第8話 実技試験

 7話 実技試験


 俺はソニックブーストを解除すると迎撃態勢に入る。


「俺にやられる覚悟はできたのか?」

「こっちのセリフだ」


 こちらに向けて走ってくるガンツに対し、俺もまた向かっていく。


「くらえ!『豪拳』」

「はッ!そこだ!」


 豪拳を使っているガンツに対し俺はガードからのカウンターで少しずつダメージを与えていく。


 俺が全力を発揮すれば一撃で倒せるだろう。

 しかし、それでは面白くない。

 回避能力、防御力、攻撃力の全てでガンツを圧倒して終える。


 それからしばらくガードからのカウンターを繰り返した。

 最初は少しミスもあったが、次第に慣れてきたからか完璧に抑えられるようになってきた。


 後から思えば、俺は油断していたんだろう。対人戦の経験もないし、総ステータスでは勝っているものの、パワーは劣り、スピードは僅かに勝る程度、魔法を使わないならばむしろ不利なくらいだった。

 にも関わらず、余裕だと思っていた。


「ここからはフルパワーでいかせてもらうぞ!

『猛る炎よ、我が拳に纏え!』《豪炎拳》」

「ッ!『クイックシールド』」


 10回程ガードを繰り返した時だった。

 攻撃の直前に拳に炎を纏わせるスキルを使ってきた。

 咄嗟に結界魔法『クイックシールド』を発動したが、右腕を少し火傷してしまった。


「チッ!まさか防がれるとは思わなかったぜ」

「俺の方こそ、お前に怪我を負わされるとは思いもしなかったな」


 ここで痛い目を見たのは俺にとってよかったのだろう。

 今は多少の火傷で助かったが、もし、相手がもっと強かったら大怪我では済まなかったかもしれない。


「どうやら俺は慢心していたみたいだ。それを分からせてくれたことのお礼に俺も本気を出そう」


 後ろに跳んで距離を取ると無詠唱の聖魔法で火傷を回復させる。


「耐え切ってみせろ!魔法乱打!」


 なんの技術もない、ただひたすらに魔法を連打し続ける。

 相手が魔導師なら、結界や魔法相殺などで対応されるため有効打にはならないが、純粋な戦士であるガンツにはかなり有効となる。


 そして、当然それだけではない。

 乱打した魔法に紛れて魔法陣を付与した魔力の塊も放っている。

 それらを空間魔法によって固定する。


「うおおおおぉぉ!はッッッ!」


 ガンツの放つ威圧で俺の魔法が霧散する。

 さすがにBランク並みの実力ってのは伊達じゃないようだ。戦士でありながら100近い数の魔法を簡単に打ち消すとは。

 しかし—


「もう遅い!立体魔法陣『|闇の侵食」


 闇属性の大魔法『|闇の侵食』

 指定空間内の全生命の力と魔力を消滅させる魔法だ。


 ここだけ聞くと便利に思えるが、実際はあまり使われることはない。

 なぜなら、魔力の消費量が半端なく大きいからだ。

 具体的には相手の力と魔力1に対して魔力を10使うくらい。

 俺の全魔力の7割を使ってやっと、まともな効果を発揮できた。


「くッ‥‥力が‥はいらねぇ‥‥」

「これで終わりだ」


 俺はガンツの顔の前に拳を突き付けて審判の方をうかがう。


「そ、そこまでッ!ガンツさんお疲れ様でした。フリージアさんは後ほど、結果をお伝えしますのでしばらく待っていてください」


 こうして俺の実技試験は終わったのだった。

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