第125話 上杉ケイトの秘密
【上杉陣営反省会続き・ケイト視点】
「あ、姉貴!!」
「何よ、カイト?」
あの子、なんか不服そうな顔をしているわね。
一体、どうしたのかしら?
「そ、それよりもさ、姉貴!! 何で俺が竹中なんかに投票しなくちゃいけなかったのさ!? 俺があいつに一票入れてしまったせいで俺と同数で五位になっちまったじゃないか!!」
「別にいいじゃない。何の問題も無いわ……」
そんな事でふてくされていたの? バカじゃないの?
それよりも私は颯君が五位に入ってくれた事がとても嬉しいわ。
「問題アリアリだよ!! せっかく男子で目立つことのできるのは二年の羽柴陽呂さんと俺くらいだと思っていたのにさぁ……これじゃぁ、嫌でも竹中も目立つじゃないか!!」
はぁ……
「カイトって、本当に器が小さいわね? お姉ちゃん、情けないわ……こんなんじゃ、あんたに将来の仙石学園を託す事はできないわねぇ……」
「俺の器が小さいだって!? し、失礼な事を言うなよな!? それに将来の仙石学園を託せないってどういう意味だよ!?」
「私はね、この学園が大好きなの」
「それは良く分かっているさ!!」
「大好きな理由もカイトやカノンは分かっているでしょ? まぁ、あなた達も同じ理由でこの学園に入学したんだしね……」
「ああ……そうだな……」「はい、そうですね……」
私達は小さい頃、『ハーフ』という事だけでよくイジメられていた。
だから私達は近所でも幼稚園や小学校でも孤立していた。
友達が一人もいない訳では無い。
家族ぐるみで付き合いのあった静香と茂香だけは私達の事を普通の友達として接してくれたし、イジメられている私を助けてくれてもいた。
あの頃から静香は私と何でも競い合う『良いライバル関係』で茂香は審判ばっかりやつていたなぁ……まぁ、今もだけどね。
実は今でも二人に対してあの頃の恩は忘れていない。
恥ずかしいから本人達には絶対に言わないけども。
でも、ある時、昔から頭の良かった茂香が進学校の仙石学園中等部に入学する事になり、数少ない友人が一人減り、私は落ち込みながら地元の中学に入学する。
やはり中学生になっても私に対するイジメはおさまらなかった。
常に私を助けてくれていた静香もいつの間にかイジメの対象になりかけていたので私は心が痛かった。
そして数ヶ月が経った時、茂香が嬉しそうな顔をしながら家に来た。
茂香が言うには、仙石学園も昔から『イジメ』が頻繁に起こっていた学園だったそうだけど、茂香が入学して数ヶ月後に『人気投票システム』というものが高等部に導入され、そこから奇跡的に中高等部共にイジメが無くなったというのだ。
それを聞いた私は凄く驚いた。
すると茂香が『今からでも遅くないから編入試験を受けてみれば~?』と誘ってくれたので、私は家族に相談する前に静香を呼び出し、その事を伝えたら何故か彼女も一緒に編入試験を受けると言い出した。
その時の静香の目には涙が溜まっていたのを今でも忘れない。
そこから私達は必死に勉強をして編集試験に臨み、見事合格!!
遂に仙石学園中等部に二学期から中途入学する事となる。
茂香が言っていた事は本当だった。
仙石学園には『イジメ』が無かった。
それどころか皆、周りの人達の事をよく褒めていた。
まぁ、本心はどうであれ悪口を言うよりはずっとマシだと思った。
これも高等部で採用されている『人気投票制度』のお陰なんだなぁと理解できた。
誰だって嫌われ者よりも人気者になりたいものね……
お陰で私にとっても大きく人生が変わる事となる。
そう、イジメの原因になっていたはずの『ハーフ』が逆に『綺麗』やら『モデルみたい』と周りから言われだし、いつの間にか学園の人気者の一人になる事ができたのだ……
私はこんな幸せに感じたのは生まれて初めてだった。
こんなにも学校に行くのが楽しみになるだなんて……
ちなみに静香も正義感が強い頼れるお姉さまキャラとして、たくさんの女子から慕われるようになっていく。
そしてここから私と静香が『本当のライバル』になったんだっけ……
「姉貴の言っている事は分かっているけどさ……だから俺達も姉貴について来たんだし……といってこの学園の将来を俺に任せられないってのはどういう事だよ?」
「簡単な理由よ。カイトは周りから『ハーフイケメン』ってモテはやされ人気者になってしまったから昔の辛かった事をすっかり忘れているわ。どちらかと言えば今のカイトは私達をイジメていた側の人達と同じような人間になりつつあるわね」
「えっ、そんな事は……」
「だから、そんな人に私の大好きな学園を託せられないし、守れないわ。でも、颯君は違う。彼はきっと『弱者の気持ちが分かる人』よ。彼の目を見た時にそう強く感じたの……だから私は彼に将来の学園を託したい。この学園の伝統を守ってもらいたい。それには今よりも目立ってもらわないとね……学園の人達に颯君を知ってもらいたいのよ」
「チッ、何だよ……俺だってさ……それに竹中だって人気者になったら性格が変わるかもしれないじゃないか!?」
「それは絶対に無いわ。だってそうでしょう? 自分で言うのも恥ずかしいけど、学園の美少女達にあれだけ告白されても彼はいつもの彼のままよ。あんただったら調子に乗りまくるでしょ?」
「ウグッ……」
「ケイト先輩のお気持ちはよく分かりました!! 竹中君と付き合う事だけを考えていた訳じゃないって事が凄く伝わり、めちゃくちゃ感動しましたよ!! 引き続き、生徒会長選挙に向けてやる気が出てきました!!」
「フフフ……カノン、よろしくね……」
さぁ、茂香と静香はどうするのかしら?
あの二人の行動が楽しみだわ……
―――――――――――――――――――
恐らく俺の知らないところで『学年人気投票』について『反省会』が行われているんだろうなぁ……
また後日、各グループからラインがひっきりなしに届くのかな?
俺、あまり文章を早く打てないから辛いんだよなぁ……
いずれにしてもまずは夏休みだ。
まぁ、俺の夏休みはほとんどバイトで終わるとは思うけども……
いや、バイトだけで終わってくれた方が平和で良いかもな?
どうか平和な夏休みでありますように……
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お読みいただきありがとうございました。
これでこの章は終わりです。
次回、リクエストにお応えして『第二回キャラ一覧』をおおくりし、その後、新章『夏休み編』がスタートします。
どうぞよろしくお願い致します。
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