第4作 隠れる本質

 美しく舞う踊り子バレリーナ。しなやかな体の使い方は、見る者に柔らかさを感じさせる。きらびやかな衣装を身に纏い、舞台の光を浴びる姿は、花と戯れる蝶そのもの。一寸の狂いもない指先や足先。その光景に誰もが目を惹き付け離せはしなかった。

 踊り子バレリーナは将来、有望な蝶となって世界へ羽ばたいて行くだろうと噂された。成長した姿を自由に夢見ていた。


 舞台は終わり、盛大な拍手が幕を閉じさせた。誰もいない小窓の側で、貼り付くように巻かれた包帯を紐解く。薄い布の下は無機質な鉛銀。熱を伝えやすい肌は、冷たさが目を伝って感じられる。有能な機械には成長がない。夢の世界へと誘う蝶は、未来の無い空洞だった。

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無味無香世界 @Tasteless_unscented

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