第35話 俺達の召喚後の前世
ドワーフ族の里の住人に対して火山活動によって壊滅的な被害を受けた里を離れて俺達の砦に移動することを提案している。
故郷を離れるのは辛い思いだ。・・・俺と真もアマエリヤ帝国へ無理やり召喚されたのだ。
俺の横に立つ真がそれを思い出してか俺の裾を強く握っている。
=====================================
召喚された時、俺は高校入学の報告をする為に俺の両親の眠る寺の墓を訪れ、真もまた俺の親父の命日に墓参りに来ていた。
この寺は親父の祖父の兄弟が住職をしている寺であり、工科学校という特殊な学校に入校することから庫裏で俺の私物を預かってくれることになっていた。
俺は住職との約束の時間より早く着いたために大荷物を持ったまま墓掃除をしようと思って墓にいたのだ。
大荷物の中には、その寺で北海道の祖父からは遺品として猟銃を、九州の祖父からは餞別の日本刀を貰っていたが、これら危険物は今は亡き親父の同郷の先輩であり良き上司であった元県警本部長が預かってもらうことになってもいたのだ。
それらの荷物がこの異世界に来てから何度も襲い来た危機を乗り越えさせてくれていたのだ。・・・前世の文房具だけでなく高校用の教科書類も役に立っている。
俺の両親の墓の前で真に出会った。
その俺達二人に向かって、刑務所の作業服のようなものを着た痩せた一人の男が襲いかかってきたのだ。
それは父親を亡き者にした元凶の一人である刑務所に入っているはずの武木田組組長武木田典膳だった。
武木田典膳は刑務所の中にいても仇敵の武田電機グループの状況を刑務官になっていた配下の者から受けていたのだ。
武田真が家出したという連絡を受けた武木田典膳は、配下の者の手を借りて刑務所を脱走した。
そして、武田真は俺の親父の命日には必ず墓参りに現れると聞き、ここで網を張って襲い掛かってきたのだ。
武木田典膳の手には武木田組配下の者が手配した日本刀が握られていた。
いまにも切られようとする武田真を抱えて逃げた。
切られると思った時物凄い光をあびた。
また物凄い力で引っ張られこの世界へと召喚されたのだ。
元の世界では真暗殺に失敗した武木田典膳は切りつけて空を切った日本刀片手に呆然としていた。
その有様を寺の住職と親父の同郷の先輩であり良き上司の元県警本部長が見ていたのだ。
彼等は寺の墓場の物音を聞きつけて様子を見に来たのだ。
俺と真が光に包まれてその光が急速に収まると同時に消えていったのを見ていたのだ。
豪胆な寺の住職と色々な修羅場を経験していた元県警本部長でも初めて目にする異常事態だ。
さすが親父の叔祖父(おおおじ)昔は武道で鳴らした剛の者だ手に持った竹箒で武木田典膳の日本刀をはたき落とし、元県警本部長が押さえつけた。
しかしこの異常事態は元の世界を震撼させた。
ありとあらゆるメディアがこれを取り上げた。
この状況を見たのが刑務所から逃げ出た武木田典膳だけなら信じられなかっただろうが、寺の住職と元県警本部長が見ていたのだ。
墓場で神隠しという異常事態として世間は認知して、俺や真が消え寺は神隠し寺として有名になったのだった。
それでも俺の親戚や真の親族は納得がいかなかった。
一つの踏ん切りをつけるために俺と真は失踪者とされ失踪宣告がなされて7年後誰も入っていない棺が燃やされてこの事件は終焉したのだ。
それに後日譚としては、俺達を襲った武木田典膳について、神隠しというこの異常事態を目にして
「神はいる!」
等と叫び、前世を悔いて、色々な犯罪、特に10指に余る殺人や殺人教唆を告白して裁判でも全てを認め、本人も死刑を希望したので死刑囚となり俺達が失踪宣言がなされた年に執行されたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます