あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う
Gai
初恋敗れる
今、ここで一人の少年の初恋が敗れた。
「ミレット……」
今年で四歳になる少年、ティール。
特に何か特徴が無い平凡オブ平凡な少年。
そんな少年は同年代で幼馴染にあたる女の子、ミレットに恋をしていた。
本人にその自覚はあまり無かったが、それでも他の子と比べて好きという感情が少し違う。
その程度の考えがあった。
だが、そんな考えを持っていても無意味だと今悟ってしまった。
ティールが恋心を抱いていた相手、ミレットはティールでは無い男の子と楽しそうに、ティールといる時よりも楽しそうに、幸せそうに笑っている。
その相手は村の長である村長の三男、レント。
将来はかなりの男前になるだろうと、子を持つ母親たちから言われている。
そしてティールも自分よりレントの方がカッコいい。
それは何となく理解している。
自分より人が集まって、人を引っ張る力がある。
しかしそこまで考えられないティールはミレットが単にレントの顔がイケメンだから好きなんだと思ってしまった。
だが……それは残念ながら八割方合っており、ティールの考えは間違っていなかった。
ミレットに声を掛けようと思っていたティールはその場から離れ、狩人の父から教えて貰った投擲の練習を始めた。
そして夕食の時間になり、一緒に夕食を食べている父親のルート、母親のリア、兄のセントが心配そうな表情で何があったのかを尋ねた。
ティールは今日何があったのかはありのまま話した。
するとルートとリアは同じ言葉を口にした。
まだティールには先があるから心配する必要は無い。
セントもなんとかティールを励まそうと頑張った。
その結果その場ではティールの気分は晴れ、いつも通りの優しい表情に戻った。
だが、ティールの傷は完全には癒えておらず、その日の夜は涙を流しながら寝た。
その日からティールはミレット距離を置くようになり、もともと友達と呼べる者があまりいなかったティールはボッチのとして過ごす日が多くなる。
そんなティールを心配する両親と兄だが、特に問題無いよとティールは笑って返す。
元々誰かと一緒に遊ぶことが多く無かったティールは失恋の傷こそ一年ほど経ってもまだ完全には癒えていないが、それでも人を襲うモンスターや盗賊の討伐に薬草の採集や鉱石の採掘に貴族や商人の護衛を仕事とする冒険者になるという目標が出来ていた。
とはいえ、まだ体が出来上がっていないティールに出来ることはそう多くない。
だが、スタミナを付けるためのランニングと父親から教えて貰った投擲は雨の日以外は欠かさず行っている。
冒険者になれば、多くの物が手に入る。
村に立ち寄った冒険者から色々と教えて貰ったティール。
子供のティールにはまだ理解出来ない内容もあったが、それでも冒険の中に楽しみがあるという事は理解出来た。
そして殆ど失恋の傷が癒えた頃、ティールは五歳の誕生日を迎えた。
人は五歳になった時、何かしらのギフトを神から授かる事がある。
誕生日を迎えた翌日、ティールは珍しい事に二つのギフトを授かった。
ギフトを授かること自体は五人に一人とそこまで珍しく無いのだが、二つのギフトを授かる物は本当に稀である。
ティールが得た二つのギフトは知性と奪取≪スナッチ≫。
この二つを手に入れた事でティールの思考は一気に別人の様に変わる。
(これは・・・・・・凄いスキル。いや、ギフトだ)
知性のギフトを得たお陰でティールは奪取≪スナッチ≫というギフトがどういった物か直ぐに理解出来た。
この世界にはスキルという、その者が使える技術を示す言葉がある。
そして自身がどのようなスキルを使用出来るのか確認できるのがステータスだ。
(投擲のスキルと身体強化のスキルも得ている。身体強化はまだまだレベル一と低いが、投擲に関しては既にレベル三・・・・・・雨の日以外は毎日練習している努力の結果だな)
投擲のスキルレベルが三にもなれば、投げる際に腕力が強化されて投擲物をコントロールする事も可能になる。
冒険者になるという目標があるティールにとって、既に武器が存在する状態は有難い。
そして今回手に入れたギフトのうち、奪取≪スナッチ≫は家族も含めて他の人には話さないでおこうと決める。
(このスキルは面倒ごとに発展しそうなスキルだし……今後誰にも話さない様にしよう、基本的にはだけど)
自分が得たギフトを家族に話すと、将来は学者になるかもしれないと少し騒いでいた。
だがティールとしてはそんな頭を使う職業に就くつもりは一切無い。
因みにティールが片思いしていたミレットは火魔法のギフトを授かり、ミレットが好意を抱いているレントは剣技のギフトを得た。
火魔法も剣技もスキルに同じ名前の物が存在するが、ギフトであるかそうで無いかで成長するにつれて差が現れる。
(奪取≪スナッチ≫の成功条件は対象を殺す事……モンスター相手なら大丈夫か)
既に村からこっそりと外に出るルートは知っているので、モンスターと遭遇する事はそこまで難しくは無い。
しかし、ティールは自分の唯一の武器である投擲が通用するのかが一番の心配だった。
それでも奪取≪スナッチ≫を有効活用するにはモンスターを倒すのが一番の近道なので、後日ティールは親に嘘をついてこっそりと村の外へと向かった。
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