第四部 第四十三話 二人きりで

 トレーに乗った皿うどんを抱えたシオンがこちらに気づいた。


「シオン、生徒会と知り合いなん?」


「まーねぇ」


 友達だろうか。シオンの取り巻きが意外そうにシオンを見比べている。


「ごめん、ちょっと話がしたいから、また今度でいい?」


「いいよー」


「じゃね!!」


 取り巻きと別れてシオンがこちらにやってくる。


「舞友っち、隣……あ、どうも」


 シオンが舞友の前に座っている里奈と朱里に気づいて軽く頭を下げる。


「あたし、藤宮シオン。あなたは?」


「生徒会副会長の数納里奈よ」


「生徒会会計の門之園朱里です」


「あそ、よろしく〜」


 生徒会、それも副会長にもタメ口を続ける麻友に里奈がわずかに眉を顰める。


 里奈はこの手のチャラチャラした人間が苦手だ。主にあの男(会長)に振り回されているせいで。


「生徒会に何か用かしら?」


「いや、生徒会じゃなくて、舞友っちにちょっと」


「私?」


 隣に座ったシオンはコクコク頷いている。


「意外ね。舞友にこんな知り合いがいるなんて」


「舞友っちってか、宗次郎の知り合いなんだけどね、元は」


「へぇ」


 もしかして喧嘩の原因はこの娘なんじゃないかと里奈の視線が訴えてきたので、小

さく首を振る。


「そ。私たちはお邪魔みたいだからこれで失礼するわ。行きましょ、朱里」


「は、はい」


「また生徒会室で」


 食事を終えた里奈と朱里はそそくさと席を立ってトレーを戻しに行った。


「副会長、空気が読める人で助かったわ」


「それで、私にどんな用事があるの」


 里奈ほどではないが、舞友もシオンのようにチャラチャラした人間は苦手だ。あまり近づきたくない。


「そりゃもちろん宗次郎についてよ。どうせ仲直りできてないんでしょ?」


「……」


「やっぱり」


 露骨に顔を歪ませる舞友にシオンがくすりと笑って、それから、


「ごめんね」 


 と謝った。


 ちゃんとこちらの目を見て行われた真摯な謝罪に面食らってしまう舞友。


 人は見かけによらない。そんな当たり前の事実を再認識させられた。


「ほら、あたしも煽ったりしたしさ。謝んないとなーって思ってたのよ」


「……そう」


「だから、私と宗次郎との関係についても話してあげる。知りたがってたでしょ」


 真剣な表情に気圧されるように、舞友は頷いた。



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