俺が三年前にたまたま助けた美少女が、高校の後輩になって、家事全般、勉強、運動すべて非の打ち所がないのだが、ただ一点俺への愛情表現が異常すぎる件について。
第4話 学校に行っても休まるところがない件について⑤
第4話 学校に行っても休まるところがない件について⑤
「よし、エミリー(
エミリーも
「それじゃあ、何から話そうか?」
こういうときに仕切ってくれるから辰弥は助かる。それに比べて俺(
辰弥も何から話そうか迷っているようだ。腕を組んで、目を瞑っている。ずっと背もたれの方を向いて座っていて痛くないのだろうか? 俺には関係のないことなのだが。
辰弥が急にパッと目を開いたかと思うと、ほぼ同時に口を開いた。
「俺の名前は
一人ひとりをしっかりと指さしながら自己紹介をした。
確かに俺は自己紹介をすべきなんじゃないかと言った。さすがは辰弥、常識のあるやつはしっかりとやるんだな。
だが、今じゃねぇよ。このタイミングでもっと話すことがあるだろ。しかも何だ、俺の説明・・・・・・「そこで死んでるやつ」? 俺、そんなに死んでるのか?
「初めまして。改めて、小豆沢妃菜です。『小豆沢』って言うのも長いんで、名前で呼んでもらえればいいのかなと思います」
妃菜も「ペコッ」という音が出そうなかわいらしく、それでいて礼儀正しいお辞儀をした。こんなに礼儀正しい行動ができるんだな・・・・・・じゃあ、俺にもやってくれ・・・・・・
「ん?・・・・・・小豆沢?小豆沢って・・・・・・」
急に辰弥が考える人のようなポーズをとって考え込み始めた。「小豆沢」にひっかかっているようだ。
まぁ、あんまり聞いたことがない苗字だよな。「
そんなどうでもいいことを考えていると、辰弥の顔が光った(もちろん比喩的な意味で)。何かひらめいたのか、思い出したのだろう。
「もしかして、
妃菜の方を見ながら辰弥が驚いたような声を出した。声だけでなく、横顔だけでも驚いた表情をしているのがわかる。
「はい・・・・・・まぁ・・・・・・」
珍しく妃菜が遠慮がちに(エミリーに難癖をつけられたときのは例外として)反応した。恥ずかしそうな、だがどこか違うような、なんとも表現しづらい表情だ。だが、俺は近しいものを感じた。
にしても妃菜が小豆沢グループの人間だったとは。どうして苗字を聞いたときに気づかなかったのだろうか・・・・・・気づけるわけないか。あんな変な風に迫られては妃菜以外のことに頭が回るまい。
「ねぇ、たっちゃん。小豆沢グループって?」
俺が考え事をしているときにエミリーが、辰弥に聞いた。おいおい、まさか知らないのか? エミリー・・・・・・それはさすがにやばいぞ。
「おいおい、エミリー、まさか知らないのか?」
辰弥も俺と同じ反応をした。そうなるよな。
「じゃあ、説明しよう」
わざとらしく咳払いをひとつして、小豆沢グループの説明を始めた。
「今の日本は女性も働く時代だ。夫婦で家事を分担しようにも両働きだとそれも難しくなる。そこで家政婦の出番だ」
辰弥が何かの広告を始めた。多分、辰弥は小豆沢グループに買収されているのだろう。
「昔は金持ちの家にしかいなかった家政婦を一般家庭に出張という形ではやらせたのが、何を隠そう小豆沢グループ」
人差し指を立てて、小豆沢グループの概要の説明を続けている。
コマーシャルにでも出てるのか? それなら、辰弥、妃菜をお前にやろう。俺に何の権限もないがとりあえず妃菜をもらってくれ。
そんな心の声が聞こえるはずもなく、辰弥はさらに続ける。
「小豆沢グループの出張家事代行サービスが全国ではやって、小豆沢グループの名は一躍有名になった。出張家事代行サービス以外にも、金持ちの家用に常駐の家政婦や、執事、メイドの手配も行っている。家事をさせたら右に出る企業はない大企業さ」
なるほどな。妃菜の料理がよかったことや、家事を自分でやろうとしていたのはもしかしたら、母親か父親に教え込まれていたかもしれない。
少し俺と似てるな・・・・・・なぜ俺と似てるかって? それは、まぁ・・・・・・また今度ということで。今は妃菜のことに集中しよう。って俺、心の中で誰に話しかけてんだ?
「へぇ、つまりお嬢様ってことね」
面白くなさそうな声でエミリーが誰もが思うであろうが、ほとんどの人は口にしないだろう言葉を口にした。
妃菜がお嬢様・・・・・・ずいぶん、色んなことを知ってるお嬢様だな。今までの感じからすると、家事代行サービスの企業ではなく、あっち系の本やビデオを作ってる企業だろ。
妃菜がどんな反応をするのか気になって、顔を向けた。(首はもう大丈夫だ)また何やら言い合いになるのかと思ったが、妃菜は暗い顔をしていた。
俺はこの顔を知っている。小さな頃から見てきた顔だ。鏡の中にいる、小さな、小さな俺の顔・・・・・・
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