第四.五章 第四話 運命の日 その2
実家に帰ってきたその夜はご馳走だった。およそ三年ぶりに、それも実力をつけて戻ってきた宗次郎と父と母は喜んでいた。
もちろん、妹の舞友も。
「兄さん、引地さんの修行では何をしたんですか?」
キラキラした瞳で質問してくる舞友に、宗次郎は好物のそばを啜りながら答えた。
久しぶりの家族との団欒を楽しんだ宗次郎は、旅の疲れもあってそのまま寝た。
次の日。宗次郎は朝早く起きて父と共に首都へと向かった。
先日父が言っていた、宗次郎の波動を調べるたいという研究者に会いに行くのだ。
時間と空間。基本五大属性と呼ばれる火、水、土、雷、風のどれにも該当しない、特殊な属性。完全に操ることができればまさに神にもなりうる波動を持つ宗次郎。その波動を応用すれば可能性は無限大に広がる。
波動の解明は穂積家の反映につながるといつもの決まり文句を宣う父を尻目に、宗次郎は窓の外に流れていく景色をぼんやり眺めていた。
━━━つまるところ実験台じゃねえか。
内心ため息をつきつつも、宗次郎はいやと頭を振る。
━━━もしかしたら少しは波動が扱いやすくなるんだろうか。
時間と空間を操る波動は強力だが、無敵なわけではない。弱点はある。
まず燃費は圧倒的に悪く、波動の総量が多い宗次郎出会ってもすぐに疲弊してしまうほど。しかも失われる波動の量に対して効果も微妙なのだ。時間を一秒止めるために使用される波動量は、属性が炎なら三時間は火を吐き続けられる。
さらに扱いが非常に難しい。時間も空間も干渉するにはその概念が大きすぎるのだ。燃費が悪いので細かく使おうにも、細かくに使おうとするとかなりの集中力が必要になる。
師匠との訓練で最低限技として使えるようになったが、何度心が折れかけたことか。普通の属性の方が良かったんじゃないかと何度も思った。
なんて思っていると車は首都に到着した。
「おお」
師匠と一緒に修行をしている間各地を回ったが、首都の大京へ来たことはなかった。ガラスの向こうにある大都市の様子に宗次郎はつい目を引かれる。
━━━そういや原減ったな……。
目の前を横切った料理屋の看板に宗次郎は空腹感を自覚した。
朝から車に揺られて数時間、何も食べていない。
「実験がひと段落したら、何か食べるとしよう」
前に座っていた父はあきれるようにそう言った。
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