TS娘が一番むかつく奴に復讐する話
安太レス
第1話
勉強机の脇に置いていたスマホからメッセージ着信の電子音が鳴った。
「なんだ?」
俺が目をやると画面にはやはり着信の通知が表示されている。
ちょうど学校から出された数学の宿題……ではなくパソコンのゲームに勤しんでいた俺は一端プレイを止めて、スマホを手に持った。
「嘘だろ……」
その一通のメッセージに俺は驚きで椅子からひっくり返りそうになった。
この三年間、もうずっと連絡の途絶えていた相手からだったからだ。
ーやあ、雄高。元気にしてた?ー
何度もそのメッセージを確かめた。
何より驚いたのはずっと俺がこの送り主のことで悶々としていたのをよそに、拍子抜けするほどに元気な様子だったからだ。
ー今、実家に帰ってきてるんだ。今度の日曜日せっかくだからうちに遊びにこないかい?ー
「なんで急に今……」
俺は疑問に思った。
だが何年かぶりに悠里(あいつ)が俺に会いたがっているのだ。
断るのは許されない。
覚悟を決めた。
ーわかった。行くよー
手短に返事をした。
逃げるようなことはしたくなかった。
約束した日曜日の午後。
俺は悠里の家に歩いて一人で向かった。
場所は町外れにある。
「相変わらずでかいな……」
ようやくその家の近くまで来て、改めて驚かされた。
昔一度訪れた時も、その立派さに驚愕したものだが、悠里の家はちょっとした洋館で、普通の家よりも何倍も大きい。
庭も広々していて、池やプール、テニスコートがあり入り口も立派な門構えだった。
その門の前に近づくとがやがやしている声が聞こえてきた。
同じ中学の同級生連中が何人も既にたむろっていた。
どうやら呼ばれたのは俺だけではなかったようだ。
「お、雄高も呼ばれたのか」
学生服姿の一人が俺に気づいた。部活の帰りだという。
まだジャージ姿の野球部の連中もいる。
「おう。お前らも……呼ばれたのか、山田」
どうやら呼ばれたのは俺だけではなかったようだ。
いずれも、かつての小学校時代のクラスメイトたちだ。
「そのようだな」
その顔ぶれをみて、俺は気づいた。
呼ばれた面々には、全員に共通点があった。
悠里とかつて同じクラスだった。
意図的なものを感じて、少し不穏なものを感じがした。
俺たちにはもう一つ共通点がある。
(一体何故……)
ちょうど俺が到着し全員が集合したころになると、門が開き、中へ案内された。
昔の記憶と変わらず、悠里の家は広かった。
テニスコートもプールも庭木もよく手入れされている。
「みんなよく来てくれたわね」
悠里のお母さんは穏やかで清楚な女性だ。
俺の母ちゃんと同い年ぐらいのはずなのに、記憶とほとんど変わらず、十歳ぐらいも若く見える。
そして、元々招かれたとはいえ、興味本位丸出しの俺たち一行を普通に歓迎してくれた。
お母さんの様子からは、今回の集められた真意はまだわからなかった。
「そこで待っててくれるかしら? 今悠里が来るから」
応接間のソファに並んで座った。
そして、今呼んでくるから待っててと告げた後に部屋を出て行った。
待っている間、他の奴らは軽口を叩いていた。
「案外あんまり変わってないかもな」
「いや、結構いけるかもしれないぜ」
もちろん家族に聞こえないヒソヒソ声で。
変わってないな、こいつらも。
昔と違うのは、女子への興味が昔以上にあふれていることだ。
ゲームや漫画、それからサッカー、野球で十分だった以前と違っているのだ。
だから、山田も含めてこいつら、いけしゃあしゃあとやってきたのだ。
悠里は、今一体どうなっているのか。一目みたい気持ちが皆にあった。俺も同じだ。
待っている途中、悠里のお母さんから伝えられた。
「まだおめかしの時間がかかってるから、もう少し待ってくれるかしら。悪いわね、待たせて」
その間、紅茶とケーキをご馳走になった。
俺たち一同、おいおい、本格的だなとややあきれ気味になる。
もったいぶりやがって、と少しじれったそうにする奴もいた。
どうせ、大したことないだろうとたかをくくっている者もいる。
こんなに待たせた以上、ハードルはあがってしまうが、大丈夫か? と俺すらも心配した。
しらけた空気にならなければいいと思ったがーー。
俺も手持ちぶさたなので、室内を眺めた。
「うん? あれは……」
クローバーを育てている鉢があった。一個やニ個ではない。床の上、棚の上。いくつも飾られている。
ぼんやり立ち上がって眺めていた。
そういえば、4つ葉のクローバーなんて、くだらないけどな。幸せになれるなんて逸話なんて信じてない。
いくつかの鉢には、白い花が咲いている。クローバーの花ってこういうふうなんだ。
それから少し後、ドアががちゃりと空いた。
「やあ。みんな! 良く来てくれたね」
男の声とは違う、悠里の母親とも違う、年頃の女の子の高い声がした。
「おおーー」
皆声を上げた。
ドアの前には、ドレスのような白いワンピースを着ている少女が立っていた。
フリルがふんだんにあしらわれてスカートの部分がふわっと広がる。
綺麗な刺繍も施されていた。
「可愛い……」
ケーキをむしゃむしゃ食っていた佐藤などはフォークをがしゃん、と落とした。
口にクリームをつけたまま、ぽかんと口をあけていた。
皆息を飲んだ。
部屋に現れたのは、未だかつてないほどの美少女だった。
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