第3話ー9
鋼鉄のパイナップル。
カルマちゃんの股下から転がり出て来たそのアイテムはカルマちゃんが口にした「バルス」という言葉と共にその効力を発揮した。
ピカッというかカーーーーーーーーーーーーーーーと光が膨れ上がった。
「スタングレネード」
強烈な光を発して敵の視界を塗りつぶす非殺傷兵器。
まぁ、非殺傷って言ってもまともに喰らえば気絶するくらいの暴力なのだが。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ぎゃああああああああああああ!目がああああああ。目があああああああああ」
盾の裏で素早く専用のサングラスをかけて凌いだカルマちゃん以外は、この光の暴力になすすべもなく目をやられた。
一番至近距離で食らったデュランは目を押さえながらも素早く後ろに飛びのいて追撃に備えている。
距離を取っていた敵兵は混乱しているのにデュランは冷静にこちらの動きを読もうとしている。
流石だ。
……ちなみに後ろでは光を直視したらしいテクスチャが悶絶している。
「卑怯だって言いますか?」
「いいや、……なかなかにたまげたぐらいじゃ」
「ならばこのまま攻めます」
「かかってこい、受けて立つ」
そう言うと目をつむったままデュランは槍を構える。
対するカルマちゃんは俺様をハルバートに戻して、突きを繰り出す。
それを爺さんは槍の穂先で受け止めた。
すかさず横薙ぎを繰り出すカルマちゃん。
しかし、それも躱されてしまう。
嘘だろオイ。俺様は突かば槍、払えば薙刀、引けば鎌、振り下ろせば斧、の十文字鎌手槍より便利なザックカリバー様だぜ。
その俺様の攻撃をスタングレネードをもろに食らった状態でさばき切るか普通。
カルマちゃんは決して弱くはない。
が、それは科学力によって底上げされた奇道だ。
武術においての正道ではこの爺さんの方が圧倒的に秀でている。
しかし攻め手はカルマちゃんで爺さんの方は防戦一方。
何合目かの攻撃で爺さんは後ろに弾かれる。
そして槍を支えしてに膝をついた。
「デュラン将軍」
それを見た後ろに下がっていた兵士の中でも動ける者たちが駆け寄って爺さんを囲む。
「お前たち、下がっていろと――」
「できません。将軍をこの場で失うことは帝国にとっても大きな損失。ならば帝国騎士として命をとしてお守りする次第です」
ぶぅうおおおおおおおん、ぶぅうううううううううん。と俺様を振り回していたカルマちゃんは。
「これじゃあまるで私の方が悪者みたいだよ」
そうつぶやいたカルマちゃんは、「よし、こうしよう」と言って、俺様の石突きを地面に突き立てる。
その衝撃がケツをバットでブッ叩かれるような刺激で「アーーーーー!」と叫びたくなるのだが、そこは我慢だ。俺様、尻ないけど。
「見逃してあげる」
「なんじゃと!」
それを聞いたデュランが吠える。
「貴様、誇りあるグランマキナ帝国の将に情けをかけるというのか」
「そんなの知らないわ。だって私は盗賊退治に来ただけだし」
「くぅ」
「だからこの砦を破壊して盗賊は蜘蛛の子を散らすように退散させた。ということにするわ。」
「そんなことでギルドが納得するものか」
「アンタ達を連れて帰った方が戦争の火種よ。いい、ここは私が勝ったの。部下を無駄死にさせたくないならここは引いて戦争はあきらめなさい」
「この野望そうそうに捨てられるか」
「ならば、さしで私に勝ってからにするのね。私は旅を続けるけど何処でも相手してあげるわよ」
「舐めてくれよるわ。良いだろうここは引く。いつか貴様を後悔させてくれるわ」
そうして、盗賊に扮していた隣国の兵たちは潔く撤退していった。
もちろん負傷者の回収も忘れずに。
「砦の中にあるものは貴様らが持っていけ。盗賊はこちらにも手を出していたことにするからな」
と、デュランは言っていたが、そういうことにして兵を出したことにするつもりなのだろう。
そういう訳で、ため込んでいた財宝を回収する。
「それでカルマさん。なんで代わりに粘土を置いて行くんですか」
「ふふ~~~ん。それは後からのお楽しみ。」
「はぁ?」
そうして砦を一周した俺様達は砦が見える少し離れた丘に来ていた。
「ザック君、点火準備は万全かね」
「モーマンタイです。教授」
俺様の答えに満足そうにうなずくカルマちゃん。そのカルマちゃんにテクスチャは訊ねる。
「カルマさんは何をするつもりなんですか」
「花火だよ。ドカンと一発派手なのを上げるよ」
「そんなの何時準備したんですか?」
「砦を回ってるとき。砦に粘土を置いて来たでしょ」
「はい」
「あれC4って言うの」
「点火3秒前。2・1」
「しーふぉー?」
「点火!」
首を傾げているテクスチャの横で俺様はカウントダウンを始めて、砦に設置したC4を一斉に起爆した。
ドカ――――――――――ン。ちゅど―――――――ン。パギャ――――――――――――――――――――――――ン。
テクスチャが目をマンマルにしてる所を俺様とカルマちゃんは「玉屋ーーーーーーーーー」と叫んでいた。
砦だったものは粉みじんと化したのだった。
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