第3話ー2

「くすくすくす、子供ってザックのことだよ」


 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はぁ?

「カルマちゃん俺様のことを子供って言った」

「そうだよ~」

 身体を洗うために洗い場に移動するカルマちゃんの首に下がっているペンダント型の俺様はなんだかやるせなかった。

 俺様子供扱い。

 なんだかな~。違うんだよそういうのとは。

 分かる。

 今まで年上目線で見ていた相手に「貴方私の子供」って言われてもいまいちピンとこないんだよね。


「でもザックって私が創ったんだよ。ならば私の子供じゃない」

 お湯の中に綺麗な金髪が浸からないように編み込んだ髪を気にしながら、カルマちゃんはそうのたまう。

 何となく意味は分かる。

 でも納得はできない。

「でもでも、ザックてばお母さんと一緒にお風呂に入りたいとかごねてたよね」

 それは動機が違う。

 くそう。ここにきて俺様男だと言ったら怒られるかな。

 実際に機械に性別は関係ないけど、俺様男のつもりだし(そう考えると、風呂について来た時点で下衆。)、なんならカルマちゃんのことを異性としても見れるわけで。

 …………………………つまり俺様マザコンなんだ。

 今更ながらにショック。


 ハイハイソウデスネ。

 俺様カルマちゃんの子供。

 OK。

 納得した。

 これからもカルマちゃんの安全と健やかさと笑顔のために頑張っていきたいと思います。


 ――――――でもムカつくから、カルマちゃんの裸体と入浴シーンを俺様の脳内フォルダにしっかりと保存しておこう。脳みそないけど。


 カルマちゃんはお風呂に入らなかったわりには綺麗好きなのか、体はしっかりと洗う。

 泡を立ててごしごしと、腋の下、おへそ、あんよの指の間と見ていてフェチズムが刺激される可愛らしい洗い方をしてくださる。

 眼福眼福。

 髪も解いて長い金髪を丁寧に洗っている。


「あら、カルマちゃんだったかしら。」

 そこにボン、キュッ、ボン、のお姉さんが現れた。

 町の公衆浴場を使ってるので鉢合わせはある事だが、それが知っている人だったのだ。

「ライムさんですよね。ギルド協会の受付の」

「そうよ」

 俺様としてはカルマちゃんの裸を誰かに見せるのは気にくわない。つなぎ目のこととかあるから。

 けど、カルマちゃん自身は気に留めないのか普通に挨拶していた。


「カルマちゃん、最初の仕事以来来ないけどどうしたの。やっぱり冒険者は肌に合わなかった?」

 と、ここ3日間引きこもっていたカルマちゃんをお姉さんが心配して、カルマちゃんの隣に座りながら話しかけて来た。

「いえ、そんなことないですよ。ただ、この3日間は研究にのめり込んでしまって」

「研究?」

「はい、私田舎では学者をしてまして、魔力とか新素材とかでつい没頭してしまいました」

「へぇ~。それで何かいいモノ出来た」

「はい、ジャイアントやもリンの魔力を調べて似た効果を一時的に得られる保湿クリームを作りました。」

「えっ、本当」

「はい」

「それすごいじゃない。魔力を調べて魔物の能力を再現したアイテムなんて聞いたことないわよ」

「そうなんですか?」

「そのアイテム、――うぅん、アイテムの製造方法をギルドに売ってくれないかしら」

「構いませんよ」

「おいおい、カルマちゃん。何あっさり返事しちゃってるの」

 売り言葉に買い言葉、みたいにあっさりと売るというカルマちゃんに俺様はつい口を出してしまった。

「ん”?今男の声がしたわね」

 お姉さんが眉根を寄せて辺りを見渡す。

「それならこれです。」

 そう言ってカルマちゃんは胸に下がっているペンダント型の俺様をお姉さんに見せる。

 お姉さんは疑わし気な目で俺様を覗き込んでくる。

「これは私が創った意志を持つ武器です。」


「なんですって、意志を持つ武器?」

「そうです。ザックカリバーって言います」

「それをカルマちゃんが創ったと?」

「はい。ザック挨拶をして」

「ハロー。初めましてお姉さん。マイネームイズ・ザックカリバー、よろしくね」

 俺様はできるだけフレンドリーに挨拶してお姉さんの疑いの目をはらそうとした。


「――――男じゃん」

「へ?」

 あぁ~、やっぱりそう思われてしまってますか。

「その武器、男じゃないの」

「いえ、ザックは武器なので性別はありません」

 とカルマちゃんが言うけれど、お姉さんの疑いは晴れない。

「それじゃあザック、女の子の声で喋ってみて」

「イエス、マイマスター。私ザック、よろしくね」

「……なんだか男の裏声みたい」

 実質裏声である。

 どこから声が出てるか分からないが、てか俺様の声ってどういう設定になってるんだろう。

「まぁいいわ。武器が男かどうかなんて確かめようがないものね。――それより、お姉さんはカルマちゃんの作れるものに興味があるわ」

 と、今度はカルマちゃんの顔を覗き込むようにしながらしゃべり始めた。

「カルマちゃん、発明家の称号を習得しておかない」

「はい?」

 カルマちゃんは青い目を丸くして疑問符を浮かべたのだった。

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