不用意に入ってはならない

「相変わらず投擲ばっかりやって、随分と暇なんだな。まっ、ギフトを持ってないお前じゃ仕方ないか!!!」


「……なぁ、俺の質問を聞いてたか? 俺は何の用だって言ったんだよ」


ティールを腰巾着達と一緒に囲もうとするマックス。

それに対してティールは徐々に下がる。


「けどよぉ……そんなお前がなんでリースさんに指導を受けてんだよ……なぁ!?」


「知るか、勝手に自分で想像してろ。というか、俺に絡むな。お前の方こそ暇なのかよ」


何故自分がリースから指導を受けているのか。しかもマンツーマンで。

その理由を話す訳が無く、勿論秘匿。寧ろ煽り返す。


「はっ!!! なんのギフトを持ってない奴が随分と偉そうじゃねぇーか。この斧術を持つ俺に対してよぉ」


「そうかそうか。それは凄いな。でも、そっちの二人はなんもギフトを貰って無いんだろ? なのになんで

マックスと同じように偉そうな面してるんだよ」


ギフトを得た子供の情報はある程度頭の中に入ってる。

そこまで大きくない村なので村の中を歩いてればある程度の情報は集まってしまう。


そしてティールが覚えている限り、マックスの腰巾着二人がギフトを持っているという情報は無い。


「あっ、もしかしてあれか? ギフトは貰ったけど、戦闘系のスキルじゃ無かったからそいつみたいに自慢してないのか? そりゃしょうがないな」


ティールとしては淡々と答え合わせをしただけ。

しかし戦闘系のギフトを得られなかった二人としてはそれが弱点だったようで、僅かだが表情が悔しそうに歪む。


「おい……なんも持ってねぇお前がなに俺の友達を馬鹿にしてんだよ」


「いいや、別に馬鹿にしたつもりは無いんだけど。ただ答え合わせをしただけだ。何をそんなに怒ってるんだよ」


「うっせーーッ!!! 俺の友達を馬鹿にしたんだ、覚悟は出来てるんだろうな」


「そんなセリフどこで覚えたんだよ。全然似合って無いからな」


腰巾着達の事実を答え合わせした時とは違い、明確に馬鹿にした。

というか、友達が馬鹿にされたから怒るというのは解らなくも無いが、三対一でイジメようとするのは良いのだろうかと疑問に思ったティール。


しかし物事を深く考えられない子供は気分に寄っており、ティールをボコボコにする事しか頭に残っていない。


「というか、斧を持ってないくせになんでそんな調子乗ってるんだよ。今のお前達は大して変わらないんだよ」


「おいおい、攻撃系のギフトを持った人の特徴も知らないとか、お前勉強しなさすぎだろ」


「お前みたいな馬鹿面に言われたくないんだよ」


ティールはリースから戦闘技術の指導だけでは無く、文字や計算などの授業も受けているのでマックスから勉強しなさすぎだろと言われ、少しカチンと来た。


(バーーーカ、そんな事ぐらい知ってるに決まってるだろ。攻撃系のスキルを……もっと詳しく言えば武器を扱うスキルを授かった人は他の者より身体能力で若干優れた状態になる)


それぐらいの常識は既にリースから教わってるティール。

この場で三人が襲い掛かって来たとしても直ぐにボコボコに出来るが、それをあえて選ばなかった。


「……本気でボコボコにしてやるよ。いくぞお前ら!!!」


「「おうっ!!!」」


ティールをボコボコにしようと殴り掛かるマックスと腰巾着二人。


「バーーーカ、お前らの相手なんてしてられるかっての」


身体強化のスキルを使用してティールを三人を飛び越える。

そして後ろを振り返り、舌を出して挑発した。


「お前らみたいな怠け者に俺が捕まる訳無いだろ。じゃあな」


「ま、待ちやがれ!!!」


こうしてティール対マックス達の鬼ごっこが始ま……りはしなかった。


何故なら身体強化に加えて脚力強化まで使用したティールを三人が捕まえられる訳が無い。

そしてティールは森の中へと逃げ込み、今日の予定には無かったが夕方までモンスターを狩ることに決めた。


こうして多少面倒なイベントと遭遇したティールだが、自分よりも圧倒的に強いモンスターと遭遇することは無く、無事に一日を過ごした。


だが……マックス達はそうもいかず、もしかしたらティールが村を出て森の中へと予想する。

それは確かに正しかった。正しかったのだが……三人はいつもティールが森へ向かう抜け穴とは違う場所から森へと入ってしまう。


こうして三人は森の中でティール探すのだが、違う場所から出たので遭遇する訳が無く徐々に日が沈み始める。

しかしここで一つ問題が発生する。


三人は運良くモンスターには遭遇していない。

だが、村への帰り道が全く分からなくなってしまった。


こうして三人が夕食時になっても帰ってこない事を心配に思ったマックス達の両親が村の中を必死で探すが見つからない。

そして必死な表情で自警団者達に自分達の息子がいない事を伝え、大人たちはもしかしたら村の外に出たのではという考えに至った。


過去にそういった件は起きており、親は子供に何度も注意するのだが、子供の好奇心はそう簡単に襲得られない。

この捜索にはリースも参加し、村には最低限の人数を残して自警団の者達が松明を明かり代わりにして必死で三人を探す。


その努力もあり、三人は無事見つかった。

こうしてマックスと腰巾着二人はモンスターに襲われることも無く村に戻れたのだが、両親や自警団の人達から大きなカミナリを落とされたのは言うまでもない。


それを後日耳に入れたティールはざまぁみろと心の底から思った。

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