第3話ー7

「うおおお、こいつはすごいいぃぃぃぃぃぃぃ」

 こわもての爺さんが顔を赤らめながら嬌声を上げて俺様の体を撫でまわして来る。

「何じゃコイツの体は、見たことのない材質。なんと滑らかな肌触り。はぁあ、はぁあ、はぁあ。――ジュルリ。おっとよだれが出るところだったわい」

「ぎゃぁあああああああああああああああああああああ、やめろよジジイ。俺様を汚していいのはカルマちゃんだけだからな」

「おおう、喋りおったぞこ奴」

 カルマちゃん、早くジジィから解放してください。


 さて、なんで俺様がジジィに撫でまわされていたかと言うと――――カルマちゃんの紹介もかねて俺様がカルマちゃんの作品として紹介されたのだ。

 そしたらジジィは俺様に頬ずりなんかしやっがった。

「いやぁ~、すみませんな。年甲斐もなくはしゃいでしまったわい」

「仕方ないですよ。モノづりしてる者として気持ちは分かります」

 ジジィに共感を覚えるカルマちゃん。

 このジジィ、ロッキーの案内でやってきた場所の顔役でもある鍛冶職人である。

 この辺りは鍛冶職人の集まる区画で、まぁ、鍛冶なんかは火などを使ったりするので町の離れにまとめられていたらしい。

 とはいえ、この辺りは農業も盛んなのでくわすきなどの農具などで街の人からも必要とされており、別に差別されてるわけじゃない。

 町のガラが悪いのは血の気の多いやつや、仕事一筋で生活がすさんでるやつらが多いだけなのである。


「いやさ、ロッキーの紹介とは言えこんな子供を鍛冶場に連れてきやがって、って思ったが、これほどの1品を創ったとは御見それしました」

 と、頑固そうな髭のジジィがカルマちゃんに頭を下げる。

 はぁ~はぁっはぁっ。カルマちゃんのすごさを俺様を通じて理解できたようだな。

「して、用はなんじゃ」

「実は、この嬢ちゃんがギルド協会から発明者の称号を取るよう勧められたらしくてな」

「ほ~う。なるほどな」

 ロッキーの説明にジジィは顎髭を触りながら納得の頷きをする。

「お嬢さん歳は?」

「12歳です」

「予想以上に若いな。見たところドワーフってわけでもなさそうだし、かといってただの人間て訳でもなさそうだ」

「実は故郷が滅んでしまって、行く当てもなく、かといってやりたいことが無いわけでもないんです」

「ほう。やりたいこととは」

「モノ作りをしながら旅をして、いつか自分の国を作ることです」

「――――。それはまた大きな夢だな。ちょっとあっけにとられたよ。しかし、その武器のような物を創れるなら発明王と呼ばれるような偉業をなして国も作れるかもな」

「でしょう」

 ジジィは真面目な顔で頷き、カルマちゃんは笑顔でそれに答えていた。


「用件は分かった。この子に工房構える許可だな」

「え?いいんですか。私旅をするつもりですけど」

 ジジィの発言にカルマちゃんが申し訳なさそうに答える。

「なぁに、職人の中には素材集めに旅をしながらモノ作りをする輩もいる。そういうやつの為の工房もあるんだよ」

「それを使ってもいいんですか」

「ああ、もちろんだ。発明者の称号を得られれば職人ギルドの方から名前を登録させてくれと来るはずだぜ。そうすればどこの町の工房だって借りられるようになる」

 ほう、ソレはなかなかの好待遇。

 ここは乗っかっておくのが良いだろう。

「わぁ、助かります」

「いいてことよ。だが、代わりと言っちゃなんだが――」

 と、突然あくどい顔になったジジィに俺様が警戒して居ると。


「すまない。ワシらに武器作りを教えてくれんか」

 という頼み事だった。

 ジジィは深く頭を下げて、頭の上で手を合わせて拝み倒している。

「ちょっとっちょと、そんなに頭を下げないでください。」

「いいや、そうもいかん。先ほど見せてくれた黒い武器。金髪に青い瞳の肌の白い少女。あなたなのだろう。クリの村からの行商を助けてくれたのは」

 そう言われて心当たりが無いわけっではない。

「あの行商にはワシの娘と夫が乗っていた。今は出ているが、ついた時に助けられた話を聞かされたのだ。娘たちの恩人に頭を下げんわけにはいかんのだ」

「それがどうして武器作りのお願いになるんだ」

 カルマちゃんはアワアワしてるので俺様が代わりに聞いてみる。

「ここのところ魔物たちが活発化してきていたのだが、闇の魔物まで出てくることになった。今までは農具の製作だったりでやって来たがこうも魔物が出ると冒険者に頼らねばならぬ。しかし、武器の修理や製作が出来ないと彼らに居ついてもらえないという話が町会から来てな。しかし、武器作りのノウハウをどう学ぼうかと悩んでおったところに貴方様が来られた。その武器ほどでなくていい、ワシらに少しばかり武器作りを教えてくれないか」


 そう言われて「はいいですよ」と答える奴はそういないだろう。

「ハイいいですよ」

 しかし、カルマちゃんは人がいいのであっさりとOKしてしまった。

 ほんと、流石は俺様のカルマちゃん。

 まあ、この世界で国を創るなら人望を集めておくのもいいだろう。

「ただ、私たちは明日からクリの村に魔物退治に出帰るのですが」

「うむ、その話は娘から聞いておる。帰ってきてからでお願いします」

 と、やたらへりくだるジジィ。

 それに慣れないカルマちゃんはアワアワしてるけど、俺様はもっと堂々としてほしい。

 カルマちゃんはいつか王になるのだから。

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