オレとキミで世界を壊したい。

津味

プロローグ

一九九九年十二月一日。


世間は来る二〇〇〇年に浮かれている最中。北陸地方、新潟と富山にまたがる標高二四一八mの雪を被った朝日岳の中腹に、■■が衝突した。形にして一辺が十五mの立方体は、後に畏敬と畏怖を込め『パンドラの箱』と呼ばれる。


以下、政府が派遣した調査隊のレポート。


一九九九年十二月十日



はじめに


山荘の管理人の通報より十日が経った。現地入りしたのが五日だったが、天候の悪化や放射線による健康被害を避けるなどの理由により、昨日まで入山できなかったが、今日その目処が立った。これから山を完全封鎖し、入山する予定だ。今一度、本作戦の優先事項を確認したい。


まず護衛を含む我々、調査隊の第一目標は「遊星からの贈り物を回収し保全する」事である。■■がある遊星から飛び立って、地球に到着するのは、我々を含め支配者層の人間には、周知の事実である。ただ、到着までに最低でも後二百年は要するとの事だったので、混乱が生じている。それに伴い「今開ける派」と「二百年まで待つ派」の対立により世界が二極化してゆくのは間違いない。幸いにも中立派の日本に贈り物が届いたのは、まさに不幸中の幸いであろう。


また、第一目標が達成できない場合において、第二目標に移行。「回収が不可能な場合、可能な限りサンプルを回収、周辺地域を調査し、速やかな撤収」との事。衛星写真によれば一辺が十五mもある立方体であるとの情報により、概ね第二目標に移行せざる得ないであろう。今の我々の技術では、山に突き刺さった贈り物を回収する事は困難だ。


以上が本作戦の概要である。作戦が無事成功し、発見や驚きがあれば、また筆を取る。



三時間後、調査隊から「立方体が展開した」との報告から連絡が途絶える。政府は安否確認のため、武装した自衛隊による大規模な捜索活動が行われた。


六時間後、件の立方体より三キロ先で、まるで人間が脱皮でもしたかのような、生々しい人型の皮膚を発見。同刻、複数で行動する謎の生命体が朝日岳の麓で自衛隊と遭遇。曰く、人語を話すとか。あまりの怪生さに甲自衛官が突発的に発砲。しかし、乙生命体に損害なし。激昂した乙生命体は三分と経過せずこれを鏖殺。その後、謎の生命体は行方不明。


十八時間後、計十四名もの自衛官が朝日岳より生還。三十八度五分以上の発熱を確認し救急搬送。


二十時間後、某医療機関にて療養中の十一名に「能力の開花」を確認。医師看護士併せて六名が重軽症を負う。能力の開花が見られなかった三名は、脱皮し謎の生命体へ変質。


十三日後、日本列島全域に朝日岳に派遣された自衛官と同様の、発熱から能力の開花を確認。東京大阪名古屋福岡京都札幌などの主要都市が機能停止。日本円が75%急落後、日本が財政破綻ソブリン・デフォルト


十四日後、歴史上二度目の世界恐慌。


三十八日後、全ての国や地域で日本と同様の発熱症状と能力の開花を確認。また、能力の開花が見られなかった者は99.9%の確率で謎の生命体へと変異。米大統領、世界経済の死亡を宣言。連邦国家解体へ。


五十日後、知で支配する時代は終焉を迎え、異能の力による暴力で支配する時代を迎える。


以上が、人類が初めて「パンドラの箱」と接触した際に起きた出来事である。







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