第一章『猫と鼠と協力関係』その7
そして迎えた翌日。僕は朝一番に登校していた。
作戦決行の予定時間は放課後なんだけど、何故か
あっ、ところで昨日練った作戦の内容はこんな感じ。
下校途中、僕と
何故マシュマロなのかというと、それにはちゃんと理由がある。
昨日
木から落ちてしまった
だけど、木から下りる時に枝が折れて、着地した時に足を捻っちゃったんだ。
そんな
……でも、全然上手くはいかなかった。
それでも不器用なりに一生懸命治療しようとしてくれた
なんでこんなことを知っているかというと、僕もその場にいたから。
まだ一切話したことなかった
でも驚いたなぁ。マシュマロがあの時の白猫だったなんて。
当時よりだいぶぽっちゃりになっていて、全く気付かなかったよ。
「……で、どうして
もしや告白! ……なわけないよね。
それ以前に僕みたいなやつが誰かに告白されるなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないよ。
「っ!」
教室に入ると、
すやすやと寝息を立てて。
「……か、可愛い」
昨日みたいに思わず呟いてしまった。
ね、寝ているから聞かれてないよね! セーフだよね!
なんて安心している次の瞬間、
「
寝ているはずの
起きちゃったのかと思って慌てて見ると、彼女はまだ気持ちよさそうに眠っている。
……じゃあ、いまのは寝言?
寝言で僕の名前を言っちゃったのかな。
そう考えると、急に鼓動が速くなってきた。
た、たぶん偶然だろうけど……でも、もし
ひょ、ひょっとしたら彼女は僕のことが好きなんじゃ……。
「おはようございます、
「うわぁぁぁぁ!」
全力で叫んだ。
「
「……ご、ごめんなさい」
とりあえず謝ったけど、未だに状況が把握できていない。
「ドキドキしましたか?」
「え、な、なんのこと?」
本当に何を言っているのかわからなくて、僕は問い返す。
「私が寝言であなたの名前を呟いたでしょう。それにドキドキしましたか?」
「え、えっと……」
「ドキドキしましたか? ドキドキしてませんか?」
「は、はいぃぃ! ド、ドキドキしましたぁぁぁぁ!」
グイグイと迫られて、僕はビビりまくりながら正直に答えてしまった。
こ、これって何? こ、恐いよぉ……。
「では、作戦はこれにしましょう」
困惑していると、続けざまに
「……作戦って、どういうこと?」
「本日に実行する作戦のことです。ただいま『眠っている
「えぇ!? だ、ダメだよぉ!?」
「何故ですか? あなたはドキドキしたと言ったでしょう」
「うぅ、そ、それはそうだけど……でも昨日、ちゃんと一緒に決めたんだし……」
「昨晩考え直した結果、やはり少女漫画を参考にした作戦が一番良いと判断したのです」
「えっ、いまのやつって少女漫画に出てくるの!?」
「と、とにかく、その……ダメだよぉ」
「そうですか……。では、最終手段を使うしかありませんね」
急に
また何かされちゃうんだ、と思った僕は恐くて、自然と後ろに下がってしまう。
けれど、
「あっ」
背中が壁に当たって、逃げ場がなくなっちゃった。
すると、
ひいぃぃぃぃっ!? な、殴られるぅぅぅぅ!?
そう思って、僕は反射的に目を瞑った。
ドンッ!
大きな音が響く。……でも、痛みはなかった。
恐る恐る目を開くと、
要するに、少女漫画で定番の『壁ドン』をされていたんだ。
彼女の方が背が高いため、見下ろされる形になる。
「どうですか? ドキドキしていますか?」
「あっ、え、うぅ……」
彼女が言った通り、ドキドキしている……けどそれを認めちゃったら、今日の作戦を変えられちゃう。こ、ここは我慢だ……。
「これでもまだダメですか」
今度は『顎クイ』をされちゃった……。
そのせいで、彼女と超至近距離で目が合う。
ち、近すぎるぅ……!!
「これならドキドキしているでしょう?」
「う、うぅ……」
「私の作戦を実行しないなら、クラスメイトが来るまでずっとこのままですよ」
「そ、そんなぁ……やめてよぉ……」
「いいえ、やめません」
そんなことされたら、他の生徒たちに誤解されちゃう……。
「わ、わかったよぉ、
「言いましたね? 男に二言はありませんね?」
こくこくと頷く。
それでようやく
……恐すぎて恥ずかしすぎて、死ぬかと思ったぁ。
猫に食べられそうになる、鼠の気持ちがすごくわかった気がしたよ……。
「では、今日の作戦は『眠っている
「な、なんか増えてない……?」
「……気のせいですよ?」
絶対に気のせいじゃない。
でも、これ以上彼女に何か言えるような気力がもう僕にはなかった。
うぅ、僕って情けないなぁ……。
結局、今日は僕が考えた作戦じゃなくて、
……でもいまの
同日の放課後、
結果、作戦は大失敗に終わった。
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