第29話 命を預かる②
祖母がふたたび入院した。
誤嚥性肺炎だった。
あらためて、主治医から話があると言う。
後日、面談することになったので、母にも同席してもらった。
「◯◯(祖母の氏名)さんは血管が細くて内出血もひどいです。点滴を打つ血管が顔ぐらいしか残っていません。このままですと人工呼吸器云々の話になるのですが、そうなると高次医療施設に移さなければなりません。長期入院で経済的にも相当な負担になりますが、ご家族はそれをお望みですか?」
祖母は我が家系では突然変異の美貌の持ち主だ。
顔に点滴の針を刺すことを想像すると涙が出た。
「すぐには決められないので少し時間をください」
植物人間か、自然死か。
母と私はじっくり話しあうことにした。
一週間後、母と私はふたたび主治医と面談した。
私たちの結論は“祖母は延命を望まない”だった。
祖母の代弁と代筆。
私はみたび震えながら同意書にサインした。
間もなく祖母は退院した。
私たちとホーム職員にできることは、寝たきりになった祖母の自然死を看とることだけだった。
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