多々存在し、その辺りもティールの手札は充実している。


「……リーシアはスキル書を買おうとか思ってるのか?」


「ん~~~、今のところはあんまり考えてなさそうだけど、将来の事を考えると色々と欲しいスキルはあるよなぁ~~って言ってたから、いつかは買うかのかもしれない」


「なるほど、ダンジョン探索の事とか考えると欲しいスキルはあるだろうな」


現在パーティーメンバーはエリックとリーシアのみ。

二人は最終的にもう二人ほど欲しいと思っているが、ダンジョン探索をしようという機会に遭遇した時に丁度四人になっているかは分からない。


攻撃系のスキルはそこまで欲していないエリックだが、ダンジョン探索に役立つスキルは欲しいと考えている。


「あと、咆哮とかあれば戦いを有利に進められるだろうな」


「一瞬相手の動きを止める効果があるのよね……でも、咆哮は頑張れば習得出来るスキルじゃ無いの?」


「……その可能性はあるだろうな。でも、必要な時にそのスキルを習得しているかどうかで、戦況は変わってくるだろ」


既にティールは咆哮のスキルを習得していた。

瞬間的に自身の身体能力を高めたり、相手をビビらせる効果を持つ。


自身の殺気などと組み合わせれば、自分より弱い大勢のモンスターの動きを一時的の止めることが出来る。


「そうね。雑魚でも囲まれると厄介なのよね」


「スキル書や魔導書を集めるってなると……金は掛かるだろうな。というか、読み終わったスキル書や魔導書は捨てるなよ」


「勿論よ! 使用済みのスキル書や魔導書でもコレクターからすれば価値のあるもの。間違っても捨てたりしなわよ」


二つの書はスキルレベルの違いによっても表紙は中身の文字が変わるので、それらを集めようとするコレクターは非常に多い。

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