第2作 だれもしなないせかい

ここは、「だれもしなないせかい」。

優しくて暖かい、可能性の満ちた未来を想い描く場所。皆が楽しく元気に生きられる場所。

車に轢かれても大丈夫、君は生きているよ。首を吊っても問題ない、苦しくないかい? 海に飲まれても平気さ、どこまでも泳いでいけるよ。

どうして俯いているの? ラムネをいくら食べても無駄だよ、解決させないと次には進めないんだから。

皆色とりどりの地面ばっかり見ているね。それもそう、鮮やかな空はクレヨンで塗りつぶされてしまった。だから僕も君らも産まれた土地じめんが大好きなんだ。ずっと見つめていたいんだ。

誰もが手を合わせて願った世界。皆とずっと一緒にいられますように、望まれた幸せな世界。皆の夢が叶ったんだ!



でもね、時折寂しくなる。雲の向こう側にはまんまるお月様が、明日を照らしてくれていた。夕日は包んでくれていた、朝日は手を差し伸べてくれていた、夜空が抱き締めてくれていたのに。

辛いことがあっても逃げられていた。「ここには寄り道も無いんだよ」、そう皆が語っている。

希望が詰まったはずなのに、どうしてこう思うんだろう……。涙の世界は灰色に染まっていた。

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