俺が三年前にたまたま助けた美少女が、高校の後輩になって、家事全般、勉強、運動すべて非の打ち所がないのだが、ただ一点俺への愛情表現が異常すぎる件について。
第4話 学校に行っても休まるところがない件について⑦
第4話 学校に行っても休まるところがない件について⑦
だが、やはり妃菜があの小豆沢グループの人間ってことには驚かされたな。しかも、家を飛び出してきたなんて・・・・・・よほどつらかったんだろうな・・・・・・
もしかして、俺の家に来たのは寂しかったからか? それなら、むげに追い出すのは・・・・・・って、あぁ、いつもの悪い癖が出てるな。
他人から見れば素晴らしい癖なのかもしれないが、俺の中ではよくわからない癖だ。困っている人に手を差し伸べられるといえば聞こえがいい。だが、そのせいでいちいち俺は自分の行動を後悔してしまう。
そいつが俺に、はじめから正の感情で近づいたわけではないとわかっていても、そいつをあしらった後は必ず後悔してしまう。
あぁ、やめだ、やめだ。頭がこんがらがってくる。今はそんなことはどうでもいい。
それよりも、『類は友を呼ぶ』なのか? まぁ、類と言うほど類でもないんだが。妃菜は家にコンプレックスがある。俺は親目当ての奴らにコンプレックスがある。
同じように家が関わっていると言うところは一緒だが、原因と問題の解決方法が違う。これがラノベの世界なら、俺が妃菜の問題を解決して・・・・・・やばい、フラグ立てた・・・・・・今のはなしにしてくれ!
「でも、それならさすがは亮ちゃんだね」
エミリーの褒めているような声が聞こえた。いや、実際に褒めているのだろう。声や言葉だけでなく、俺の肩に手を置いて、楽しそうに揺すっている。
何かさっきからずっと揺すられてないか? 別にエミリーが嫌がらせでこんなことをしているとは思っていない。おそらく、エミリーなりの祝福のようなものなのだ。昔からいつも、こんな感じで人を褒めている。らしいと言えば、らしい。
「ホントだよな」
その発言に辰弥が頷きながら賛成した。さっきまで、笑っていたとは思えないな・・・・・・
「昔から、亮祐は優しいからな。今よりももっと明るくて、誰にでも優しくて、いいやつだった」
腕を組んで、宙を見上げ、物思いにふけっているような、ほんわかした声を出した。昔を懐かしんでいるのだろう。
お前は俺の親かおじさんか・・・・・・なんだ? 何なんだ? 俺と辰弥はどういう関係だったっけ?
血はつながってないよな・・・・・・確か。俺と血がつながってるのは父親
って言うか、その話はやめろよ・・・・・・昔のことなんて、もう関係ないだろ。
「ええ! 先輩ってもっと明るかったんですか?」
妃菜が机に「ドンッ」と強く机に手を置いて、驚いたような声を出した。気配だけでこちらに近づいているのがわかる。
俺は「はぁ」と、小さくため息をついた。俺のことはそのうち説明すると、ちょっと前に言ったが(・・・・・・誰に?)こんなに早いとは思わなかったな。
まぁ、これで妃菜が本当に俺目当てなのか、それとも俺の両親目当てなのかがはっきりするな。今までの感じからして後者はほとんどない気がするが。
「亮祐、言ってもいいか?」
俺の方を向いて、一応確認をとった。こういうところも律儀だよな。
「ああ、いいぞ」
どうせそのうちわかることだろう、もしかしたらもう知っているかもしれない。そんなことを俺がいちいち制止するわけない。もったいぶったところで何の価値もない。
俺が辰弥にOKを出すと、辰弥は再び、わざとらしく咳払いをした。そんなに、好きなのか?
「小豆沢さん・・・・・・じゃなくて、小豆沢は亮祐の両親のことは知ってる?」
「いいえ。私は先輩のことにしか興味がないので、調べたのは、先輩の住所と居住形態、それに歩き方、階段をどっちの足から上るか、バイト先、通学路、保育園、小学校、中学校、よく行くスーパー、それから・・・・・・」
「も、もういい・・・・・・大丈夫・・・・・・」
嬉しそうに自分のストーカー行為を暴露する妃菜に対して、辰弥は引き気味に声をかけ、両手で妃菜の言葉を止めた。
いつから俺を見てたんだ・・・・・・これはもう犯罪だよな。って言うより、昨日も今朝も不法侵入だよな。帰ったら通報しよう。ストーカー規制法を使ったら、俺の平和な日常は取り戻されるだろう。
という、冗談はさておき(本当は少し考えたが)辰弥と妃菜の会話は続くようだ。
「えーと・・・・・・亮祐の両親は二人とも有名人で、父親はあの有名料理人の
辰弥が説明するとクラスにどよめきが起こった。耳に「えっ、あの子が?」「まじかよ」などの声が聞こえてきた。
なるほど、俺のことを知らないやつもいたのか。まぁ、ゴシップ好きのやつ以外あまり知らないだろうな。
妃菜は口をパクパクさせていた。どうやら、俺が二人の息子だと知らなかったらしいな。まぁ、今までの感じで二人狙いではないことはなんとなくわかっていたが。
「ま、まさか・・・・・・」
妃菜のパクパクしている口から声が聞こえてきた。その顔は、そんなわけない、と言わんばかりのものだった。
そんなに信じられないか? そりゃ、
「ま、まさか先輩が・・・・・・って、二人とも誰ですか?」
「「「「おー」」」」
「ドテ!」
漫才のようにクラス中が大ごけした。驚きすぎると本当にこけるんだな。
俺も辰弥も椅子から滑り落ちて、床に尻餅をついていた。エミリーの方を見ると、エミリーはひっくり返るという言い方がぴったり合うようなこけ方をしていた。いや、さすがにそれはわざとだろ・・・・・・
「いてててて・・・・・・知らないんだ・・・・・・」
机を支えにしながら辰弥が起き上がっていた。俺も辰弥のまねをして、起き上がって自分の席に着いた。エミリーもなんとか起き上がったようだ。
「はい! 顔が出てこないどころか、名前すら聞いたことがないです! って言うか、さっきも言ったとおり、私は先輩以外に興味ありませんから!」
俺が妃菜の顔を見るとすがすがしい笑顔で俺を食べようとしていた? ので、あらぬ方向をむき直した。
一途だな・・・・・・って感想は受け付けない。だって、狂気すぎるだろ。絶対俺は妃菜に呪いか何かをかけられている自信がある。
って言うか知らなかったのかよ。それなら、信じられない、みたいな顔をするな・・・・・・
「亮祐、よかったな」
「マジで、立場変わってくれ」
「それはできない。小豆沢は亮祐にぞっこんだからな」
ぞっこん、って・・・・・・もう死語だろ、死語。辰弥がだめなら、近々霊媒師のところにでも行くか・・・・・・それとも妃菜にお札でも貼るかな・・・・・・
「っで・・・・・・先輩の親って・・・・・・」
「えっ、ああそうだ、そうだ」
妃菜が遠慮がちに聞いてきたので、辰弥は手を合わせて謝りながら、俺の両親の話を続けた。
「まずは、じゃあ、陸さんからにしよう。陸さんは若くして天才料理人と言われた、フレンチ料理界の鬼才。陸さんのフレンチ料理は和、洋、中のそれぞれのいいところを組み合わせた『革命のフレンチ』と呼ばれる料理で世界大会の優勝経験も持ってたはず。俺らが小さい頃は日本で作ってたけど、ちょっと前からフランスに行ってシェフをやってるらしい」
とそこまで辰弥が説明すると、エミリーの方から手が伸びてきた。その手にはスマホと、その画面に映る父親の写真がチラリと見えた。
「それに超がつくほどのイケメン! 私の初恋は陸さんだったな-」
「初恋って。エミリー、いくつのときだよ」
「いいじゃん! 優しくて、料理がうまくて、おまけにかっこいいんだよ!」
「確かにな。俺も陸さんに憧れたなー」
幼なじみ二人が父親との昔話を始めようとしている空気になっている。
「辰弥・・・・・・母親の方も・・・・・・」
俺が話せばいい話だが、ここでチェンジするのもおかしいだろう。
「ああ、そうだな」
「もう、亮ちゃんってせっかちになった?」
辰弥は俺の言葉で軌道修正を図ろうとしたが、エミリーの方はなぜか俺に難癖をつけた。俺がおかしいか? 何度も脱線したら早めに修正に入るのが普通じゃないのか?
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