第45話

 ありったけの力を込めて剣を振り、防具の上から強引に叩きつける。赤い剣の刃を返し、手首を狙って切り上げた。

 赤い光が三日月状の軌跡を残す。怯み後ずさるゴブリンに、立て直す余裕さえ与えることなく、剣を胸元へ突き立てる。

 絶命したゴブリンにブーツを当てて、剣を抜く。背後から迫るゴブリンに目を向けると、剣を抜く動作そのままに、柄頭で殴り、首を切り落とす。

 メイスのミツキはすぐ近くで、力任せに殴り飛ばしている。彼女はゴブリンの持つ剣を弾き折ると、殴り気絶させ、飛来する矢の盾にした。

 剣のミツキは短剣を抜き、クロスボウ持ちに投げつける。

 刃は欠けて、なまくらだが、武器を弾き落とすには充分だった。

 立ちはだかるゴブリン共を切り抜いて、赤い剣をクロスボウ持ちに突き立てる。引き抜くと同時に短剣を回収し、二刀持ちに切り替えた。

 次から次へと迫るゴブリンを、片っ端からなぎ倒す。片手剣を防具の上から叩きつけ、短剣を首筋に突き立て引き抜く。立ったまま命を落としたゴブリンを蹴り飛ばし、迫る別ゴブリンへとぶつけ下敷きにする。片手剣を逆手に持つと、死体の上から刺し貫いた。

 奴はどこかで見ているのだろうか。

 老婆の姿は見当たらない。目元に垂れた血を拭う。気づかぬうちに忍び寄っていたゴブリンが、投擲されたメイスによって地に伏せた。

「よそ見しないで」

 ゴブリンのメイスを片手で掴み、ひじ打ちを決めて奪い取る。顔面パンチを叩きこんだ後、メイスのミツキは剣のミツキの横に並んだ。

「むかつくんだけど」

 ゴブリンの剣を一度受け止め蹴り飛ばす。空いた間合いを素早く詰めると、赤い剣で叩き切った。

 二人を目がけて炎の弾が迫り来る。

 共に余裕を持って回避する。ミツキは欠けた短剣を、魔法の操り手に投げつけた。

 剣はまっすぐ飛翔し、防具の隙間に突き刺さる。ゴブリンは歯を食いしばり、二人のミツキを睨みつけると、そのまま砂地に倒れた。

 ゴブリン達の死体の山を乗り越えて、短剣を回収する。沈みかけた陽の光もさることながら、辺りはまさしく文字通り深紅に染まっていた。

 砂を含んだ風が嫌な臭いを包み込み、砂丘の頂上で渦を巻く。夕陽の光を受けて立つ、杖を持った人影が二人のミツキを見下ろしている。黒い蛇の入れ墨が入った、エルフの老婆は憎たらし気に眉をひそめた。

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