おわりに

 その後、田中さんの試験会場に居合わせた人間の九割以上がMEME-01に感染し、やがて施設は閉鎖された。

 田中さんの例は、MEME-01の凶悪さを物語っているといえる。

 MEME-01は、通常のウィルスと同じように潜伏期間があるのだが、この潜伏期間が二週間と長いのである。

 この二週間という長い期間、自分が感染しているかもしれないと思って行動することは非常にストレスがかかってしまい、人間の心的エネルギーが大量に消費されてしまう。

 ましてや常時感染リスクに晒されていることから、感染しているかもしれないと考え始めると、実際は二週間ではなく感染が収まるまで永遠に張り詰めて生活しなければいけない。

 そのような高ストレス環境の長期化は汎適応症候群へと繋がり、反動で大きく免疫力が落ちて軽い病気にかかりやすくなり、そして軽い病気にかかると気が弱くなったり集中力が落ちるなどしてMEME-01に感染しやすくなってしまう。

 このように、MEME-01は風邪と同じく万病の元であり、まさしく人類の脅威であるといえたのである。

 しかも、MEME-01は重篤化するまで無症状であることも多く、進行が遅く頭の中で様々な言葉が※¥/>に置き換わっているにも関わらず、※¥/>を口に出すまで感染がわからないというケースも少なくない。

 そのため、MEME-01の感染を確認することは困難であり、全般的な対策の遅れに繋がっていたのであった。

 こうした背景から、MEME-01は人々の生活を一変させてしまい、人類はこれまでのような栄華を失うこととなる。

 国は解体され、集団は解体され、個は孤となり、万人の万人に対する闘争の時代を経て、人々はこれまでとは違う形で再びまとまろうとしつつある。

 これからの人類の歩みに、光があらんことを願うばかりである。


 報告終了。

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