第3話口づけ

「サリアお茶を淹れてくれるか。そっちに行くから」


「はい。ナーバ皇子」


 少し疲れた顔をしていたので、砂糖とクリームをいてあげました。ナーバ皇子は、公務で出かける以外は私を側にいて欲しいと言われたので、お側に控えています。


だいたいお城にいるあいだは、執務室か自室にいます。


今は執務室で仕事をしております。


側にいて、なんて、お仕事が多のだろうと思いました。


でも、いつも笑顔で疲れた顔を出さずに、こなしております。


少し心配です。


私は手伝える事がないので、ソファで本を読んだりしています。


「どうぞ」


私の前に座られたので、お茶出すと、やさしく微笑んでくれました。


「流石ですね」


「少しお疲れのようなので」


いつもなら何も入れずに飲まれるのを、砂糖とクリームを入れたのを仰ったのだ。


「隣に行ってもいいですか?」


「どうぞ」


1口飲むと、横になった。


私の膝で!


驚いた顔を可笑しそうに見ると、目を閉じられた。


「少し眠ります」


「・・・はい」


すぐに寝息が聞こえた。


本当に疲れておいでなのだ。


初めてちゃんとお顔を見た・・・。


長いまつ毛に、高い鼻。


 目が鋭く、身長も高く、甘い顔と言うよりも、どちらかと言うと、怖い顔です。


それもあり、自分から苦手で近づくこともありませんでした。


なのに、どうしてこうなったのでしょう?


そっと髪の毛をさする。


柔らかい・・・


寝顔を見てるのなんだ優しい気持ちになり、もう少し、私に何か出来ないのか、と思いました。


ほんの20分程で目を覚まし、じっと私を見つめていました。


どうしたのかと思っていたら、ゆっくりと起き上がり、そっと私を抱きしめた。


「あ、あの・・・ナーバ皇子・・・」


どうしていいのか分からず、声がうわずり、身体が硬直する。


「嫌かい?」


「いいえ・・・こんなこと初めてで・・・どうしていいのか分からなくて・・・」


素直に答えた。


心臓が、早くなる。


「嫌じゃないなら良かった」


耳元で、くすぐったくなるような声がした。


「ナーバ皇子?」


「サリアの側にいると落ち着くよ」


とても安心する声に、自然にナーバ皇子の背中に腕を回していた。


「・・・こんな事で良ければ何時でも仰って頂ければ・・・」


「本当かい?」


ゆっくり離れると、真っ直ぐに私を見つめた。


「勿論でございます。お疲れのようで・・・少しでも、お役に立てれば・・・」


「じゃぁもう少し、他のことでもいいか?嫌だったら嫌だ、て言ってくれ」


「そ、そんな嫌だなんて、恐れ多い・・・」


慌てて答えると、意地悪な笑みを浮かべられ、顔を近づけたと思ったら、


私の顔の色んな所に口づけをしてきた。


唇以外の場所、全部に。


「ナーバ皇子・・・」


頬に、目に、おでこに、そうして首筋に。


「ん・・・」


びくりと体が震え、ナーバ皇子の腕を掴んだ。


「嫌だった?」


「いえ・・・。そうではなくて、なんだか・・・変な感じです。くすぐったいような、身体がむずむずします」


「そんなに・・・可愛いこと言われたら・・・我慢してたのに・・・」


そう言うと、唇に、口づけしてきた・・・

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