神々の盤上遊戯~駒に選ばれたので、自分の全て、命までも懸けて事件を解決します!
奈音こと楠本ナオ(くすもと なお)
序 神話の始まり(しんわのはじまり)
1
運命の歯車がきしむ。
木をこすり合わせた音。世界を隔てる壁を越えて。あらゆる世界の隅々まで届く。聞き取りし存在。つむがれた糸を辿り、源を仰ぐ。
漆黒の闇より、なお、深き闇。すべてを惹き付け、すべてを呑み込み、すべてを無に返す。
魅入せられて、触れれば。離れがたきもの。ぬるま湯に浸かるように。滴形のあらゆる世界の狭間を満たす。
ひしめき合う世界の衝突を避ける、緩衝材の役割を果たしていた。
浮かぶ、白い花。真上から見る。∞の形をした飾り紐。8の形をした飾り紐が重なる。四枚の花びらに見えた。真横から見れば、上下に距離があると判る。
花から発せられた、白い光。反射して、硬質な物の一部を視分けられる。透明で、真球体の形をした物。花と狭間を隔てた。
四方八方から、飛んでくる木の棒。二ヶ所ほど、ねじれた。ぶつかれば、大きく砕ける。
真球体の外側。複数の木の板が、それぞれ円を描き出す。木の棒が貫く。隔てる壁にさえ、当たらなかった。
玉状のオブジェ。否。運命の歯車と呼ばれる物。意のままに動かそうとして、挑んだ歴代の物たち。ことごとく、失敗に終わってきたと言うのに。
逆回転した。動いたと言えない、一ミリ以下。存在を知らしめた。もう一つ、運命の歯車がある、と。
一ミリにも及ばぬ動きでも。穏やかな水面に、小石を投げ込んだ時と同じ。波紋を描くように。あらゆる世界に伝わる。
人智を超える力を感知できる存在、知的生命体の本能をひっかく。不快感が残り続ける。
正回転する運命の歯車。逆回転する運命の歯車。互いに、押し合う。
運命の歯車の前身。黄金の花が、未完成な珠をこぼして以来の変事。
「時が満ちた」
誰もがつぶやく。緊張感にあふれる声で。異物が取り除かれるまで、止まるまい。
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