第2話
エトライナーは魔力の強い子供を生み出す為に近親婚を繰り返した。
その結果、時折ではあるが魔力のない子供が生まれるようになってしまった。
遺伝子異常によるもので、命に別状はないけど治療法はない。
魔力のない子供は死ぬまで一生、魔力のないままなのだ。
その子供は陰で『欠陥品』と呼ばれている。そして私に魔力はない。
生まれて直ぐ、様々な医者が呼ばれたそうだ。でもどんなに頑張っても私は魔力を持てなくなった。
おまけに母は私を生んだ後、病気になった。病気は治ったけど子供が生めない体になってしまった。
私のせいじゃないか。魔力のない子供は禍を呼ぶ。そんな迷信がある。母はそれを信じた。
普通の精神状態なら信じなかったかもしれない。
でも私が生まれたことで社交界でいろいろ言われて、ヒステリックになって父に当たるようになった。
父はそんな母に愛想をつかして家に帰って来なくなった。
追い詰められた母は私に当たるようになった。
母は父のことを愛していた。政略結婚だったらしけど、心から愛していたようで母は父に似た私の髪をある日、ハサミで切った。
私に男の恰好をさせて愛を囁くこともあった。
だけど時折、正気に戻って母は私に憎悪の眼差しを向ける。ずっとその繰り返しだった。
私は今、十六歳になった。
男の恰好をしても男にはなれない。どうしたって女らしさを消すことができなくなってしまった。
だから私はもう男の恰好をすることはない。
母は私が男の恰好をできなくなってからずっと部屋に籠っている。時折、母の部屋からは狂気の悲鳴が聞こえる。
それは昼夜問わず。
私は耳を塞ぎ、心を閉じて悲鳴が止むのを待つ。
父とはもう何年も会っていない。
勉強は父が知らない間に雇ってくれている家庭教師がいるので問題ない。
欠陥品だけど、アドラー家の恥にはなるなということだろう。
「婚約破棄、相手に非があったとはいえ欠陥品を貰いたがる家に碌な家はないわよね」
女好きの年を取った男の元に嫁ぐか、修道院に入れられるか。
邸から出たことがない世間知らずの私が邸を飛び出したところで生きていけるわけがない。
このまま流されて生きるのは楽だろう。でも、その先に幸せはない。ただ心を殺して生きる。
考えよう。
一人でも生きていけるように。
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